長崎県高校野球 データでみる課題 夏の甲子園 10年間で3勝 浮上のカギは攻撃力

101回目の夏の大会を迎える甲子園球場。新たな時代に県勢は躍動できるのか=兵庫県西宮市

 第101回全国高校野球選手権長崎大会が7月11日に開幕する。今年は例年以上に混戦模様。果たしてどのチームが令和最初の甲子園切符を手にするか。そんな長崎大会の盛り上がりと同様に期待されるのが、低迷が続いている全国での飛躍。県勢は過去10年間、夏の甲子園で3勝にとどまっており、100回の歴史の中でも4強(1952年長崎商、76年海星、2007年長崎日大)が最高成績だ。では、なぜ結果が出ないのか。これまでの長崎大会や全国選手権のデータを基に、本県の課題などを探った。

  ■投高打低
 近年、全国的な傾向となっているのが、打力が投手力の上をいく“打高投低”。技術練習や体幹トレーニングなどの進歩で力強さが増して「金属バットを使用していた時代の社会人野球に似ている。4点、5点もセーフティーリードではない」という声もある。
 だが、県内を見てみると、むしろ“投高打低”の色が強い。過去10年間の長崎大会を制したチームの平均防御率は1.44、1試合平均失点は1.6。昨年の創成館と12年の佐世保実の防御率は1.00を下回っており、予選段階の守備面は全国レベルの数字を残している。
 一方、チーム打率で4割を超えたのは11年の海星だけ。1試合平均得点も6.2とやや物足りない。16年の長崎商は打率2割2分5厘、防御率1.00で優勝するなど、本県は投手力や守備力が、そのまま甲子園出場につながってきた。
 実際、特に「守りが重要」とされている春の選抜大会は、一定の結果を出してきた。09年はエース今村猛(広島)を擁した清峰が日本一、16年は海星、昨年は創成館が8強入りしている。

  ■打高の壁
 その投手力、守備力が、夏は“打高”の壁に阻まれてきた。県勢の甲子園10年間の平均防御率は4.22。1試合平均失点も5.2で、打力が向上している現状を考慮すれば、特に打ち込まれているわけではない。1試合平均与四死球も2.5と踏ん張っている。
 だが、攻撃力については、低調と言わざるを得ない。平均打率は2割3分2厘で、1試合平均得点も3.2。数字上は「打力不足」が低迷の原因となっている。
 もちろん、これはデータを基にした分析で、敗れた試合の中には、点差だけでは評価ができないような接戦もあった。つけ加えれば、高校スポーツは勝ち負けだけがすべてでもない。ただ、選手たちの大切な時間や各種運営費などを捻出している以上、過去10年間の甲子園で13試合しかできていない現状は、真摯(しんし)に受け止めるべきではないだろうか。
 昨年、春夏全国制覇を果たした大阪桐蔭は過去10年間、甲子園で48試合(春25、夏23)を戦っている。選手の資質なども含めて単純比較はできないが、あの独特の空間で一つでも多く試合をすることで、一人一人の経験値が上がり、チームとして強くなっているという好例だ。

  ■戦う場所
 県高野連も現状打破のために、新たな一手を模索している。黒江英樹理事長は「あくまでも目標は夏の大優勝旗。県高野連としても、打てるチームをつくりたい」とした上で、今後は打撃に特化した指導者講習会、県外の強豪を呼んでの招待試合開催などを視野に入れている。
 昨季、秋の明治神宮大会で大阪桐蔭を倒して準優勝、春の選抜も8強入りしながら、夏は初戦敗退した創成館の稙田龍生監督が反省を込めて指摘する。「得点のバリエーションを増やさないと全国の上位チームとは戦えない」。打力向上だけではなく、積極的な走塁や好機での確実性、監督の采配なども含めて“攻撃力”のさらなるレベルアップが必要だと説いている。
 約2週間後、新たなスタートとなる101回目の夏が始まる。ベンチ入り、レギュラー獲得、1回戦突破-。球児たちがそれぞれの目標達成へ全力を傾ける場であると同時に、甲子園を「戦う場所」と位置づけて、攻撃力を上げてきたチームが増えることが期待される。

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