29歳の若手テレビマンが初めて生み出したのは、一流の“たった一つの質問”を追究する番組!? 佐藤智洋チーフディレクターが明かす「究極の一問」制作秘話

29歳の若手テレビマンが初めて生み出したのは、一流の“たった一つの質問”を追究する番組!? 佐藤智洋チーフディレクターが明かす「究極の一問」制作秘話

6月29日放送の「“あの人”が知りたい超質問バラエティ 究極の一問」(MBS/TBS)。同番組では、「ロングバケーション」(フジテレビ系)、「ビューティフルライフ」(TBS系)、連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK)など数々の人気ドラマの脚本家・北川悦吏子さん、青山学院大学を箱根駅伝4連覇に導いた名将・原晋監督、モデル・滝沢カレンさん、天ぷら職人・近藤文夫さんらが、どうしても聞きたい“たった一つの質問”を発表。その“究極の一問”を通して、彼らの人間性やその答えの先に潜む知られざる舞台裏を掘り下げていく、1時間のバラエティーです。MCは若林正恭さんと福原遥さんが務め、スタジオゲストには原晋さん、MEGUMIさん、吉村崇さんが登場。

ここでは、番組の総合演出を務める佐藤智洋さんにお話を伺い、制作秘話や番組に込めた思い、さらにテレビ業界で働くやりがいなどをお聞きしました。

■才能やセンスがないタイプの人間でも、下積みを一生懸命頑張るという道がある

──佐藤さんがテレビ局で働こうと思ったきっかけを教えてください。

「ありきたりなんですけど、純粋にテレビが大好きだったからです。バラエティー番組、特に『めちゃ×2イケてるっ!』(フジテレビ系)が大好きで。好きなことを仕事にできたら幸せだろうなって、その思いだけで就職活動をしたら、運良く毎日放送に入ることができました」

──毎日放送入社後は、どのような仕事に携わってきたのでしょうか。

「大阪で『ちちんぷいぷい』『ごぶごぶ』『痛快!明石家電視台』でADとディレクターを経験し、入社4年目に東京に異動になって『林先生の初耳学』のチーフADを2年、今は『教えてもらう前と後』でディレクターをさせていただいています。他の人よりも下積みの期間が長かったんですけど、AD時代に学ばせていただいたことが今生きてきているなと実感しています」

──番組の制作の裏側や収録の現場を取材させていただく機会も多いのですが、どの番組もADさんの業務は多岐にわたっていて、とにかく忙しそうという印象があります。

「正直、大変なことは多かったです……。でも、特に自分のように才能やセンスがないタイプの人間は、ADなど下積みを必死に頑張って活路を見出すというのは一つの戦い方なのではないかなというのが持論です。AD時代は、運良く、実績あるディレクターの方々と お仕事させていただく機会に恵まれました。膨大な雑務をこなす一方、VTRの編集やロケの撮り方、打ち合わせの進め方やネタの発想、効率的なリサーチ法など、優秀な先輩方のさまざまなノウハウを勉強させていただきました。たくさん怒られましたが、今の自分の基礎は、そうした諸先輩方としっかりお仕事をさせていただく中で育まれたと思っています。そしてチーフADとして、さまざまな立場の人とどううまく仕事を進めるか、周りの人にどう信頼してもらえるか、下についてくれる若いADさんをどう引っ張るか、そして膨大な仕事量をどうこなすか、常に考えてきました。実は、今回の『~究極の一問』は、構成作家さんも制作会社さんも初めてお仕事させていただく方々ばかりなんです。自分が大好きなテレビ番組のエンドロールを見て、『一緒にやりたい!』と思った方に会いに行って、『一緒に仕事してください』ってお願いして、そこから企画書を作って…。どのような人なのかまったく分からず会いに行ったので、ある意味、賭けだったんですけど、運が良く、皆さんとてもすてきな方々でした」

■未熟で不器用な思いかもしれないけれど、まだ“見たことないもの”を見てみたい

──今回初めて“総合演出”という立場で手掛けられた「“あの人”が知りたい超質問バラエティ 究極の一問」という番組について伺いたいのですが、どのような思いから企画が実現したのでしょうか。

「まだまだ20代のペーペーなので、とても生意気に聞こえてしまうと思うのですが、これだけテレビやネットがある中、“見たことないもの”や”聞いたことないもの”、いわゆる初出しの情報を番組で提示することは本当に難しいなと常日頃思っています。そのもどかしさや歯がゆさが、今回の企画の原動力でした。一流の人の頭の中をのぞき見したら、何か新しい世界が広がっているのではないかと。“まだ見たことない”を”見てみたい”という、なんか新入社員が言いそうな、未熟で不器用な思いかもしれませんが、そこを、直球で攻めたい、突き詰めたいと思いました」

──番組は、北川さん、原監督、滝沢さんといった方々が絞り出した“究極の一問”を回答者にぶつけながら、質問者の人間性や知られざる舞台裏を掘り下げる形式で進行していきます。先日収録を終えられましたが、手応えはありますか?

「北川さんも、原監督も、滝沢さんも、企画書の段階ではまったく想定していない結果になりました。もちろん事前にすごくリサーチして、いろんな想定をして打ち合わせに臨んだんですけど、打ち合わせに行って初めて知ることばかりだったんです。”究極の一問”はその人の頭の中にしかないし、目に見えない。打ち合わせをしながらその一流の人の頭の中をのぞき見している感覚は、とてもワクワクしました。何かを極めた人って、私みたいな凡人には思いつかないようなことを考えているんだなと、改めて確信しましたし、そこをお伝えできればと思って頑張りました」

──番組を作る上でこだわった部分はどのようなところでしょうか。

「ご出演いただく方がその一問を“本当に知りたいかどうか”、その熱を大切にしました。北川さんの究極の一問は死生観に関するものだったのですが、正直バラエティー番組で扱うテーマとしてはとても難しいなと思いました。これまで、見たこともありませんでしたし…。ただ、北川さんが本当に知りたいというその思いをお聞きし、その難しいテーマに答えを導けるかどうかよりも、北川さんにとって大切な一問と誠実に向き合いたいと思いました。これもまた生意気になっちゃうんですけど、テレビは人の心を動かすものであってほしいと思っています。それが笑いでも感動でも涙でも驚きでも、人の記憶に残る、心に刺さるものを作りたいという思いがあります。もちろん自己満足は良くないんですけど、そういう思いを形にしたい一心ですし、そういうテレビマンを目指したいなと思っています」

──今回この番組を作る上で、最も苦戦したのはどのようなことですか?

「全てに苦戦しまくりました(汗)。もちろん、いちディレクターとして、取材相手の過去の雑誌や本を何十年分読んで、とにかく調べて…。いわゆるVTRを作る準備ももちろん大変だったんですけど、一番感じたのは、1時間の番組を作ることがどれだけ難しいかということです。曲がりなりにも、今回初めて総合演出という立場をさせていただいて、出演者ゲストのブッキングから、番組のタイトル、ネタ、VTRの編集方針、ロゴからセットのデザインまで…あらゆることを“決める”のが自分。その全ての責任を負うのも自分。『これでいきましょう!』って言うのは簡単なんですけど、これで大丈夫かな、という不安はずっと残っていて。責任を負うことの怖さを学べました。何度も夜中に目覚める日々が続きました。ただ、それは同時に最高のやりがいでもありました。そして、さまざまな重圧を背負いながら、日々、演出を手掛けられている先輩方へのリスペクトの気持ちが強まりました。私もそこを目指して、これからも頑張っていきたいです」

──現在29歳ということで、年齢的にも若い中、総合演出という立場で引っ張っていかなければいけないという難しさもあったのでしょうか。

「スタッフの皆さんは、こんな若造の僕を、とても温かい目で助けてくださいました。今の自分には実績はないですし、引っ張っていくスキルもないので、とにかく思いを伝え続けて、“自分が一番汗をかく”という姿勢は大切にしなきゃと思っていました。人に力を借りないと僕一人では何もできないので。『自分が、一番頑張るので、助けてください』という思いで、とにかく動いて。動いて、動きまくりました」

■改めて…テレビはプロフェッショナルの本気が集まる場所

──今の仕事の、一番のやりがいはどのようなところですか?

「周りのベテランのディレクターの人たちに『この若造、なんか面白いことやってくるな!』って思ってもらいたいとは、ずっと思っていて。よく怒られるんですけど、たまに笑って褒めてもらえることもあって、そんな時、この仕事をできる幸せを感じます。あとは過酷な状況になった時、みんなで諦めずに力を合わせて乗り越える、テレビ現場ならではのチームワークが好きです」

──ディレクターと、今回の「~究極の一問」のような演出という立場では、また違った楽しさがあったのでしょうか。

「そうですね、ディレクター、作家、プロデューサー、ADさん、カメラマン、編集マン、音声…。いろんなプロフェッショナルが集まって、僕一人では決してたどり着けない場所まで、たどり着かせてくれる。当たり前のことかもしれませんが、その当たり前が自分にとって、これほど尊いものなのだと実感しました。番組に直接関わっていない先輩まで、演出の相談に乗ってくださったりと、本当に助けてもらいました。そして、収録終わった後、あるタレントさんが『めちゃくちゃ面白かったよ』と言ってくださった時は、うれしくて涙が出そうになりました」

──最後に、佐藤さんが知りたい“究極の一問”を挙げるなら、誰に何を聞きたいですか?

「えーーーっ!? なんだろうな…。いやいやいや………。これ、大変ですね(笑)。(5分ほどいろいろと考えて)テレビの神様に『この番組の第2弾できますか?』って聞きたいです! 神様! どうかお願いします!!」

6月26日発売の「週刊TVガイド」7/5号(P64)では、「~究極の一問」の特集記事を掲載中! 収録直後に伺ったMCの若林さん、福原さんの収録の感想も。

【プロフィール】


佐藤智洋(さとう ともひろ)
2012年、毎日放送入社。これまで「ちちんぷいぷい」「ごぶごぶ」「痛快!明石家電視台」「林先生の初耳学」を担当し、現在は「教えてもらう前と後」のディレクターを務めている。6月29日放送の「“あの人”が知りたい超質問バラエティ 究極の一問」において、初めて総合演出を担当。

【番組情報】


「“あの人”が知りたい超質問バラエティ 究極の一問」
TBS系
6月29日 午後4:00~4:54

© 株式会社東京ニュース通信社