国民・企業・政府が一体になれば一大市場が生まれる―サイバーエージェント山内隆裕氏が登壇したセッションをレポート

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国民・企業・政府が一体になれば一大市場が生まれる―サイバーエージェント山内隆裕氏が登壇したセッションをレポート

6月20日(木)、ザ・プリンスパークタワー東京 コンベンションホールで一般社団法人 新経済連盟が主催する「NEST2019 TOKYO」が開催。株式会社サイバーエージェント常務取締役/株式会社CyberZ代表取締役社長の山内隆裕氏が登壇し、セッション「eスポーツはここまで来た」が行われました。

◆年々拡大を続けるe-Sports市場

サイバーエージェントは、シェアトップを走るインターネット広告事業、AbemaTVなどのメディア事業、『グランブルーファンタジー』などのゲーム事業を事業の中心に据えた企業。そんな同社が数年前から熱い視線を注いでいるのがe-Sports事業です。山内氏は「e-Sportsがどういう風にビジネスとして成り立っているのか」を示す材料として、格闘ゲームの祭典「EVO 2017」の『ストリートファイターV』部門でときど選手が優勝を決めた瞬間の映像を紹介。「優勝が決まった瞬間に観客がどっと沸き、その興奮が一気に伝播しています。これはスポーツの観戦とほぼ同じ。e-Sportsが、スポーツに近いエンターテイメントになっていることがお分かりいただけると思います」と語りました。

e-Sports市場の隆盛を示すさまざまなデータも示されました。市場規模は年々拡大の一途で、2018年の約993.5億ドルに対し、2021年にはその2倍近い1821億ドルに達することが見込まれていると語りました。日本市場も、2018年は前年比13倍の48.3億円と急成長。今年以降も伸び続け、2022年には100億円規模に達する見込みです。

市場の盛り上がりは、競技人口の多さにも見られます。さまざまなスポーツの競技人口の概算をまとめてみると、第1位はバスケットボールで約4億5,000万人。第2位はサッカーで約2億5,000万人。第3位クリケット(約1億数千万人)、第4位テニス(約1億人)と続き、なんと第5位は『League of Legends』(約9000万人)になるとのこと。そこに『Heathstone』や『DOTA2』など、他の主だったe-Sportsタイトルの競技人口を加えると、ビデオゲームというくくりならトータルでは1.7億~2億人超の規模が予測されると語りました。

そうした流れを受け、読売新聞社がジャイアンツブランドのe-Sportsチーム「G×G」を発足したり、日本野球機構主催のリーグが発足したり大会が開催されたりと、これまでビデオゲームとの関わりが薄かった企業やマスメディアがe-Sportsへと熱い視線を向け始めています。山内氏は「このいい流れは今後も持続すると思う」とまとめました。

次の議題は「e-Sportsが持つ社会的価値」について。これについては「地方活性化」、「若年層との接点」、「障害者との関わり」の3つがあるとしました。順に触れていきましょう。

■e-Sportsがもたらす地方活性化

2019年2月15日~17日にかけて開催された「EVO Japan 2019」では、会場となった福岡国際センターにのべ13,000人を動員。プロゲーミングチーム「DeToNator」とメディアサポート契約を結んでいる東海テレビが名古屋で開催したイベントでは、540席に対して1,700人がつめかけるという盛況ぶり。さらにサイバーエージェントが主催する日本最大級のe-Sportsイベント「RAGE」の西日本予選では神戸に2,000人を動員。首都圏・大都市圏以外でも大勢を動員した実績が多数見られます。

■e-Sportsがもたらす若年層との接点

「RAGE」の参加者は、全体の70%以上が30歳未満、なかでも10代が40%以上を占めるとのこと。いかに、地方に若者を呼びせているかを補強しました。そうした実績を受けて、毎日新聞社の主催で「全国高校eスポーツ選手権」が開催されるなど、高校生を対象としたイベントや、飲料・食品メーカーの協賛事例が増えているとのことです。

■e-Sportsがもたらす障害者との関わり

群馬県伊勢崎市の介護福祉施設「iba-sho」が、重度の障害者を対象とした費用無料のプロゲーマー養成施設を開設したり、アメリカでも、障害者支援団体「AbleGamers財団」が障害を持って生まれたプロ選手を支援しているという取り組みを紹介。フィジカルスポーツよりも障害者が取り組みやすい競技性の柔軟さをアピールしました。

また、セッションでは、日本のe-Sports市場がこれから乗り越えていくべき、取り組むべき課題として「慣習・文化」、「法律」、「環境整備」の3つが挙げられました。海外では、規模が大きいゆえに大会やリーグ戦に関しても、スポンサーがつき、放映権を販売し、チケットやグッズを販売し……と、"スポーツ興行"として成功を収めています。また、億単位の賞金が出ることもめずらしくなく、それによって韓国のFaker選手のようなトッププレイヤーは、推定年収が3~5億ドルと見込まれています。

一方、日本では単純な規模の違いに加え、刑法、景品表示法、風営法などとの折り合いがいまだうまくついていないこともあり、高額の賞金はなかなか出せません。これらの課題を今後どうクリアしていくかが大きな課題となります。

日本e-Sports事業が乗り越えるべき法律の壁について語る山内氏

さらに、日本は海外と異なりe-Sports専用のスタジアムやアリーナを有しません。それによる会場不足も頭を悩ませる課題の一つとして挙げられました。こうした課題を乗り越えていくためのヒントとして、セッションでは、以下のような海外における先進的な取り組みの一例も挙げられました。

■台湾:体育省(日本でいう文化庁)にe-Sports部門が開設。e-Sports大会のスポンサーになった企業は、税金の軽減措置を受けられる。

■アメリカ:全米州立高校協会がe-Sportsを公式なスポーツ種目として認定。スポーツに縁がなかった子たちもこれでスポーツに取り組むようになる、と期待される。

■中国:敷地120万平方メートルにもおよぶ「e-Sportsタウン」をオープン。さらに、2022年までにe-Sports学校やホテル、病院などの開設を含めた計画を進行中。

最後に山内氏は「海外では、e-Sportsはメジャースポーツとして確立されています。日本も国民・企業・国が三位一体となって取り組んでいけば、マイナーからメジャーに、すなわち一大ビジネスの市場が生まれうる。ここ1~2年でそれをしっかりできるかが、普及への第一歩です」とセッションをまとめました。

◆4人のプロ選手が『ストリートファイターV アーケードエディション』で激突!

山内氏のセッション後は、実況にハメコ。氏となない氏をむかえて、ウメハラ選手、ボンちゃん選手、マゴ選手、ときど選手の4名による『ストリートファイターV アーケードエディション』のデモンストレーションマッチが行われました。ウメハラ選手とボンちゃん選手、マゴ選手とときど選手がそれぞれBO3(3本制・2本先取)で対戦し、最後に勝者同士が対戦します。

左から順に、ウメハラ選手、ボンちゃん選手、マゴ選手、ときど選手

第1試合は、ウメハラ選手のガイルとボンちゃん選手のかりん。接近戦を得意とするかりんの持ち味を生かすため、ボンちゃん選手が積極的に接近を試みてガイルを画面端へ追い詰めようとしますが、そのたびにウメハラ選手が投げで立ち位置の左右を入れ替えたり、絶妙なめくりジャンプ攻撃からのコンボを決めたりと、攻撃も忘れない鉄壁の守りを披露。2セットを連取し、危なげなく勝利を収めました。実況のハメコ。氏は「ウメハラ選手の守りのうまさが終始発揮されていた」と評しました。

第2試合は、マゴ選手のかりんとときど選手の豪鬼が激突。マゴ選手がときど選手の「斬空波動拳」を読み切って移動技の「神月流歩行術 刹歩」でその下をくぐり、コンボを決めるなど巧な戦いぶりを見せて1セット目を先取。2セット目はときど選手が取り返して決着はファイナルセットに。最後は豪鬼を画面端に追い込んで攻め切り、マゴ選手が勝利を決めました。

そして第3試合はウメハラ選手のガイル対マゴ選手のかりん。キャラクターで見れば、1試合目と同じ組み合わせです。ウメハラ選手が連勝して1セット目を先取し、2セット目もファーストラウンドを取って一気にセットポイント。ここで辛くもガイルをスタンに追い込んで勝利したところから、マゴ選手の逆襲がスタート。ガイルのローリングソバットを立ち強パンチでつぶして、確実にダメージを奪っていきます。

決め手となったのは「サマーソルトキック」のガード。この日のウメハラ選手は、近距離でにらみあいになった際に"相手の前進を見てから「サマーソルトキック」"という動きを何度か見せており、マゴ選手はそんなウメハラ選手の反応速度を逆手に取って"一瞬だけ前進→すぐ立ちガード"で「サマーソルトキック」の誘発に成功。大きな硬直によどみなくコンボを決め、見事に勝利を決めました。ハメコ。氏は一連の流れを見て「この読み合いこそがe-Sportsの魅力です」と絶賛し、セッションは大きな拍手に包まれながら幕を閉じました。

蚩尤