初めて語ったタンカー攻撃 イラン大使の言い分 米制裁は「経済テロリズム」

イラン革命防衛隊が撃墜した米軍の無人偵察機の同型機(米空軍提供・ロイター=共同)

 ペルシャ湾やオマーン湾沿岸で米国とイランが対峙、衝突する危険が高まっている。トランプ米政権は新たにイランへの追加制裁を発表する見通しだ。安倍晋三首相が6月にイランを訪問、ロウハニ大統領やハメネイ師と会談した際に同席したモルテザ・ラフマーニ・モヴァッヘド駐日大使が24日に日本記者クラブで会見した。タンカー攻撃や米無人偵察機撃墜など両国の軍事的緊張について初めて自らの見解を述べ、米国や敵対する湾岸諸国に対するイランの立場を外交官として冷静に説明した。外交辞令もあるが、貿易相手国日本への最大配慮がにじむ言い分だった。(共同通信=柴田友明)

 ―日本、イラン首脳会談に同席して率直に感じたことは?

 「建設的で、友好的で、率直なやりとりがあり、日本とイランの関係の深さを感じた。(両国の新たな)出発点となる訪問で安倍首相の善意による外交努力、その意思を感じた」

 ―日本のタンカー攻撃は誰によるものなのか?

 「タンカー攻撃をわが国は強く非難している。米国、(あるいはイランに)反対するいくつかの国々の仕業だ。ペルシャ湾で船舶が安全で自由な航行ができることがわれわれの責務だと考えている。だから、船員の救助もすぐに行った」

 「(米側が画像などでイラン革命防衛隊の関与を示すとした主張について)米国側の大きな偽りだと言える。そもそも24時間ですべてのことを明らかにすることができるだろうか。(例えば)日本でも建物火災があったときに出火原因まで突き止めることは24時間では十分とは言えない。一連の出来事は地域の政情不安を招き、イランへの嫌悪感を高めるためのものだ」

 ラフマーニ大使は質疑応答前の講演で「今回の安倍首相訪問は成功だった」と語り、両国の外交関係では貴重で重要な機会であったと強調した。

 一方で、米側のこれまでの経済制裁をイランへの「経済テロリズム」という表現で何度も非難。核合意を巡ってIAEAがこれまでに15回も確認作業などを重ねた上で自国としてそれを遵守してきたことを説明。さらに、訪問した安倍首相の「善意」を妨害したという言い方でタンカー攻撃を批判した。

 この地域(ペルシャ湾)の不安定化の根本要因は「外国勢力の介入」とした上で「空想に満ちた」という言い方で敵対するアラブ諸国やイスラエルに対して厳しい姿勢を崩さなかった。

 ラフマーニ大使は1959年生まれの59歳。アジアではこれまで上海総領事などを務め、昨年7月に日本に着任した。直後の9月の会見では米国が核合意から一方的に離脱して、経済制裁を課したことについて米側の姿勢を批判。日本とイランとの貿易が円滑に進むように、日本企業の懸念払拭を日本政府に求めていた。

【米イランを巡る主な動きの経過】

 13年6月14日 イラン大統領選で穏健派ロウハニ師当選
 15年7月14日 欧米など6カ国とイランが核合意
 16年1月16日 欧米がイラン制裁解除
 17年1月20日 トランプ米大統領就任
 18年5月8日 トランプ氏が核合意離脱を表明
 8月7日 米、自動車部門などを対象に第1弾の制裁再開
 11月5日 米、制裁を原油や金融部門に拡大
 19年5月2日 米、イラン産原油を全面禁輸
 8日 イラン、核合意に基づく一部義務の履行停止を表明。米国は制裁を金属部門に拡大
 6月13日 日本の海運会社運航のタンカー含む2隻に攻撃。米、攻撃のイラン関与を断定
 17日 イラン、核合意で定められた低濃縮ウランの貯蔵量上限を27日に超過すると発表
 20日 イラン革命防衛隊、米国の無人偵察機を撃墜
 21日 トランプ氏、イランへの報復を攻撃10分前に中止と表明
 22日 米、イランへのサイバー攻撃を20日に実施と報道。トランプ氏、イラン追加制裁を予告

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