<レスリング>男子グレコローマンの全日本チームが日体大で合宿スタート

 明治杯全日本選抜選手権の激戦から4日が経ち、東京オリンピックの開会式まで「あと400日」となった6月20日、世界選手権代表内定選手を含めた男子両スタイルの全日本チームが神奈川と山梨で合宿をスタートした。(男子フリースタイル記事・写真


5階級で世界選手権へ向けた強化がスタートした男子グレコローマンの全日本合宿

 男子グレコローマンは日体大で29日まで実施される。松本慎吾・強化委員長(日体大教)は、「(激戦の)疲れを取りつつの合宿ですか?」との問いに、「関係ないです。強化のための合宿です。代表に決まった選手を中心に追い込みます」ときっぱり。国内予選で疲れて動けなくなるような選手は日本代表チームには要らない、と言わんばかりの表情で代表選手の動きを追った。

 男子グレコローマンは、オリンピック実施6階級のうち、77kg級以外の5階級で代表が決まった。「半分の階級がプレーオフだと、強化しづらい面はありましたね」と話し、ある面で強化しやすい状況となった。しかし「ここからが重要」と言う。9月の世界選手権(カザフスタン)では、メダル、最低でも5位以内のオリンピック出場枠獲得を目指すが、「シビアなことを言うと、本当に狙えるのは60kg級くらい。強化のスピードを上げて、世界選手権に臨みたい」と言う。

 この日は、代表に決まった5選手に、2番手、3番手の選手が次々にスパーリングを挑む練習を実施。最初は互角以上でも、スタミナが切れてくると代表選手が劣勢に。すかさず松本委員長が2・3番手選手に「全日本選手権の前につぶすんだ」と声かけし、下からの突き上げ、全体の士気の向上を望んだ。

松本慎吾・強化委員長の技術指導

 7月6日のプレーオフが終わったあと、当初の予定ではロシアへ遠征し、ナショナルチームの合宿に参加させてもらって鍛える予定だった。しかし合宿予定地が危険区域に指定されたため中止。遠征の後半に予定していたベラルーシでの「オレグ・カラワエフ国際大会」(UWWランキング大会)に参加するだけになってしまった。

 「だいぶ前から計画していただけに、悔しく、残念です」と松本委員長。短期間であってもベラルーシで他国との合宿練習を希望するとともに、国際大会で各選手の闘い方を分析し、8月の国内合宿、直前合宿を経て世界選手権へ挑む。「方向性は見えているので、限られた中で全力を尽くしたい」と言う。

 世界選手権でオリンピック出場枠を取れなかったり、取っても5位だった場合は、日本代表争いは12月の全日本選手権にもつれる。今回代表を逃した選手には「全日本選手権で勝てるだけの準備をしておかないとならない。世界選手権が終わってから強化しても時間が足りない。今から12月を目指して練習してほしい」と要望した。

スタンドでのポイント奪取が課題の文田健一郎(ミキハウス)

 59kg級でライバル対決に勝ち、2年ぶりの世界選手権出場を決めた文田健一郎(ミキハウス)は「(勝ったとはいえ)足りないところが多くある。世界で勝ち切るには、まだまだ。スタンドでポイントを取れないと駄目。グラウンド勝負に持ち込むことなくポイントを取ることが重要」と今後の課題を挙げる。

2年ぶりの世界選手権出場が決まった文田健一郎(ミキハウス)

 プレーオフにもつれての代表決定に比べると、3週間早く世界選手権へ向けての強化をスタートできることになった。とはいえ、「あと2ヶ月ちょっとです」と、心のなかでは決戦へ向けてのカウントダウンは始まっている。「4年前のリオデジャネイロ予選(の世界選手権)では、出場枠を1つも取れなかった。去年の(太田)忍先輩も(期待されながら)上位入賞できなかった」と話し、オリンピック出場枠を取ることの厳しさは知っている。1日、1日が勝負といったところ。

 優勝選手の中でただ1人、プレーオフに出場する77kg級の屋比久翔平(ALSOK)は「もう一度勝たないとならない。しっかり勝つとともに、世界選手権で勝つための練習を意識して合宿に取り組みたい」と言う。

 全日本選手権で決勝進出を逃したため、この冬は全日本遠征メンバーに入れず、所属での練習だった。その間、全日本メンバーが国際大会に出たが、成績は今ひとつ。「もどかしい気持ちがあった。自分が出ないといけない、という気持ちになりました」とのこと。

 その思いをぶつけた全日本選抜選手権は、決勝で全日本王者の小路直頌(自衛隊)に大技を爆発させて圧勝の勝利。「相手にプレッシャーをかけられたと思う。自分の形をしっかり出せれば勝てることを再確認できた」と自信を深めた。「ずっと勝ってきて、直前でこけるわけにはいかない」と、日本代表権の奪取を目指す。


▲プレーオフで世界選手権の日本代表を目指す屋比久翔平(ALSOK)
▲角雅人(自衛隊)の練習相手を買って出た松本委員長
▲レスリング場のボードには、「あと400日」の掲示があった

© 公益財団法人日本レスリング協会