「台湾の球児に夢を」―ラミゴの元同僚が語る、王柏融の日ハム移籍の意味

インタビューに応じたラミゴモンキーズ・林泓育【写真:篠崎有理枝】

ラミゴで活躍してきたリン・ホンユ、日本と台湾の捕手の違いは…

 日本ハムに移籍した王柏融外野手が所属していたことでも知られ、2018年には2年連続台湾一に輝いた強豪、ラミゴモンキーズ。正捕手の林泓育(リン・ホンユ)捕手はチャイニーズ・タイペイ代表でも主砲を務める強打者だ。国際大会で感じた日本チームの印象や、数々のタイトルを獲得してきた打撃についてなど、本拠地の台湾・桃園国際球場で聞いた。

 大学卒業後の10年にラミゴモンキーズの前進、ラニューベアーズに入団。翌11年に本塁打王、打点王、ベストナインを獲得し、シーズンMVPにも輝いた。入団後すぐに対応できたのは、兵役制度での経験が大きかったという。

「台湾には1年間の兵役制度がありますが、野球の成績が優秀な選手は、兵役期間中に野球をすることで兵役を全うするという仕組みがあります。この時、プロの選手の中でプレーしたことで、他の選手より1年早くプロの環境に馴染めたことが大きかったと思います。また、チームも前のキャッチャーが退団した後で、新しいキャッチャーを必要としていたので、試合に出ながら経験を積むことができました」

 ルーキーイヤーから正捕手を務め、打撃でも好成績を残したが、入団したばかりの頃は先輩投手にサインを出すことに勇気が必要だった。しかし、コーチに「キャッチャーを任せるからには、先輩、後輩は気にせず、自分の仕事を全うするように」と声をかけられたことで、気持ちが楽になったと振り返る。その後、16年には再び打点王を獲得。これまで計6回のベストナインに輝いた。

「グラウンドの中では自分が引っ張っていきますが、その代わりに、グラウンドの外では先輩たちにより尊敬の念を持つように心がけてきました。バッティングに関しては様々なタイトルをもらいましたが、それは結果であり、そこに至るまでの過程を重視しています。塁上にいる選手をいかに一つ先の塁に進められるかを考え、日々練習に取り組んでいます」

 13年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではチャイニーズ・タイペイ代表として日本代表と対戦したが、日本の捕手は台湾の捕手とは異なり、司令塔として活躍していると感じたという。

王柏融は大学でも後輩「彼が日本で活躍してくれれば…」

「日本は攻撃、守備どちらも細かいところがしっかりしていて、ミスが少ない。そういうところは、自分たちよりレベルが上だと思います。捕手に関しては、監督やコーチから直々にサインが出て、とても重視されているポジションだと思いましたし、守備の要求が高く、試合全体を引っ張っていると感じました。台湾は4チームしかないため、細かい作戦を立てるより、攻撃で点を取ることが大事だと考えられています。そういう意味では、打てる選手のほうが出場機会は多いです」

 日本の野球を毎日見ており、選手もほとんど把握している。また、技術についてコーチと話をすることもあるそうだ。そんな日本球界に、チームメートだった王柏融外野手が移籍した。王は大学の後輩にあたるため、入団した時から気にかけており「台湾球界のためにも頑張ってほしい」とエールを送る。

「同じ大学の後輩なので、入団したばかりの時はアドバイスをしていました。彼が日本に行くことは、チームメート、そして台湾球界にとって、とてもいい事例だと思います。チームメートも成功してくれると信じて送り出しました。彼は守備、打撃、どちらも優れています。3年半チームに在籍して、自分の技術を固めて日本に挑戦してくれました。彼が日本で活躍してくれれば、台湾球界も注目を浴びることになる。彼の努力はたくさんの台湾の球児たちに夢を与えると思います」

 チームには昨年、実質1年目で打率.387をマークした20歳の新鋭、廖健富(リャオ・ジェンフー)捕手がいるが「お互いに高め合っていきたい」と切磋琢磨していくことを誓う。

「彼が出場することはチームにとってプラスです。競い合う気持ちもありますが、自分の知ってることをどんどん教え、それを吸収してもらって、これからのチームを引っ張っていって欲しいです。自分は自分のできることを努力していきたいです」

 ニックネームは、太っているという意味の「小胖」。「子供の時からこの体形です」と、親しみやすい笑顔で話す経験豊富な主砲は、3連覇へ向けチームを牽引していく。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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