金正恩氏「最愛の妹」から消えぬ「身辺に異変」の兆候

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韓国情報機関・国家情報院は25日、国会情報委員長を務める野党・正しい未来党の李恵薫(イ・ヘフン)議員に対して行った業務報告で、北朝鮮の金正恩党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の地位について「指導者クラスに格上げされたようだ」との分析を明らかにした。

先週、中国の習近平国家主席が訪朝した際の写真に表れた金与正氏の位置づけから、崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長や李洙ヨン(リ・スヨン)党副委員長と同等のランクにいるように見えるという。

一時は「ハノイでの米朝首脳会談決裂を巡り問責され、謹慎させられている」との説まで出ていた金与正氏だが、今度は一転して「昇進説」が浮上してきたわけだ。金王朝「白頭の血統」の一員であり、金正恩氏の最側近として重要な役割を担ってきただけに、彼女が北朝鮮の最高幹部となること自体は、不思議なことではない。

だが、このタイミングでのこの分析を、額面どおりに受け止められるかと言ったら、話は別だ。ハノイでの首脳会談の決裂後、金与正氏が本当に謹慎させられていたかどうかは別としても、彼女を巡り不穏なものを感じさせる要素は実際にあった。

また、「身辺の異変」を感じさせる要素はほかにもある。朝鮮中央通信は21日、金正恩氏と習近平氏が党政治局メンバー32人とともに党本部庁舎で撮った団体写真を公開したが、その中に金与正氏の姿はなかった。彼女は政治局候補委員であるにもかかわらずだ。これと同様に、金与正氏は4月に公開された党政治局メンバーの団体写真にも写っておらず、党内での地位の変動が気になる。

金与正氏は、政治行事の儀典担当として金正恩氏の動線管理を担いながら、兄の側近としての地位を固めたと見られている。

さらには実の妹として、金正恩氏に対して遠慮なくものを言うことのできるポジションが、彼女の政治的な地位を高めたように見える。一時、パーティー狂いの噂のあった金正恩氏に対し、金与正氏は「飲酒はほどほどに」とたしなめたとも伝えられる。

些細なことで部下を処刑してきた金正恩氏に対し、そんなことを言える側近は多くはあるまい。

だが、やはりハノイでの首脳会談の失敗を機に、彼女のキャリアには何らかの変化が起きたように見える。党宣伝扇動部第1副部長の肩書を持つ彼女が順当に出世するとするなら、まず政治局候補委員から政治局委員に昇進し、部内で思想・宣伝分野での役割を拡大しつつ、党中央委員会への部長に就任するコースが見えていた。

部長になるまでにはさすがに時間がかかるだろうが、いずれは金正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏がそうであったと伝えられるように、北朝鮮で最強の官僚ポストである党組織指導部長に上り詰める可能性もゼロではない。

ただ、党政治局メンバーの団体写真から2回続けて外れた例などを見る限り、彼女がそのような「出世の王道」を進んでいるようには見えない。金正恩氏はもしかしたら、金与正氏をいったん政治権力の外に置いて「白頭の血統」としての象徴的な役割に限定し、彼女のキャリアの仕切り直しを試みているのかもしれない。