規制地区外で営業も 箱根山警戒レベル引き上げ1カ月

休館中の箱根ジオミュージアムで今後展示予定のジオラマの打ち合わせをする笠間さん(左

  噴火警戒レベル2(火口周辺規制)への引き上げから1カ月が経過した箱根山(箱根町)の大涌谷では、全面的な立ち入り規制が続いている。規制エリア内の施設や事業者は「一日も早く火山活動が終息してほしい」と願いつつ、別のエリアに臨時の拠点を構えるなどの対応策を進めている。

 「施設が大涌谷にあるのはメリットだが、デメリットもある。火山活動が活発化すれば、休館は仕方ない」。警戒レベル2への引き上げに伴い、全線運休を余儀なくされている箱根ロープウェイの大涌谷駅に隣接する箱根ジオミュージアムの学芸担当、笠間友博さん(60)は冷静に受け止める。

 箱根を訪れる人々に大涌谷の現状に関する情報を発信しようと、町内や周辺の公共施設で今月から、サテライト展示をスタートさせた。警戒レベル引き上げまでの経緯などを示したパネルを県温泉地学研究所の協力で作製。箱根ビジターセンター(同町元箱根)や県立生命の星・地球博物館(小田原市入生田)など7カ所で、7月末まで続ける予定だ。

 一部の施設では、温泉ができる仕組みや山体膨張の様子が分かる模型、硫黄の標本なども紹介している。笠間さんは「火山活動がもたらすのは災害だけではない。景観や温泉など恩恵もある」と強調。同ミュージアムで新たに展示予定のジオラマの制作など規制解除後の再開に向けた準備にも取り組んでいる。

 大涌谷名物の黒たまごを製造・販売する「奥箱根観光」は5月下旬から、約2キロ離れた仙石原に臨時店舗をオープン。大涌谷の立ち入り規制の影響で黒たまごは製造できないが、チョコレートやまんじゅうなどの関連商品を扱っている。

 観光客から販売再開に関する問い合わせが寄せられることもあり、同社は「箱根で黒たまごを食べたいというニーズが高いことを再認識した。警戒レベルが下がり、大涌谷で再開できるようになったら、販売に力を入れたい」と前を向く。

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