性差別超え自分らしく 20代女性向け作品に「赤毛のアン」など

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ヤングアダルトは男の子向け、女の子向けがなく、ジェンダーの役割にとらわれない傾向がある」と話す横川さん(京都市左京区)

 性被害を受けた女性たちが加害男性を告発するため立ち上がった「#MeToo」運動。女性だからというだけで合格しにくくした東京医科大の不正入試。日本は法的には男女平等とはいえ、性別などの枠組みに押し込まれ、生きにくさを感じる人は少なくありません。芸術作品を通して、自分らしく生きることへの思いを深めてみませんか? 児童文学、漫画、映画の専門家にそれぞれ、20代の女性にお勧めの作品を五つ紹介してもらいました。

<児童文学・ヤングアダルト> (1)赤毛のアン(作 L・M・モンゴメリ) (2)秘密の花園(作 フランシス・ホジソン・バーネット) (3)青いイルカの島(作 スコット・オデル) (4)魔法にかけられたエラ(作 ゲイル・カーソン・レヴィン) (5)嘘の木(作 フランシス・ハーディング)

■意志は強く、道は開ける 児童文学研究者 横川寿美子さん

 「赤毛のアン」は中学生の時からの愛読書です。読むたびに心地よさを感じるのは、天真らんまんで、いわば生まれっ放しのアンを、マシュウら周囲の大人が全否定も強制もせず丸ごと受け入れているから。そのことによって、アンは自分らしくのびのび生きています。読書を通じてぜひ、自分を丸ごと受け入れてもらうことを、追体験してください。

 アンと同じく孤児を主人公にした「秘密の花園」は、直感力に注目を。親から愛されず、引き取ってくれたおじにも放任され、体も弱いメアリー。おじ宅に長年放置された花園の存在を知り、「花園を復活させる」と思う。結果、庭の再生とともに、メアリー自身も再生します。「これがしたい」と思うものを見つけて実行する。その力を信じることが大切なんですね。

 「青いイルカの島」は、孤島に1人残され18年間を生きた少女の物語。実際にあった話です。慣習にこだわらず、生き抜くために何が大事かを見極めて独自のライフスタイルをつくる。環境に合わせて生活をつくる大切さに気づかせてくれます。

 「魔法にかけられたエラ」は、生まれた時に妖精にかけられた魔法を主人公がどう打ち破るかという話。当初は無理と思ったことでも、冷静な判断と強い意志で、困難に打ち勝てるというメッセージが読み取れます。同じ魔法でも「嘘(うそ)の木」は、現実世界では一表面しか見えていなかったことが、魔法の力によって視野が次第に広がり、人間や物事には多面性があることを教えてくれます。

 女子学生と話していると、学校で過ごす間は男女平等なので、女性は弱い立場だとは思っていないのですね。でも社会に出た段階から、男女の差につまずいてしまう。今回の5冊は、19世紀の欧米を舞台にしたものが中心。男女不平等で役割分担がはっきりとした時代に、ヒロインがどう生きていくか。そこにぜひ触れてほしいです。

<漫画> (1)凪のお暇 (作 コナリミサト) (2)ダルちゃん (作 はるな檸檬) (3)メタモルフォーゼの縁側 (作 鶴谷香央理) (4)さよなら星 (作 谷ゆき子) (5)ひばりの朝 (作 ヤマシタトモコ)

■「世間」「普通」って何なん? 京都国際マンガミュージアム 倉持佳代子さん

 少女漫画には1970年代から、ヒロインが自立するとともに、「ありのままの私を受け入れてもらえる存在を探し求める」というテーマがあります。当初は理想の王子さまに守られていましたが、90年代に入ると、ヒロイン自らが戦って人生を切り開き、自身を肯定するようになりました。

 2010年代になると「自分から搾取する人間や理不尽なものから遠ざかれ」というメッセージを持つ作品が増えてきます。「凪(なぎ)のお暇(いとま)」もそんな1冊。主人公は空気を読んでばかりの28歳のOL。会社を辞めたり、男と別れたりと人生をリセットすることで、世間が決めた幸せや普通に縛られていることに気付きます。

 ダルダル星人という宇宙人が24歳の派遣社員に擬態する「ダルちゃん」も、「普通って何?」という疑問を突きつける物語。この世に普通の人なんて一人もいないし、自分自身も普通に擬態しているのでは、と気付かせてくれます。

 「年を重ねても人生は輝ける」というテーマも増えてきました。「メタモルフォーゼの縁側」は、夫を亡くした75歳の女性が、書店で手に取ったボーイズラブの漫画にはまる物語。書店員である女子高生との友情も描かれ、「高齢だから」という考えが崩されます。

 昭和の復刻漫画「さよなら星」もお勧め。主人公がバレリーナを目指せば目指すほど周囲は不幸に。漫画の固定概念をぶっ飛ばすトンデモ展開で面白い。突如起こる不幸や理不尽に主人公は決して負けない。その姿に励まされます。

 「#MeToo」運動に関連すると、「ひばりの朝」は読むべき1冊。主人公は、父親から性的虐待まがいを受けている14歳の女の子。本人はただの子どもなのに、発育が良いこともあって、周囲は勝手に魔性の女と捉えてしまう。人は想像だけで嫉妬し、知らず知らずに誰かを傷つけ、その人の人生を狂わせてしまう。そんな視点を持つことができます。

<映画> (1)金子文子と朴烈(公開終了) (2)愛がなんだ(公開中) (3)RBG(公開終了) (4)パリの家族たち(公開中) (5)アマンダと僕(7月6日から公開) ※いずれも京都シネマの日程

■振り切れるって格好いい 京都シネマ副支配人谷口正樹さん

 ここ数年、女性を主人公にした作品が目立っています。ハリウッドの場合、アメリカンコミックを題材にした作品で顕著です。これまでは、スーパーマンなど男性ばかりでしたが、2017年に公開された女性戦士が主人公の「ワンダーウーマン」の大ヒットで、流れが変わりました。衣装は肌の露出が多いものでしたが、「キャプテンマーベル」では、男性と同様に一切露出しなくなりました。ミニシアターの世界でも、女性の製作者が増えるなど変化しています。

 まずは「金子文子と朴烈(パクヨル)」。関東大震災の混乱に乗じて朴烈とともに拘束され、大逆罪で死刑判決を受けても、自分の意見を主張する文子。古い因習にとらわれず、正々堂々と生きる姿に驚かされます。

 現代が舞台の「愛がなんだ」の主人公は、好きな男性に振り向いてもらえず、都合のいい女扱いのテルコ。自分自身を捨ててまで願いを求めるテルコを見ていると、彼女の強さを感じるし、「ここまで振り切って生きてもいいのではないか」と勇気づけられもします。

 「RBG」は、アメリカの現役女性最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー映画。弁護士時代から性差別を扱うなど、これまでの生きざまとともに、アメリカにおけるフェミニズムや性差別の歴史も学べます。

 製作陣がほぼ女性の「パリの家族たち」は、パリで働く女性たちの群像劇。老いた母親との関係、仕事のありよう、子どもたちとの向き合い方などを通して、生き方は多様でそれは自分で選ぶことができるというメッセージを受け取れます。

 同じ仏映画の「アマンダと僕」。突然の悲劇で姉を亡くす24歳のダヴィッドは、姉の7歳の娘を引き取ることに。保護者と被保護者、年長者と子どもといった役割分担にとらわれがちですが、2人はそれらを超え、支え合って生きる姿が印象的です。