農場HACCPの認証取得 消毒用石灰の散布と管理徹底 野元社長「安心安全を消費者へ」

農場HACCPの認証取得に取り組んだ野元社長

 長崎県壱岐市芦辺町の野元牧場箱崎支場が、食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の考え方を農場に取り入れた「農場HACCP(畜産農場における飼養衛生管理向上の取組)」の認証を、県内の農場として初めて取得した。認証は3日付。
 農場HACCPは、農場の衛生管理を向上することで、畜産物の安全性確保につなげようと農林水産省が推進。消費者にとっては食品の安心安全を判断する基準となる。
 同支場は2棟の牛舎で80頭の黒毛和牛を飼育。野元勝博社長(59)は「以前は五つある牧場の中で最も衛生環境が悪く、牛もあまり大きくならない場所だった」と話す。
 野元社長は取引のある動物用薬品会社から農場HACCPについて教わり、吉木直己農場長(55)や県壱岐振興局農林水産部衛生課の職員らと検討チームを設立。2017年5月から認証取得に取り組んでいた。
 農場HACCPの取り組みでは、消毒用石灰の散布と管理を徹底。牛の寝床に敷くわらやおがくずに石灰を混ぜ込むことで、乾燥と消毒の効果が発生した。衛生管理の取り組みは実施日時や内容を記録し、畜産物の安全性を客観的に評価できるようにした。
 牛舎内に所狭しと並んでいた農機具や資材なども整理。吉木農場長は「スペースが広くなり、作業しやすくなった。牛も落ち着きが出て餌をよく食べるようになった」と効果を語る。道路と牛舎をつなぐ坂道には、人や牛の転落を防止する柵を設け、心に余裕が持てるようにと花を飾った。
 野元社長は「消費者目線で飼育することで従業員の意識も変わった。結果的に牛の発育も良くなっている。安心安全な肉牛を消費者の方にとどけられるよう、他の農場でも認証取得に取り組んでいきたい」と意欲を見せた。

牛に餌をやる吉木農場長=壱岐市、野元牧場箱崎支場

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