薄くて 丈夫で 美しい―

河北の「IBUKI」、樹脂製ビアグラス作りに挑戦

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樹脂製ビアグラス作りへの思いを語る松本晋一社長。手にしているのは3Dプリンターによる試作品=山形市

 河北町の金型メーカーIBUKI(いぶき)(松本晋一(しんかず)社長)は、飲み口が0.8ミリの薄さながら耐久性があり、高い透明度と造形美を兼ね備えた樹脂製ビアグラス作りに挑戦している。部品に超細密な模様を付ける加飾技術で日本のものづくりを支える裏方の企業が、自社ブランドを前面に、国内、世界の消費者へ“ガラスを超える”グラスを届ける。

 製造業のコンサルティング会社O2の最高経営責任者(CEO)を務める松本社長は2014年、リーマンショック後に倒産寸前まで追い込まれていた同社の経営に参画、改革に取り組んできた。同社の金型で作った部品はソニーのAV機器やスズキ・ジムニーのメーターパネルに採用されるなど高い評価を受ける一方で、松本社長は「下請けは取引先の景気に左右されるのが当たり前のようになっていた。金型には企業ロゴは入らない。社員が家族に『IBUKIの商品』と胸を張れるBtoC(企業と消費者の取引)の新事業を始められないか」と考えた。

 同社は金型の技術を生かしガラスのような樹脂製シャンパングラスとワイングラスを3年ほど前に試作したが、販路が見つからず事業化を断念していた。そのプロジェクトが商品ジャーナリストで元日経トレンディ編集長の北村森さんとの出会いで再び動き出した。北村さんは、海外のリゾートホテルのプールバーでビールが安っぽいグラスで提供される様子を目にし、ガラスを超える樹脂製ビアグラス作りを松本社長に提案。クラウドファンディング「未来ショッピング」で実現を目指すことになった。

 東京の有名ビアバー代表の佐藤裕介さんからアドバイスを受け、豪快さと繊細さが両立した形状、飲み口0.8ミリの薄さ、太陽光でビールが劣化しないように紫外線(UV)カット素材の採用を決定。グラスは高さ18.2センチ、直径7.2センチ(最も細い部分は4.9センチ)、重さは190グラムで、底部にステンレスを付けた。社内の成形機で製造し、商品の磨き直しのサービスも検討している。

 クラウドファンディングは既に目標の30万円を突破したが8月末まで資金を募っている。松本社長は「メード・イン・ヤマガタのビアグラスが国内外の一流ホテルのプールサイドや飛行機のビジネスクラスなどで使われるようになればうれしい。このグラスで優雅にビールを飲む行為が『IBUKIする』という共通語になることが最終目標」と話している。

河北町の金型メーカー「IBUKI」が作る薄さ0.8ミリの樹脂製ビアグラスのイメージ