「上海高島屋」閉店と同時に動く、したたかな台湾企業

高島屋は2019年6月25日、取締役会において海外連結子会社「上海高島屋百貨有限公司」が同年8月25日(予定)の上海高島屋百貨有限公司の株主会での清算決議を前提に、同社の解散および清算を決議した。これに伴い、今後 20~30億円程度の損失が発生する模様。

上海高島屋の撤退が決まった

上海高島屋百貨有限公司は上海市長寧区において百貨店「上海高島屋」を運営してきたが、業績は厳しかった。営業収益は17年2月期が38億6162人民元(63億3300万円)、18年2月期が42億1326人民元(70億200万円)、19年2月期が19億1483人民元(31億8600万円)。営業利益は、17年2月期が△5億9762人民元(△9億8000万円)、18年2月期が△6億8600人民元(△11億4000万円)、19年2月期が△5億2072人民元(△8億6600万円)だった。昨年来の米中貿易摩擦の長期化による経済の停滞、個人消費の落ち込みなどにより事業改善が見込めないことを理由に、23年度までに目指していた黒字化を断念。19年8月25日をもって閉店することを決めたという。

だが、某化粧品メーカー幹部は「よくあの立地に店を置いたと思う。来店客数が少なすぎる」と立地選定の誤りを指摘。また、現地EC代理商の幹部も「虹橋空港からのトラフィックを確保し、高めるなど、運営に工夫がなかった。閉店は必然だろう」と厳しい見方だ。不動産ビジネスを営む現地企業社長は次のように話す。

「高島屋が清算を発表したのと同時に、台湾人から上海高島屋百貨有限公司を買い取れないか、と相談が舞い込んだ。日本人は、マークス&スペンサーやForever21などのテナント撤退をみて、上海市場が落ちていると不安ばかり募らせるが、中華圏の資本を持つビジネスパーソンは違う。チャンスとみるや、即行動に移す。WeChat上の情報交換コミュニティは、すごいやり取りになっている」

解散・清算の理由は、「家主との間で家賃減額交渉を進めてまいりましたが交渉が不成立となった」(高島屋)ことが契機となったというが、これについて、前述の現地企業社長は「テナントとの折衝が不調で、裁判沙汰になっているという話も聞こえてくる」と指摘。上海高島屋の迷走はしばらく続きそうだ。

© 国際商業出版株式会社