大学の必修授業でオンライン英会話!? 「外国人と1対1で英語で話す」体験から得られるものとは

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英語教育の効果的な手法として注目を集める「オンライン英会話」。英語を学ぶ社会人などにはかなり浸透しつつあるものの、学校教育の現場においては、未だ導入も活用もできていないところが少なくない。そうした中で東洋英和女学院大学ではいち早く2016年の試験導入、2017年の実証実験に取り組み、いよいよ2019年度からは国際社会学部全体にオンライン英会話授業を本格導入することになった。はたして学生の反応はどうか、どのような効果が得られたのか。5月に行われたオンライン英会話授業の様子をレポートする。

国際コミュニケーション学科の65名が必修講義として受講

オンライン英会話授業の取材に伺ったのは、5月にしては珍しい大雨の日。しかし、必修講義となっていることもあり、時間前にはほぼ全員が着席して時間どおりに授業が開始された。授業に出席したのは国際コミュニケーション学科に在籍の65名。最新の専用教室の工事が間に合わず、しばらくは通常の教室にパソコンを並べた形での授業になるという。

授業を運営するのは、オンライン英会話の導入を牽引してきた竹下裕子教授。まずはウォーミングアップとして、2人1組となって「今日の天気」について30秒ずつ英語で話すことから始まった。

国際コミュニケーション学を専攻する学生たちだけあって、ほとんど全員がスムーズにペアを作り、会話をスタートさせたが、なかなか口が動かない学生や雑談が終わらず集中できない学生もちらほら見受けられた。しかし、ペアで絵を見ながら状況を1分間相手に説明したり、3枚の絵から想像した物語を話したりするうちに会話に熱中し、徐々に声が大きくなっていく。気のおけないクラスメイト同士ということもあって、言いよどんだり間違えたりしながらも、時折笑顔が出てリラックスしていることが伺える。

「絵を見ながら物語を作り、2分間英語を使って説明するというスキルは、英語検定でいえば2級に相当します。ウォーミングアップ1分間ではありますが、ほぼすべての学生がクリアできているように思います。受験を経て高校卒業レベルの英語力は保てていることが望ましいですね。今回は行っていませんが、ウォーミングアップ時の会話を音声で録音し、スキルチェックに活用することも行っています」(竹下教授)

ここまで授業がスタートして10分ほど。ウォーミングアップのかいあって、ようやく学生たちの口が英語に慣れてきたようだ。そして、いよいよ外国人講師とオンラインでつながり、1対1のレッスンを受ける時間となる。

一人ひとり異なるカリキュラムを自律的に学習

レッスンの時間が来ると竹下教授の指示を待つまでもなく、学生たちはそれぞれシステムを立ち上げ、ヘッドセットを装着し、オンライン英会話をスタートさせた。始まってすぐに一気に賑やかになり、それぞれが画面にいる外国人講師との会話に集中し始めた。

教室は声でいっぱいになったが、ヘッドセットのおかげもあって、講師との会話に支障はないようだ。にこやかに会話している学生もいるが、多くは講師の説明を聞き逃さないよう真剣そのもの。扱うテキストや内容は同じものだが、進捗は学生によって異なり、どんどん進む学生もいれば、後戻りして復習する学生もいる。

「一人ひとりのスキルに合わせたアダプティブラーニングとしており、それぞれの学生の進捗情報はデータベース上に共有されています。なので、毎回講師は変わりますが、それぞれの学生の進捗を把握した上でレッスンが行われています。基本的に講師にはカリキュラムに集中してもらい、雑談はしないようにしているのですが、中にはリラックスさせるためにちょっとした話題をはさんでくれる講師もいるようです。そこまで含めて学生の様子やレベルに合わせてくれ、厳しくも丁寧で、さすがに英語を教えるエキスパート資格をもった方々だなと感じます」(竹下教授)

オンライン英会話の提供事業者は、フィリピンのセブ島に英会話学校をもつQQ English。竹下教授がありとあらゆるオンライン英会話サービスを実際にチェックして選定したという。決め手となったのは、講師の教授スキルと接遇のレベルの高さ、そしてネットワークインフラの品質だ。

「オンライン英会話の中には、主婦や学生がアルバイト感覚でやっていたり、女性がセクシーな服装でやっていたりするものもあります。そこでサービス選定にあたっては、講師がしっかりと外国人に英語を教える技能を修得していること、制服を身に着け、プロフェッショナルとしての気概をもって取り組んでいることを重視しました。また約70人が同時アクセスするので、ネットワークインフラがしっかり整っていることも必須でした。QQ Englishの場合、環境の整った校舎があり、そこに講師が出勤する形なので、その点においても安心感がありました」(竹下教授)

それでも時々は、画面がフリーズしたり、音声が聞こえなくなったりすることもある。そんなときに備えて、システムを導入した内田洋行からスタッフが1名派遣されており、トラブル対応を行っている。今回も2~3回ほどトラブルがあったがリフレッシュボタンを押せば解決する軽微なものだった。システムが安定してきたら、今後は講師だけで十分対応できるようになることが望まれる。

「普通の教室ということもあってか、あるいは学生が1年生で大学のシステムに慣れていないこともあって、特に最初の頃はログインのトラブルも多く、ICTサポートの担当者がいてくださったことで本当に助かりました。専用の教室は2020年春に着工の予定となっていますが、環境的にも安定することを期待しています。さらに完成したら私の方でもリアルタイムですべての学生の進捗管理ができるようになるので、レッスン直後のアドバイスや宿題など細やかな対応ができるようになると思います」(竹下教授)

一番の成果は「自信や未来への展望がもてたこと」

オンライン英会話の前半部は25分で5分間の休憩をはさみ、後半部25分がスタートする。前半と後半で講師が変わるが、学生たちの緊張感は途切ない。口が慣れてきたこともあってか、前半よりもさらに音量が増し、教室は学生たちの声で割れんばかりとなった。

「毎回先生が変わるということは、毎回新しい出会いがあり、初対面の人と話すトレーニングにもなります。学生たちにとって重要なのは、実践的な英会話力が身につくこと。単に英会話のスキルを上げることではなく、人によって異なる英語を聞き、さまざまな人とコミュニケーションをとることです。しかし、日本ではなかなかその環境をつくり出すことが難しいですよね。その意味で、外国人講師と1対1の、逃げ場がない状態で話を続けることは、かなりいい経験になっていると思います」(竹下教授)

25分×2回の濃厚な英会話体験を得た後は画面上で授業の手応えや自分の実感値を項目ごとに入力していく。そうした振り返りを行い、自らの進捗状況を把握することが授業へのモチベーションにもつながっているという。入力を終え、少々ぐったり気味(?)の学生に授業の感想を聞いてみた。

「年度始めから数えて6回目の授業になりますが、一番成長を感じるのは、度胸というか自信というか、『私でも全く知らない外国人と話せるんだ』といった実感です。英会話のスキルについては、特に聴くことについて慣れてきたように感じます」

「毎回違う先生だと聞いて、最初はすごく緊張したのですが、どの先生もやさしく楽しく授業を進めてくれるので、今ではどんな先生に会えるのか、楽しみになってきました」

「会話のレベルの目標が100だとしたら、春には10だったのが40になった感じ。じわじわ話せるようになったというより、急に口がなめらかになる瞬間がありました」

「書くことや読むことは受験勉強でけっこうできるようになったつもりですが、英会話には苦手意識をもっていました。でも、実際にやってみると受験勉強でやったことが生きる感じ。もっと“普通に”会話ができるレベルまでいきたいです」

「英語が好きでこの授業も毎回楽しみにしています。将来は航空業界や旅行業界などで、英語を使った仕事につきたいです。留学もしたいので、その準備のためにもオンライン英会話で会話に慣れていきたいと思っています」

この他、どの学生に聞いても口々に「楽しい」「英会話が好きになった」「集中できる」と好評価のコメントが多く得られ、一つとして否定的な感想が出なかった。しかし、今回受講した学生は、国際コミュニケーション学科ということで外国人とコミュニケーションをとることに最初から積極的であり、高評価になるのも当然といえるだろう。他の学部・学科の学生にはどのように受け取られるのだろうか。竹下教授は「英会話学習についてモチベートして(やる気を持たせて)おくことが必要」と語る。

「実は、他の学科でもオンライン英会話の授業を行っているのですが、『英語など話せなくてもいい』『こういう授業は自分には意味がない』と語る学生もいました。そこで学部学科によっては、いきなりオンライン英会話を体験させるのではなく、『何のためにやるのか』『どんな価値があるのか』などを考える機会を設けることが必要かもしれません」

グローバル化が加速する中で、今後の日本人にとって英会話は必要不可欠なスキルとなっていくことは明らかだ。そこでオンライン英会話授業を他の学部学科へと展開するにあたっては、「英語の必要性と可能性」を理解してもらうことが必要になるという。さらにはオンライン英会話の授業を運営できる指導者の育成も重要な課題だ。

「未だオンライン英会話は『教員の手抜き』と考えられがちです。しかし、外国人と会話できる機会を創出し、そこに適切な示唆やアドバイスを行うことこそがこれからの教員の重要な役割になってきます。新しい学び方につき、私自身もどうしたら効果が上がるのかを試行錯誤していますが、組織や業界を越えてそうしたナレッジ交換ができると嬉しいですね」(竹下教授)

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