新たなデリバリーサービスの試み 『なぜ』このツール、この方法、このタイミング?など、オンラインビジネスやデザインの世界を一歩踏み込んで考えます。

デリバリーロボットが自宅まで食事を届けてくれる。そんな未来のようなことが、もうすぐそこまで来ているかもしれません。

アメリカ合衆国のカリフォルニア州バークレーでは現在、新しいデリバリーロボットのサービスが行われています。この愛らしく、表情豊かな「Kiwiボット」を路上で見かけない日はありません。

人はなぜロボットを使うのでしょうか。それは何より、人件費を削減できるからかもしれません。

2017年に設立されたKiwi CampusというスタートアップがRestaurant Bot、Kiwi Bot、Kiwi Trikeを組み合わせたデリバリーシステムを開発。アプリで注文したカスタマーに、Kiwi Botが路上を走り、レストランからミールを届けるという流れです。アプリをダウンロードして実際に使用してみました。

毎時Discountを行っており、商品によっては割引分が送料と相殺されて、店頭で買う金額と変わらなくなります。デリバリー時間は30分から40分程。混雑時はスタッフがロボットの代わりに届けるなど、万全の体制でテストを行っているみたいです。

お届け先の近くまでKiwibotが接近すると、Kiwibotに搭載されたカメラをアプリから見ることが可能になります。これが意外におもしろいのです。車や歩行者が近くにいるのを検知すると、キッチリ止まっていました。

アプリのUnlockボタンを押すことで、上部のパネルが開き、ミールを受け取ることができます。そして画面には“thankyou”の文字が。デザインとしてもテクノロジーとしても、このKiwiはとても優れているサービスだと思います。このKiwiボットはディープラーニングとAIにより、人や障害物から信号の色まで区別して走行しているのです。

Kiwiというマスコット性も、ロボットという異物をうまく町の風景に溶け込ませています。これはブランディングのうえで、他社との差別化にもっとも役立っていると思います。

思わず写真を取りたくなる表情豊かな可愛らしい容姿は、SNSでバズるには十分な要素ではないでしょうか。この遊び心もユーザーエクスペリエンスに貢献していると思います。

また、スタートアップの拠点をカレッジに定めているのも興味深いです。CEOのFelipe Chávez氏は、”新しい文化を受け入れやすい学生という顧客が、適度に密集している”ということと、”路上の状態と天候の良さ”をバークレーを選んだ理由として主に挙げています。

ミールだけではなく、今後はさまざまな分野で自動デリバリーサービスが進むと、さらに面白くなるのではないでしょうか。

ライタープロフィール
重岩 元(Gen Kasaneiwa)
株式会社グラフネットワーク、ロサンゼルス支社所属のデザイナー。2015年に渡米。カリフォルニア大学バークレー校で、アートとデザインを通して動画制作、ゲーム制作、AR、VR、WebVR、3Dプリントや3Dモデリングなどのテクノロジーを積極的に学ぶ。卒業後の現在は日米のWeb制作業務、アプリ開発、グラフィックデザイン全般を手がける。新潟県出身。
http://www.graphnetwork.com

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