G20開催地の市民が世界に伝えたいこと  もう一つの「大阪サミット」 貧困、差別の当事者を忘れない

 G20大阪サミット開催が28日に迫ってきた。各国首脳らの会合の前に、この機会をとらえて市民の立場からの声を発信しようと、アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)や非政府組織(NGO)の有志が中心となって、「G20大阪市民サミット」を25、26日の2日間、大阪市北区の「PLP会館」で開催する。ヒューライツ大阪所長でサミット実行委員会の共同委員長を務める三輪敦子(みわ・あつこ)氏に聞いた。

 ―地元で市民サミットを開催する意義は

 G20の公式プロセスの一環として世界各国の市民社会組織が4月に「C20サミット」を東京で開催し、安倍首相に提言書を手渡している。ただこれは、公式プロセスであるがゆえに、特定の国を名指しして問題にすることはできなかった。われわれが開くサミットは、大阪の市民が中心になって、世界の課題と日本の課題を広く共有し、訴えていきたいと考えている。
 
 ―議論で重視するポイントは

 (貧困や飢餓の撲滅に向けた)国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に代表されるような、未来の国際社会のあり方を発信したい。「誰一人取り残さない」ことが重要だと考えている。つまり、経済的に余裕がなかったり、情報自体が届いていなかったり、といった理由で会議に来ることができない人たち、そうしたまさに貧困や飢餓、差別の当事者となっている人たちの権利を大切にしたい。

 ―注目度はどうか
 
 すでに北海道から沖縄までの日本全国と海外から約300人の参加表明がある。手応えを感じている。

 ―市民サミットの側として、G20の首脳に言いたいことはあるか

 過去の首脳宣言を振り返ると、良いことは言ってはいるが、履行されていないことも多い。実行への道筋をしっかり考えてほしい。

 また、米中貿易摩擦によって、米国と中国だけがクローズアップされることを懸念している。一国中心ではなく、国際社会が苦労して勝ち得てきた多国間主義、世界協調が大切な理念であることを再確認してほしい。

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 市民サミットでは「気候、エネルギー」や「ジェンダー」、「移住労働者、人権」など約15のテーマに沿って分科会を開き、意見交換する。結果を踏まえ最終日の26日に、参加者全員で市民宣言を採択する方針だ。(聞き手、共同通信=長村勝彦)

 三輪敦子 日本赤十字社や国連女性開発基金(現UN Women)などで、ジェンダーや人道支援、人権の分野での調査、研究に携わる。2017年からアジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)所長。2019年C20共同議長も務める。

ウェブサイトは G20 大阪市民サミット | OSAKA Citizens' Summit

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