【世界から】米、キューバへの経済制裁を強化する狙いは

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キューバの首都ハバナの街中を走るクラシックカー。手前は人力タクシーだ(C)Kasumi Abe

 米国務省は6月、カリブ海の社会主義国キューバに対して、アメリカから同国への渡航に関する新たな制限を設けることを発表した。

▼教育活動などでの渡航を禁止

 これまでは、家族の面会や報道目的、人道支援など12項目に該当する場合のみ、米国からの渡航が許可されてきた。今回の新たな渡航制限で、その中の1項目だった「教育活動、団体での人的交流」目的の渡航が禁止になった。渡航制限の対象はこれだけにとどまらない。民間機やプライベート機、クルーズ船、ヨットなどを使って米国からキューバに渡ることができなくなった。

 キューバは国を挙げて観光産業に力を入れている。それは少しでも多くの外貨を獲得したいからだ。〝ドル箱〟の観光産業に大きな打撃を与えることで、米国と対立姿勢を見せているベネズエラのマドゥロ政権を支持するキューバ政府に圧力をかける狙いがある。

▼欧州企業などとの対立も

 アメリカ政府は今年に入り、キューバに対するさまざまな制裁を実施してきた。

 その主なものを紹介しよう。1959年のキューバ革命後にキューバ政府に接収された米国系企業や個人の資産に関する損害賠償請求を、今年5月2日から可能にした。このことは、これまでキューバ国営企業や団体だった訴訟対象が外国企業にまで広がることを意味する。革命後に接収された土地に建設されたホテルなどは現在、その多くを欧州連合(EU)やカナダの企業が運営している。訴訟が増えると、米国はEUなどとの対立の火種をさらに抱え込むことになるのだ。さらには、キューバに送金可能な額の上限も厳しくしている。

米制裁措置を受け、キューバから離れた米客船会社大手カーニバルのクルーズ船を見る人たち=6日、メキシコ・コスメル(ロイター=共同)

 キューバと米国の関係は、オバマ政権下の2015年にいわゆる「雪解け」を果たし国交も正常化した。ところが、わずか2年後の17年にトランプ政権が発足すると経済封鎖が再開され、両国の関係は以前のように悪化している。

 トランプ氏は「(国交正常化した際の)渡航と通商の制限緩和は、単にキューバ政権を富ませただけで、キューバ国民のためになっていない」と何度も問題点を指摘してきた。

▼「ブエナビスタ」公開から20年

 経済制裁は強化されているが、両国の首都にある大使館を通しての外交関係は依然として維持されている。また、家族の面会や人道支援目的などでの渡航も変わらず許可されている。

 6月4日はくしくも、老ミュージシャンたちの音楽活動を通してキューバの日常を活写したドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が米国で初公開されてから丸20年となった日だ。これを受けて、映画ファンを中心にキューバへの関心が改めて高まりつつある。そんな中、キューバが抱える憂いを頭の片隅に置きながらこの名作を再び見てみると、感慨がより一層深くなる。(ニューヨーク在住ジャーナリスト、安部かすみ=共同通信特約)

ハバナの運河を運行する渡船の窓ガラスに記された中国語。米国との関係再悪化を受けて、キューバでは渡船や大型バスなどの公共交通機関を始めとして中国製品へのシフトが進んでいる(C)Kasumi Abe