【やまぐち深発見紀行】 No.147「秋穂・秋穂の製塩業と『日地石風呂』」

 日地の石風呂は、塩田労務者などの保養を目的として幕末に築造された。製塩業で栄えた秋穂の歴史をとどめる山口市の文化財だ。

 秋穂地域とその付近一帯は、遠浅の干潟の地を利用して製塩業が盛んだった。その歴史は、出土した土器などから古代にまでさかのぼることができる。

 「秋穂町史」によると、秋穂で最も早く開かれた塩田は、日地山麓の「青江塩田」だ。浜主の一人、栄楽屋(松永)栄蔵が、1862(文久2)年に塩田労務者や付近の人々の保養を目的として石風呂を築造。「日地石風呂」として1978年、山口市の有形民俗文化財にも指定された。この石風呂は、自宅敷地内にある渡辺公智さんが現在所有している。

 石風呂とは、岩をくりぬいたり石を積み上げたりして部屋を造り、その中で薪を燃やす風呂のこと。室内が十分暖まると燃え残りをかき出して床に海藻やむしろを敷き、熱気や蒸気を浴びる。

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