選抜準優勝の新鋭・クラーク女子野球部の挑戦 楽天もサポートする新たな境地に迫る

クラーク女子野球部のエース・小野寺佳奈【写真:高橋昌江】

女子プロ野球レイアと練習試合で3-6で惜敗も元楽天石田監督は評価

 クラーク記念国際高校仙台キャンパス(以下、クラーク)の女子硬式野球部が22日、女子プロ野球のレイアと仙台市内で練習試合を行った。1期生11人で挑んだ、今春の全国選抜大会で準優勝。この日の試合は3-6で敗れたが、プロとの試合を通じ、悲願の全国制覇に向けて大きな財産を得た。

 3-0から追い上げられ、3-6で逆転負けを喫したが、創部2年目のチームには収穫の多いゲームになった。「女子野球のレベルの高さを見せてもらった。うちとしては大きな1試合」と石田隆司監督。練習の成果を出せたり、逆に今後の課題が見つかったり。高校1、2年生だけで初めて女子プロ野球チームと戦った経験はかけがえのないものになった。

 昨年4月、東北地方初の高校女子硬式野球部として産声をあげたクラーク。地元のプロ野球・楽天と提携して活動しており、指導者は楽天ベースボールアカデミーのコーチから派遣されている。石田監督は2008年から11年まで投手として楽天でプレー。広橋公寿ヘッドコーチは西武などで活躍し、楽天などでコーチ経験がある。石田監督、広橋ヘッドコーチ以外でも現在、アカデミーコーチを務める楽天の元選手たちが教えに来ることもある。

 移動のバスも楽天が使用していたものを譲り受け、楽天の試合前練習の見学や試合観戦の機会もある。カリキュラムや単位取得の柔軟性がある通信制の全日型教育で、午前中に一般科目を学習し、午後から野球の練習が約4時間、行われる。こうした野球に集中できる環境で、昨夏は1期生11人で初出場ながら選手権大会で8強入り。この春は選抜大会で決勝まで進み、神戸弘陵(兵庫)に0-1のサヨナラ負け。初出場初優勝とはならず、準優勝で悔し涙を流した。

 普段から元プロの指導を受け、日本一を目指している選手たちが今回、初めて女子プロ野球チームと試合をした。初回、1死二塁で三浦里莉(2年)が右中間を割る適時二塁打を放って先制。2回には連打でチャンスを作り、野選と2番・安孫子里沙(2年)の2点適時打で3点を加えた。先制打を放った三浦が、投球がワンバウンドした時に迷わず三塁へ走ったことや2回に高橋結央(2年)がエンドランを決めたことに対し、石田監督は「練習の成果が出た」と拍手。一方で、3回以降は1人の走者も出せず、パーフェクトに抑えられたため、「そこは直していかないといけないところ」と話した。

クラーク女子野球部と女子プロ野球・レイアのメンバー【写真:高橋昌江】

クラークには選抜で女子史上最速125キロをマークした小野寺が在籍

 庄司美空主将(2年)も試合を振り返り、「変化球を打つことができなかったし、見逃し三振も多かった」と反省した。選抜大会でも変化球を打てなかったことや初球から積極的にバットを出せなかったことは課題になった。「(レイアは)甘い球は振りに行っていたし、初球からフルスイングができていた。合わせるバッティングがなかったのですごいなと思いました。粘って打つとか、粘って塁に出るというところを真似していきたいです」と庄司主将。プロの打席での姿勢から学んだことを今後に生かしていく。

 投手層も課題の1つだ。選抜大会ではエース・小野寺佳奈(2年)がほぼ1人で投げ抜いており、投手陣の充実は日本一に向けて必須事項。石田監督は「ピッチャー交代に悩むくらい成長してくれたら楽しみ」と発破をかける。そんな中、先発・三浦が3回を5安打1失点にまとめた。前日に先発を告げられ、緊張から眠れなかったというが、「投げはじめると緊張が解けて楽しかったです」と、走者を背負いながらも粘投。「もっと打たれて点数を取られると思ったけど、1点に抑えられたのは自信になります」と声を弾ませた。石田監督も「ボールの質はよかったと思います。打たれたのは高めだけ。あとは詰まっていた」と称えた。

 4回に2番手・中川音果(2年)が3連打を浴びるなどして5失点。逆転を許したが、5回は反省を生かして無失点で切り抜けた。6回はエース・小野寺がマウンドへ。先頭を四球で歩かせたが、落ち着いた投球でホームは踏ませなかった。選抜大会で高校女子史上最速の125キロをマークした小野寺は「卒業したら女子プロ野球選手になりたいので、いい経験になりました。技術が高いですけど、あと1年半、しっかり練習に取り組めば自分も(プロに)なれるかなと思いました」と夢を膨らませた。4試合に登板した選抜大会以降、投球練習などを控えることもあったが、夏に向けてここから調整していく。「あと1か月で夏の大会。投げるからには130キロを目標にやりたいです」と、さらなるレベルアップを誓った。

 4月に新入生14人が加わり、計25人になったクラーク。実戦練習も増え、日々の練習の内容も濃くなっている。対戦したレイア・新原千恵監督は「1、2年生ですよね? 打撃も強かったですし、ピッチャーのコントロールもいい」とスキル面はもちろん、「野球は頭を使うスポーツですが、そこも鍛えられているなと感じました。選手に落とし込まれているし、選手も理解してやっているのが見えたので、すごくいいチーム。本来、私たちがやりたいと思っている野球をやっている感じでした」と感嘆した。

 普段から厳しい世界で心身を高めてきた元プロから的確な指導を受けているクラークの選手たち。目指す女子プロ野球チームとの試合で自信を深めたり、刺激を受けたりした様子。悲願の日本一に向け、この交流も今後の糧にしていく。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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