過去に学ぶ

 〈人々は「次」が来るんじゃないかと、心配そうに空を見上げていたという〉。小欄にこう書いたのはちょうど1年前、大阪府北部地震が起きたときだった。同じようにいま、新潟県、山形県などの人々は「次」の揺れを恐れている。気が気ではあるまい▲1週間ほどは同じ規模の地震が起こる恐れがあるらしい。1年前の大阪の地震と同じ日の夜、新潟県で最大震度6強を観測する地震があり、多くの人が避難所で眠れない夜を過ごした▲建物が壊れ、道路が陥没した。交通が機能しなくなった。家中に何もかもが散乱し、途方に暮れる人もいた。被害を伝える映像が、これまでの地震と二重写しになる▲一方で、過去とは違うように思えたことがある。新潟県村上市の海岸線を走っていたJR列車は揺れに伴い停車し、乗客らが住民とともに高台を目指した。東日本大震災の津波が頭をよぎったという乗務員が、速やかに誘導したのだという▲ごく弱い津波が到達した新潟県の粟島では、島民が近所に声を掛け合い、自主的に高台へと避難した。地震を想定した日頃の訓練が生きたらしい▲列島を襲い続けた災害に学び、速やかに行動する人々もいる。被災地に思いを致しながら、私たちもまた、天災への備えを忘れまい。「まさか」は起こり得るのだと、いま一度わきまえて。(徹)

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