都民にも宮城の鮮魚を 漁師ら経営の居酒屋3年

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自慢の刺し身の盛り合わせを客に説明する魚谷さん(左)

 宮城県内の若手漁師らでつくる一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(FJ、石巻市)直営の居酒屋「宮城漁師酒場 魚谷屋」(東京都中野区)が24日、オープンから3年を迎えた。宮城直送の海の幸を提供し、生産者を招いた交流イベントも開催。水産業になじみの薄い都民に、海産物のおいしさや生産現場の実情を伝えてきた。店主の魚谷浩さん(39)は「飲食店から水産業の課題を解決したい」と語る。

 魚谷さんは東日本大震災後の2011年4月から約4年間石巻に居住。半島部の復興支援などで培った人脈を生かし、顔見知りの漁師や鮮魚店から地場の水産物を直接仕入れ、生産地と同等の鮮度を保っている。

<週末は予約必須>

 固定のメニューはなく、刺し身の盛り合わせやモウカザメの心臓「モウカの星」、生ガキなど、その時季にしか食べられない食材を用意。旬の食材を届けることで、年間を通したリピーターの獲得につなげた。

 来店者数は年々増加し、週末は予約なしでは入れないほどの人気。客単価は4800円程度で、5000円を上回る月もある。開店当初から500円以上伸びた。

 店は大人数の宴会を受け入れない。魚谷さんは「客の回転率を狙った商売をしていない。単に売り上げを伸ばすのではなく、漁師や水産物のストーリーを伝えることを重視している」と説明する。

<資源減に危機感>

 力を入れるのは月1、2回、宮城の漁師らが店に立つ「漁師ナイト」だ。農家や蔵元も参加し、生産物の魅力や苦労話を披露する。生産者と消費者の交流を通し、1次産業の課題を知ってもらう狙いがある。

 背景には、資源の減少で持続可能性が揺らぐ水産業への危機感がある。魚の早捕り競争で量を追い求める漁業から、魚を厳選して質を高める資源管理型への転換が急務だ。それには適正価格での購入など、消費者の理解が欠かせない。 現状伝える媒体

 FJの販売部門として分社化し、店を運営するフィッシャーマン・ジャパン・マーケティング(FJM、石巻市)の最高執行責任者(COO)津田祐樹さん(38)は「居酒屋という媒体を使い、うまい料理を楽しみながら水産業の現状を学んでもらえる。来店をきっかけに魚食が危機にあることを知り、意識や生活を変えてほしい」と語る。

 FJMは都内に2号店の出店を検討中。東京と大阪を中心に、最大10店舗まで飲食事業を拡大させる方針で、水産業の課題解決に向けた消費者へのアプローチを強める。

[フィッシャーマン・ジャパン(FJ)]東日本大震災後の2014年、若手漁師や鮮魚店の2代目らが「かっこよくて、稼げて、革新的な」の新3Kを掲げて設立した。担い手育成事業などを手掛け、24年までに多様な能力を持つ水産業従事者を三陸に1000人増やすことを目標に掲げる。