【MLB】苦しむ菊池雄星、飛躍へ必要な「ソフトな球」 元燕助っ人ハドラー氏が見る現状

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19日のロイヤルズ戦に先発し5敗目を喫したマリナーズ・菊池雄星【写真:Getty Images】

1993年にヤクルトでプレーしたハドラー氏「キクチも適応するための時間がもう少し必要」

 前回18日(日本時間19日)のロイヤルズ戦で3ランを含む2本の本塁打を浴びるなど、5回9安打6失点で5敗目を喫したマリナーズの菊池雄星投手。「初回から思うようなボールは今日はなかったかなと思います」と肩を落とし、「ストレートの球速が3マイル(約4.8キロ)、4マイル(約6.4キロ)落ちると、それに従って他のボールも落ちてくる」と話した通り、復調の兆しを見せた13日(同14日)のツインズ戦で計測した最速95マイル(約153キロ)に届かなかった直球と呼応し、90マイル(約145キロ)に達するスライダーも鳴りを潜めた。

 その「原因を探りたい」とした菊池は20日(同21日)、次回登板へ向けブルペン入りしこれまでよりも少ない19球で終えた。ここまで基本中4日での調整に、中6日だった日本時代と同じメニューで臨んできたことから、首脳陣がブルペンでの球数とランニングなどのトレーニング量について再考を促し、この日のブルペンを迎えた。

 5月25日から6月8日の間の3登板では、いずれも4回途中でKOされ、フォームの修正も行った。ただ、前回登板ではフォームのバランスを欠いた感覚はなかったため、首脳陣との話し合いで登板間の調整法の見直しに至った。3月21日に東京ドームで果たしたメジャーデビューから3か月が経過し、自分流を容認してきたマリナーズ首脳陣が今後へ向けて菊池に適応を求めた格好となったが、マウンドでの投球そのものに対しても再考すべきと唱える人物がいる。

 18日のロイヤルズ戦で5敗目を喫した翌日のこと。93年に野村克也政権下のヤクルトでプレーし、現在はロ軍のテレビ中継の解説者として活躍しているレックス・ハドラー氏に菊池への率直な感想を求めると、淀みなかった。

「僕が日本に行ったとき、ノムラさんからはせっつかれるように『いつになったらやるんだ』と日々言われた。僕はヤクルトに入る前の5年間はナ・リーグでプレーしていて、当時ロブ・ディブルら、剛球投手が多くいた。彼らの球に差し込まれないように打席に立っていたけど、日本に行くとこれまでほとんど見たことのない膝元に食い込んでくるシュート、ストンと落ちるフォークやカーブなど変化球には本当に苦しめられ、変化球の打ち方を覚えるのに時間が必要だった。だからノムラさんに『ちょっと時間をください、お願いします!』と言い続けたよ。だから自分の経験を踏まえると、キクチもこの地で適応するための時間がもう少し必要だ」

ロイヤルズのテレビ中継の解説者として活躍しているレックス・ハドラー氏【写真:木崎英夫】

「なぜ、監督が忍耐強くしているのか……。ユウセイには開花できる素質があるからだ」

 ヤクルトに在籍したのは僅かに1年のハドラー氏だが、時の野村監督の厳しい要求にも結果を出しその年の日本一に貢献。異国でプレーすることの難しさを知る彼の言葉に感じ入るものがある。では今後に向け、菊池が飛躍を果たすにはどうすればいいのか。ありがちな応援歌を奏でることなく、ハドラー氏は打者目線からの手堅い説明を加えた。

「メジャーでは“ソフト”な球がより有効だと思う。ユウセイと同じ左腕で速球は93マイル(約150キロ)くらいだったけど、スライダーとチェンジアップを駆使して並みいる強打者を撫で斬りにしたトム・グラビンが好例だ。打者のタイミングを狂わせるチェンジがあったから彼は米野球の殿堂入り投手にまで昇りつめた。あと、制球も大切な要素。球のスピードじゃないんだ。野球はそれを競うスポーツじゃないから」

 ソフト=落ちる球。奇しくも菊池は18日の試合で今季最も多い6球のチェンジアップを投じている。相手の腰を砕く切れのいいものもあった。「今日、唯一、次につながるところかなと思う」と好感触を得たその球に、今後の浮沈を握るポイントがあると言っても穿ち過ぎではあるまい。

 ハドラー氏は最後、語気を強めて言った。

「なぜ、監督が忍耐強くしているのか……。ユウセイには開花できる素質があるからだ」

 左腕は23日(同24日)のオリオールズ戦で今季4勝目を目指す。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)