【MLB】田中将大、メジャー4度目の完封で5勝目 球数に厳格な米国で達成した意味

本拠地レイズ戦で完封したヤンキース・田中将大【写真:Getty Images】

17日のレイズ戦で2安打10奪三振の快投で完封勝利を挙げた田中

 現地、6月17日、ヤンキースの田中将大がレイズを相手に完封勝利を挙げた。111球2被安打、1与四球10奪三振、自責点0という見事なマウンドだった。MLBでのキャリアで完封勝利は4回目だ。

 田中はNPBでは18回完封勝利を記録している。2012年はシーズン6完封。その数字からすればMLBでの通算4完封は物足りないように見えるが、そもそも「完封勝利=Shut Out」はMLBでは、激減している。

 1988年、MLB全体では1人の投手による完封勝利が182回あった。これは全試合数の4.3%、個人ではレッドソックスのロジャー・クレメンスが8完封を記録している。それが2018年にはMLB全体で19回。全試合の0.4%、個人で2完封した投手はなし。田中将大含む19投手がそれぞれ1回ずつ記録しただけだ。

 なぜ、個人の完封勝利が激減したのか?

 一つには投手の分業が進んだのが大きい。MLBは1969年に「セーブ」を公式記録とした。この時期から先発投手と救援投手の分業が進んだ。さらに1986年に「ホールド」という概念が生まれ、以後、救援投手もクローザーとセットアッパーに分化。先発投手は6、7回程度まで投げて、セットアッパーにマウンドを譲るようになった。

 もう一つは、先発投手の投球数を各球団が厳格に管理するようになったことも大きい。1988年のクレメンスは、9回どころか延長10回まで投げた試合もあり、1試合の投球数は最大で154球にもなった。しかし、2018年の田中の最多投球数は105球。今回の111球は異例の多さだったということができる。

過去の完封と現在では投球内容に変化がみられる?

 MLBではPAP(picher abuse point/投手酷使指数)など投手の球数を管理する指標が考案され、100球を目安に先発投手を降板させるのが一般的になっているのだ。今、8回まで自責点0できた先発投手が完封勝利できる条件には以下のようになると思われる。

・その時点での球数が少ない
・被安打0で、ノーヒットノーランの期待がかかる
・過去に100球を大きく超えて投げた実績がある

 17日の田中は8回を終了してちょうど100球だった。ズニーノ、メドウズを三振、ファムを三ゴロと11球で試合を終わらせた。もし、田中が四球を出したり、安打を打たれたりすれば、その時点で降板していたかもしれない。

 2014年にヤンキースでMLBデビューした田中はデビューから6連勝。その6勝目が5月14日のインターリーグのメッツ戦での完封勝利だった。球数は114球。この年8月に右ひじ靭帯の損傷が見つかり、手術をせずに靭帯を温存するPRP療法を受けた田中は、2017年4月27日3年ぶりに2回目の完封勝利。以後3年連続で1試合ずつ完封勝利を挙げている。

 2014年の最初の完封勝利は、ゴロアウトが9、フライアウトが13。球威で押すパワーピッチャーの投球内容だったが、2019年の4回目の完封勝利はゴロアウトが11、フライアウトが4、低めを突いてゴロを打たせる投球内容に変わっている。

 田中将大の完封数が今後大きく増えることはないだろうが、17日の完封勝利は、田中のヤンキースでの信頼感を端的に表している。デビューから5年連続で2桁勝利を挙げている田中将大だからこそ許された「Shut Out」だといえるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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