【愛川・受刑予定者逃走】発生5日目、男を逮捕 横須賀で発見、説得30分

横浜地検を出る男=23日午後5時15分ごろ、横浜市中区

 保釈中に窃盗や覚せい剤取締法違反(使用)などの罪で実刑判決が確定した男が、横浜地検の収容を振り切って神奈川県愛川町の自宅から逃走した事件で、地検は23日、公務執行妨害の疑いで、無職の男(43)=同町田代=を逮捕した。自宅から約45キロ離れた横須賀市の知人アパートに潜伏していたところを神奈川県警の捜査員が確保した。市民生活に影響が出る中、逃走開始から5日目の逮捕劇となった。地検などは逃走に至った経緯や動機などの全容解明を進める。

 逮捕容疑は、19日午後1時5分ごろ、収容状の執行のために愛川町の自宅を訪れた地検職員5人に包丁のような刃物を振り回すなどして公務を妨害した、としている。当時、厚木署員2人も同行していた。同容疑者の認否について、地検は「当時、包丁を持っていたことは認めているが、それ以外は控える」とした。包丁は見つかっていないという。

 地検が20日に逮捕状を取り、県警も全国に指名手配して行方を追っていた。県警は、同容疑者が知人の手助けを受けて潜伏している可能性が高いとみて捜査。捜査関係者によると、同容疑者が、横須賀市公郷町の公衆電話で知人と通話したとの情報を入手。指紋を採取したところ同容疑者と一致し、周辺に居住する交友関係の捜査から同市森崎4丁目のアパートに潜伏している可能性が浮上した。

 23日早朝に捜査員数十人がこのアパートに集結し、約30分間説得を続けたところ、同日午前6時40分ごろ、同容疑者が出てきたため確保した。包丁は持たず、抵抗する様子はなかったという。

 県警は同日、同容疑者をかくまった犯人蔵匿容疑で、この部屋に住む、知人の自称建築業の男(38)を現行犯逮捕した。「間違いない」と容疑を認めている。県警はほかにも、逃走を手助けした人物がいなかったか捜査する。

 これまでの捜査で、逃走していた男は19日午後1時すぎに、愛川町の自宅から他人名義の乗用車で逃走。車は同日深夜に厚木市のアパート敷地内で見つかった。20日早朝には、知人に同市から車で送ってもらって大和市の別の知人宅に立ち寄ったとみられる。着替えを繰り返したり、散髪したりして外見を変えながら逃走していた。

 男は昨年9月に、横浜地裁小田原支部で懲役3年8月の判決を受けた。東京高裁に控訴したが棄却され、今年2月に判決が確定。控訴審中に保釈されていた。

 逮捕を受け、横浜地検の中原亮一検事正は会見し、「地域住民や学校関係者にご迷惑とご心配を掛け、誠に申し訳ない」と述べ、頭を下げた。

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