社説:生物の絶滅危機  人類の生存への警告だ

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 人間は極めて多くの生物を絶滅の危機に追いやっていて、その影響は人間の生存を脅かすほどになっている-。

 生物の多様性や生態系に関する国連の科学者組織「IPBES」が先ごろ公表した報告書でこうした警告を発した。

 自然の恵みがなければ人間の活動はできないが、このままでは自然を使い尽くしてしまう、という。

 IPBESの報告書は、日本も含む50カ国から145人の専門家が参加してまとめられた。各国が、国連の生物多様性条約に基づいて自然保護の政策を立案する際に参照してもらう。

 深刻なデータが数多く報告されている。

 100万種の動植物が絶滅の危機にひんしている、という。世界には現在、800万種の動植物がいる。実に8分の1が数十年以内に消える可能性があるというのは、衝撃的だ。

 そのスピードが人類の経験したことのないものというのも、深刻な事態といえる。

 生物種の減少が私たちの生活にどんな影響を与えるのだろうか。報告書は一例として、ミツバチなど花粉を運ぶ生物の絶滅可能性をあげている。

 農作物の75%は受粉をこうした生物に頼っている。多くは昆虫だが、農薬の多用や開発で昆虫種は減少の一途をたどっている。

 このままでは、世界で年間60兆円を超える農業被害が出る恐れがあるという。世界的規模の食料不足に陥りかねない。

 昆虫の種類が豊富な日本でもミツバチの減少や群体の消滅例が報告されている。人ごとではない。

 技術や経済、社会開発など、すべてを、生態系と生物多様性の保護を基礎にしたものに転換する必要がある、と報告書は指摘する。

 生態系は、多様な生物が相互作用して成り立っている。種が少ないと病気や環境の変化に弱いことが分かっている。商品になる限られた品種だけを保存すればいいわけではない。

 2010年の生物多様性条約締約国会議(COP10、名古屋市)では、「森林などの生物生息地の損失速度を半減する」などの「愛知目標」を採択したが、IPBESの報告によると、その達成は難しい状況だ。

 国際的な目標を練り直し、具体的な行動を各国に促す必要がある。主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも取り上げるべきだ。日本政府はリーダーシップを発揮してほしい。