脳インプラントを使わない、史上初の意思制御ロボティックアームに成功

脳インプラントを使わない、史上初の意思制御ロボティックアームに成功

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【ピッツバーグ2019年6月20日PR Newswire=共同通信JBN】カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)の研究者チームはミネソタ大学と共同で、非侵襲ロボティックデバイス制御の分野で飛躍的成果を達成した。研究者らは、非侵襲的ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)を使用して、コンピューターカーソルを継続的に追跡、追従する能力を発揮する、史上初の自分の意思で制御できるロボティックアームを開発した。

考えるだけでロボティックデバイスを非侵襲的に制御できることの応用範囲は広く、とりわけ麻痺や運動障害のある患者の生活の助けになる。

BCIは、脳インプラントから検知された信号のみを使用したロボティックデバイス制御で優れた性能を発揮することが示されてきた。ロボティックデバイスを高精度で制御できれば、それらを使用して日常のさまざまな作業を完遂できる。しかし、これまでロボティックアームの制御に成功したBCIは、侵襲的脳インプラントを使用してきた。こうしたインプラントは、費用および対象者への潜在的リスクは言うまでもなく、正しく導入、操作するために相当量の医学的、外科的専門知識を必要とし、そのため使用はごくわずかな臨床例に限られてきた。

BCI研究の大きな課題は、麻痺患者が自分の「意思」を使って周囲の環境や義肢を制御できるようにする、低侵襲的あるいは完全に非侵襲的な技術を開発することである。そのような非侵襲的BCI技術は、成功すれば、多くの患者や潜在的には一般の人々にとっても、ニーズの非常に大きい技術をもたらすことになるだろう。

しかし、脳インプラントではなく、非侵襲的な外部センシングを使用するBCIは、「より汚れた」信号を受信するため、低分解能、低精度の制御につながりやすい。従って、ロボティックアームの制御に脳だけを使用する場合、非侵襲的BCIはインプラントデバイスの使用に太刀打ちできない。にもかかわらず、BCIの研究者たちは歩みを進め、日常的にあらゆる場所で患者を助けることができる、低侵襲的あるいは非侵襲的な技術の価値に注目した。

カーネギーメロン大学のビン・ホー医用生体工学科特任教授兼学科長は、1つの重要な発見により、その目標を達成しつつある。

ホー氏は「脳インプラントを使った意思制御ロボティックデバイスは大きく進歩した。それは素晴らしい技術だ。しかし、非侵襲が究極の目標だ。神経復号化の進歩と非侵襲的ロボティックアーム制御の実用性は、今後の非侵襲的神経ロボティックスの開発に大きな意味を持つ」と語った。

ホー氏と彼の研究室は、新しいセンシングと機械学習技術を使い、脳の奥深くの信号にアクセスし、ロボティックアームの高分解能制御に成功した。非侵襲的ニューロイメージングと新たな継続追跡パラダイムにより、ホー氏はノイズの多いEEG信号を克服し、EEGベースの神経復号化を大幅に改善、リアルタイムの連続2Dロボティックデバイス制御を容易にしつつある。

ホー氏は、非侵襲的BCIを使用してロボティックアームを制御し、コンピューター画面上のカーソルを追跡させることで、ロボティックアームがカーソルを連続的に追従できることを人間の被験者で初めて実証した。以前、人間が非侵襲的に制御するロボティックアームが、動いているカーソルを追従する様子は、ぎくしゃくした不連続的な動きで、ロボティックアームが脳の指示に「追いつこう」としているかのようだったが、今ではアームはスムーズかつ連続的な動きでカーソルを追従している。

Science Roboticsに掲載された論文で、チームはユーザーエンゲージメントとトレーニング、さらにEEGソースイメージング経由で非侵襲的ニューラルデータの空間分解能を向上させることで、BCIの「ブレイン」と「コンピューター」コンポーネントを扱い、改善する新たなフレームワークを確立した。

「非侵襲的ニューロイメージングは、ロボティックデバイス制御のための連続的ニューラルトラッキングを向上させる」と題した論文には、この問題を解決するためのチームのユニークなアプローチが、従来のセンターアウトタスクに対してBCI学習を60%近く向上させただけでなく、コンピューターカーソルの連続追跡を500%超向上させたことが示されている。

このテクノロジーは、人々が周囲の環境と触れ合い、管理できるようにする安全で非侵襲的なデバイスの「意思制御」を提供することで、さまざまな人々の支援に応用することもできる。このテクノロジーは現在までに、68人の健常者(各被験者につき最大10セッション)でテストされており、これには仮想デバイス制御やロボティックアーム制御による連続追跡が含まれている。このテクノロジーは患者に直接応用可能であり、チームは近い将来、臨床試験を実施する予定。

ホー氏は「非侵襲的な信号の使用には技術的課題はあるが、われわれはこの安全で経済的な技術を、そこから利益を得られる人々に届けることに全力で取り組んでいる。この研究は、いつの日かスマートフォンのようにすべての人を支援する普及した支援技術になる可能性のある、非侵襲的ブレイン・コンピューター・インターフェース技術の重要なステップだ」と語った。

この研究は、国立補完統合衛生センター、国立神経疾患・脳卒中研究所、国立生物医学画像・生物工学研究所、および国立精神衛生研究所によって部分的にサポートされていた。

▽College of Engineeringについて
カーネギーメロン大学のCollege of Engineering(工科カレッジ)は、研究における学際的協力に意識的に力を入れていることで知られる、一流の工科カレッジである。本カレッジは、科学的かつ実用的に重要な問題に取り組むことで有名である。本カレッジの「メーカー」文化は、われわれが行うすべてのことに深く根付いており、新しいアプローチと変革的結果につながっている。高い評価を得ている本カレッジの教授陣は、コミュニティー、国家そして世界の知的、経済的活力をかき立てる革新的な結果を生み出すため、イノベーション管理とエンジニアリングに焦点を合わせている。

▽カーネギーメロン大学について
カーネギーメロン(www.cmu.edu)は、科学、技術、ビジネスから公共政策、人文科学、芸術に至るまで幅広い分野のプログラムを提供する、国際的ランク付けのある私立大学である。同大学の7つのスクール、カレッジの1万3000人以上の学生は、教員対学生の比率が低く、実世界の問題、学際的協力、イノベーションのためのソリューションの創造と実行の重視を特徴とする教育の恩恵を受けている。

▽問い合わせ先
Emily Durham
412-268-2406
edurham1@andrew.cmu.edu

ソース:Carnegie Mellon University College of Engineering