映画「最後の二重被爆者」完成 山口彊さんの遺志継承 家族、監督が会見

「二重被爆」をテーマに新作映画を完成させた映画監督の稲塚さん(右)と山崎さん(中央)、原田さん=長崎市役所

 東京の映画監督、稲塚秀孝さん(68)は24日、広島と長崎で原爆に遭った「二重被爆」に関する新作ドキュメンタリー映画「ヒロシマ ナガサキ 最後の二重被爆者」(80分)の完成記者会見を長崎市で開いた。同市の二重被爆者、山口彊(つとむ)さん(2010年、93歳で死去)との出会いを機に取材を続け、今作では山口さんの長女、孫、ひ孫の3世代の継承活動も紹介。孫の原田小鈴さん(44)は「映画をきっかけに二重被爆や原爆について若い世代に知ってほしい」と語った。
 稲塚さんは05年から山口さんを取材し、生前を追った2作品を11年までに公開。今作でも晩年に語り部活動を始めた山口さんの訴えを振り返るほか、今年までに新たに取材した二重被爆者3人の証言を収録した。
 山口さんの長女の山崎年子さん(71)、原田小鈴さん、ひ孫の原田晋之介さん(12)は、講話や紙芝居で山口さんの二重被爆の体験を伝えている。山崎さんは「父の死後、平和を次世代につなぐことが大事だと思った」と活動に込めた願いを語った。
 「最後の-」という題名について、稲塚さんは「被爆者の時間が限られているという意味を込めた」とする一方、「時間はぎりぎりだが、まだ二重被爆者は見つかるかもしれない」とし、今後も取材を続ける決意を述べた。
 「ヒロシマ ナガサキ 最後の二重被爆者」は7月13日から県外で順次上映を開始。県内は長崎セントラル劇場(長崎市)で8月9日から。

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