『凪待ち』 香取慎吾をここまで汚せるのは白石和彌監督だけ!

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 映画『孤狼の血』や『凶悪』で知られる白石和彌監督が、香取慎吾と初タッグを組み、完全オリジナル脚本の映画化に挑んだ作品。これまで、役所広司、ピエール瀧、リリー・フランキーと様々な役者たちのリミッターを外し、狂気に近い演技を引き出してきた白石監督が香取の“アイドルオーラ”を剥ぎ取ります!

 香取が演じるのは、ギャンブルに溺れ、借金まみれの生活をしていた男・郁男。どハマりしている競輪との縁を切るために恋人の故郷である宮城県の石巻市へと、恋人の娘とともに移住します。新しい仕事を見つけて、過去の自分と決別しようともがきながらも、ギャンブルの誘惑を断ち切れずにいた彼を襲ったのは、あまりにも理不尽な悲劇。ぶつけようのない怒りを抱えてズブズブと闇深い沼へと堕ちていく郁男を言葉少なに演じる香取の演技は圧巻です。

 暴れ出したら止まらない凶暴性も、競輪を見るときの危なっかしさも、どうしようもないクズな男ですが、恋人の娘への接し方から、彼の根っこの優しさはスクリーンを通して静かに伝わってくる。暴力的な中にもその繊細さを感じさせるのは、さすがの白石さん。いやー、我らが国民的アイドル、いい感じに汚れていますよ! ロケ地となっている石巻市の、未だ復興の兆しが見えない姿と郁男がシンクロして、登場人物全ての心に「凪」が訪れることを祈らずにはいられませんでした。★★★★☆(森田真帆)

監督:白石和彌

出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美

6月28日(金)から全国公開