STCC第3戦:元王者vsアウディが0.022秒の超クロスフィニッシュ。PWRは1-2も達成

 TCR規定3シーズン目を迎えたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の第3戦がスウェーデン北東部のシェレフテオで開催され、アンドレアス・ウェルナーソン(アウディRS3 LMS)が2017年王者ロバート・ダールグレン(セアト・クプラTCR)を写真判定の末、0.022秒差で下した。レース2ではそのお返しとばかりに、ダールグレンが僚友のミカエラ-アーリン・コチュリンスキーを引き連れ優勝を果たし、PWRレーシングがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。

 6月14~15日に北欧の自然を象徴する白夜の“ミッドナイト・サン・レース”として今季カレンダーに組み込まれたシェレフテオ・ドライブセンターでの1戦は、全長4.120kmと同国最長トラックでの勝負となった。

 このシェレフテオ近郊で生まれ育ったダールグレンにとってはここがホームグラウンドとなり、金曜の練習走行からその意気込みを感じさせる好走を披露して3セッションともトップタイムをマーク。そのまま19時15分開始の予選でも最前列を確保するものと予想されたが、ここで立ちはだかったのがブリンク・モータースポーツのアウディを駆るウェルナーソンだった。

 大きくリードを築いてQ1トップ通過を果たしたダールグレンは、Q2でも早々にトップタイムをマークしピットへと戻るも、最後の最後でアタックラップに入ったアウディが好調セアト・ディーラーチームのエースを0.345秒上回り逆転ポールを獲得。「僕のラップは少しセーフティ過ぎたかもしれない」と肩を落としたダールグレンだが、タイトル争いを繰り広げる両者が意地を見せ合う予選結果となった。

 迎えた土曜11ラップのレース1は、スタートからフロントロウ2台が順調にホールショットを決め、3番手のアンドレアス・アールベルグ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)、4番手ハンス・モーリン(アウディRS3 LMS)が2台を追う展開に。

 しかし直後にモーリンの右フロントタイヤがバーストするアクシデントに見舞われ、彼のアウディはヘアピンでコースオフ。レース2に向けトップ4リバースでポールを得ている16歳のドライバーは、ここでレース1唯一のリタイヤとなってしまった。

 その後もホンダ・レーシング・スウェーデンby MA:GPのマティアス・アンダーソン(FK2ホンダ・シビック・タイプR TCR)や、ピーター“ポーカー”ウォーレンバーグ(セアト・クプラTCR)ら5番手以下を引き離していった先頭集団は、レース終盤に向けさらに分裂。

 6番グリッドから先頭集団に喰らい付いた好調コチュリンスキーが3番手アールベルグをバトルに引き込むと、首位ウェルナーソンと2番手ダールグレンはさらにリードを拡大し、一騎打ちの状態となっていく。

 迎えたファイナルラップ、サーキットの後半セクター手前となるバックストレートに向け勝負を仕掛けたダールグレンは、ウェルナーソンの隙を突いて首位浮上に成功。しかしすぐさま反撃に転じたアウディはヘアピンで「一か八か」のダイブを見せ再びトップスポットを奪還。

 ファイナルセクターをほぼサイド・バイ・サイドでクリアし、ホームストレートに戻ってきた2台は、そのまま並んでフィニッシュラインを通過。結果は0.022秒の超僅差でアウディが辛勝し、3位にコチュリンスキーをしのぎ切ったアールベルグが続く表彰台となった。

誰もがロバート・ダールグレンのポールを予想した中、地元出身の元王者を出し抜いたアンドレアス・ウェルナーソンがR1を優位に進める
R1で3番手のアンドレアス・アールベルグを釘付けにし、首位攻防をアシストしたミカエラ-アーリン・コチュリンスキー
「バトル中は何度も接触があり、後でロバートにも謝ったが、彼は『フェアなバトルだったよ』と言ってくれた」とR1勝者のウェルナーソン

 そのまま同日20時05分スタートとなったレース2は、まだ日が残る薄暮の11ラップに。16歳のリバースポールシッター、モーリンのアウディに続いて2番手にジャンプアップしてきたのは、後方8番グリッド発進のホンダ・シビックで、アンダーソン以下先頭集団はそのまま1コーナーへ。

 しかし、ここでラインが交錯したアンダーソンは2コーナーで3つポジションを失い、ダールグレン、ウェルナーソン、アールベルグに先行を許してしまう。

 さらに続くターン7ではウェルナーソンのアウディがコースオフする手痛いミスでパック最後尾にまで陥落すると、その最終コーナーではブリンク・モータースポーツのチームメイトであるモーリンが2番手ダールグレンにかわされ、ライバルに首位を明け渡す苦しい展開となってしまう。

 これでレース1で失った選手権首位奪還に向け視界が開けたPWRレーシング・セアト・ディーラーチームのエースは、さらに4番手ウェルナーソンに”ジャンプスタート”の裁定でペナルティが下る展開にも助けられ、悠々クルーズのレースに。

 ホンダ・シビックが4周目にピットスルー・ペナルティを消化する間に、トラック上ではさらにポジション変動があり、STCC2勝を誇る女性ドライバー、コチュリンスキーが躍動し、アールベルグを仕留めて3番手に浮上。続くラップではモーリンのアウディもオーバーテイクする早業でPWRレーシングのワン・ツー体制が完成する。

 ポジション回復を期して最後尾から猛烈な追い上げを見せていたウェルナーソンだったが、中盤にコチュリンスキーの背後に迫って以降は彼女のセアトを攻略する糸口がなく、そのまま11周のチェッカー。ダールグレンが選手権首位を奪還する勝利を挙げ、その1.9秒後方で見事にライバルを抑え込む仕事を完遂したコチュリンスキーが2位に続き、PWRが力強いワン・ツーを決めている。

「レース1では自分でも驚くぐらいの好スタートが切れて、その後のレースペースでも前を追える速さがあることがうれしかった。その自信をもとに、レース2ではウェルナーソンを抑え切ることができたわ」と振り返ったコチュリンスキー。

「彼とアウディは本当に速かったし、簡単な仕事ではなかった。本当にトリッキーでタフなレースだったけど、ミスをしなければ大丈夫と自分に言い聞かせながら走った。でも案の定、残り2周のターン11でミスしたの(笑)。そこからの自分の集中力はとてつもなく高かったわ」

 これによりダールグレンが6ポイント差で選手権首位を取り戻し、好走コチュリンスキーもランク5位に浮上。続くSTCC第4戦は約1カ月後の7月13~14日に、スウェーデン南部のファルケンベリで開催される。

自らのムーブでポジションを上げ、R2でも2位表彰台を確保したコチュリンスキー。「良いクルマを手にしていることがうれしい」
R2ではライバル勢の脱落にも助けられたロバート・ダールグレンが、自身と新スポンサーの地元で勝利を飾った
2019年STCCはセアト陣営のPWRレーシングと、アウディのブリンク・モータースポーツ勢の争いとなっている

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