PUSHIM、20周年ツアー東京公演盛況のうち終幕! 約6年振のLIVE映像発売決定!「強い心を持って、またステージに立ちたい」

「デビューから20年経って思うことは、心は20年前と変わっていないということ。今も音楽には夢を持っているし、あんなことしたい、こんなことしたい、まだまだ自分は未熟だという気持ちでいっぱいです」。デビュー20周年ライヴツアー「PUSHIM 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR “immature”」東京公演のステージで、PUSHIMが発した言葉だ。

10代の頃からレゲエの現場で歌い始め、1999年に「Brand New Day」でデビュー。R&Bディーヴァたちが活躍する時代に、「私にはレゲエがある」と信じた道を突き進み、本場ジャマイカでのレコーディングも多数経験。そのレゲエが持つ多様なサウンド・アプローチとリアリティのあるメッセージを、圧倒的な歌声とともに届けてきた。

今年でデビュー20周年を迎えたPUSHIMだが、本人の言葉を借りれば「失敗の多い人生」だった。自信を失うこともあれば、実らぬ恋もたくさん経験した。彼女が楽曲に託すポジティヴなメッセージの裏には、悲しみや挫折などネガティヴな感情がある。それを押し退け自分を奮い立たせるために、強く前向きな楽曲を作り続けてきた。「人生に試練はつきもの。それが痛いほどわかるから、曲を作り、音楽でみんなと気持ちを分かち合えたらという想いで歌い続けています」。そう、ライヴの途中で想いを吐露したPUSHIM。ひとりの女性であり母親である彼女が生み出す楽曲に感動し、涙を流し、強く生きようと背中を押されたリスナーは多い。ライヴツアー「PUSHIM 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR “immature”」の東京公演に駆け付けたオーディエンスから送られた「PUSHIMありがとう!」のエール。彼女の音楽を人生の一部にしてきたファンにとって、このツアーは特別なものだったに違いない。

そんなファンの気持ちに応えるべく臨んだPUSHIMのステージは、とにかく素晴らしかった。かけがえのない仲間であり、絶大な信頼を寄せるバンドHOME GROWNをバックに、デビュー曲「Brand New Day」から最新曲まで20曲を超えるセットリスト。ライブの最初には名曲「FOREVER」をフルコーラスで歌い上げ、ラブソングの金字塔「I Wanna Know You」や「Anything For You」ももちろん披露。20周年記念ツアーらしく、「Heavenly」や「For Your Song」などオールドファンの心を掴むセグメントも。現在のPUSHIMの歌唱力/表現力で届けられたクラシックスには、また新たな魅力が備わっていた。

レゲエ・シンガーとしての幅の広さ、レゲエ・ミュージックをシーンに紹介してきた立役者としての矜持も改めて感じた。「ナナメにキメる STYLE」や「THE FREEDOM ROCK」などタイプの異なるダンスホール、ダブワイズで会場を揺らした「on 7th street」、レゲエ好きが反応する「DA BULLDOG」や「Jamaica Jamaica」といった楽曲もオンリスト。今年3月にリリースした通算10枚目となるアルバム『immature』からは、リード曲「DiDistance」をはじめ、仲間への感謝の想いを曲にした「Neighbors」や「In my village」も披露した。

アンコールではPUSHIMが音楽人としてリスペストする、キヨサクfrom MONGOL800とEGO-WRAPPIN’がゲストとして登場。20周年を祝福する言葉を贈り、コラボレーションした楽曲「ララバイ feat.キヨサク(MONGOL800)」、「HEAT feat.EGO-WRAPPIN’」を披露。記念すべきライブに、PUSHIMにとってもオーディエンスにとっても最高のプレゼントとなった。

見どころの多いライヴであったが、ハイライトはPUSHIMの願いともとれるメッセージにあったと感じる。東日本大震災の直後に制作した「夕陽」、その流れを汲む「Light Up Your Fire」や「世界の何処かで」。PUSHIMがメッセンジャーであることを証明する「I pray」や「ルネサンス」の前後で届けられたMCは、来場者全員の心に突き刺さったに違いない。「神様は、人が乗り越えられない試練を与えることはないだろうと、それだけを信じて今も生きています。おそらくこの先も、悲しみはやってくると思います。それを乗り越えられる力、強い心を持って、またステージに立ちたいと思います」。そして、「みなさんも命を燃やして、時代に参加してください。未来の子どもたちのために」と付け加えた。ONE LOVE ,ONE HEART,ONE UNITY―――。PUSHIMのアーティスト性が存分に発揮された、最高のライヴだった。

このライヴツアー「PUSHIM 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR “immature” at Zepp DiverCity」の模様は、映像作品としてBlu-rayにパッケージされ、ライブ映像作品としては約6年ぶりに2019年9月に発売することが決定した。レゲエにこだわり、レゲエを超越したアプローチでも稀有のミュージカリティを発揮するアーティストPUSHIMの、現時点での集大成が詰まったライヴをぜひ体験して欲しい。

取材・文/ 馬渕信彦 撮影: @_24young_

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