[Report Now!] FPV&プログラミング対戦で楽しみながら学ぶ!DJI RoboMaster S1新製品発表会

教育用途での注力が伺える「DJI RoboMaster S1」新製品発表会

「知力で、打ち勝て。」のキャッチコピーのもと発売された教育用ロボットDJI RoboMaster S1。6月26日、都内にて新製品発表会が開催されましたのでさっそくレポートしたいと思います。

今回の発表会場はなんと武蔵野大学附属千代田高等学院(東京都千代田区)。会場選定からS1の教育用途でのチカラの入れようがわかります。実際に発表会のゲストプレゼンテーションは教育色の強いとても興味深いものでした。

楽しみながら学ぶしかけが詰まったS1のメカニズム

発表会会場はほぼ満員に。注目度の高さがうかがえる

プレゼンテーションはDJI JAPANの皆川正昭プロダクトマーケティングマネージャー

若手エンジニアの育成を目的としたDJI主催のロボットコンテスト「RoboMaster」から生まれたRoboMaster S1には、楽しみながら学ぶ仕掛けがたくさん詰まっています。

まずおもしろいのはスタートが組み立てから…というところです。プログラムできる46の構成部品を組み立てながらロボティクスの仕組み(ハードウェア)を学びます。

機体は砲台(ブラスター)とFPVカメラを備えた2軸メカニカルジンバルが精密かつ広範囲(540°×65°)に動いて広い視野を提供し、12個のローラーが付いた特徴的なタイヤ「メカナムホイール」により全方位に移動することができます。

FPVカメラを装備してモニタリングしながらの操縦・プログラム検証が可能

ブラスターの内部構造。カートリッジ交換ですばやくゲル弾を充填できる

ジンバルに装備された砲台はもちろん飾りではなく、赤外線ビームとゲル弾を実際に発射することができます。機体ボディには6つのインテリジェント検知アーマーが装備されており、赤外線ビームやゲル弾の被弾を検知して画面上にダメージをHP(ヒットポイント)として表示するというビデオゲームの世界がリアル世界に降りてきたようです。

ゲル弾は水でふやけさせるタイプ。通常時は非常に小さい

ゲル弾は最大10発/秒で発射可能!

機体の操縦はアナログ的に手動で操縦することもできますが、やはりチャレンジしたいのはプログラミング。わかりやすいブロックのビジュアルでプログラムを組める「Scratch 3.0」とAI分野ではおなじみの「Python」に対応。幅広いプログラミングニーズに対応しています。

さらにAI技術搭載で「ライン認識」「ビジョンマーカー認識」「人認識」「拍手認識」「ジェスチャー認識」「S1ロボット認識」などの認識機能が備わっています。プログラム次第で自分以外のS1を認識したり、人を追尾したり、ジェスチャーでコントロールすることなども可能です。

つまり、これらの機能を活用すると、FPVで多数対多数で対戦しながら、オリジナルの必殺技をプログラムして発動させる…という夢のようなゲームを展開できるということです。このようなワクワクする環境ならば、自然なカタチでプログラムを学ぶことができるはず。

操縦だけでも楽しい!無限の可能性を秘めるS1の魅力

発表会では、S1を使った対戦ゲーム体験も用意されていました。ゲームは2種類、ひとつは数字のビジョンマーカーを順番に読むスピードレース、もうひとつは赤外線ビームのブラスターを使ったポイント制対戦ゲームです。操縦はタブレットを使って行いました。イメージとしては、Telloのようなバーチャルスティックで左側は水平縦横、右側はブラスターの上下とラダー操作となります。

バーチャルスティックでFPV操縦!ラダーはちょっとコツが必要

スピードレースはFPVと目視を使いながら大興奮でした!エルロン動作のような横スライドも活用し、ライバルに衝突しながらのレース。1~4までのビジョンマーカーを順番に読み込む…という単純なレースでしたが、それでも十分に楽しめました。

「1」~「4」まである数字のマーカーに向けていっせいにスタート!

2戦目はブラスターを使った対戦。ブラスターを打ちすぎるとオーバーヒートで一定時間攻撃できなくなります。また、一定数のダメージを受けると「撃破されました」となり、ビジョンマーカーの「♡」を読み込むことで復活となります。

何度も復活を試みながらライバルを撃ちまくりました。なれてくると、障害物を盾にライバルの攻撃を避けながら攻撃することができるようになり、結果6人中2位をGet!これはハマります。

正面のライバルを狙い撃ち!画面下部には自分のHPも表示され残り100しかない…

HPがゼロになると一定時間動けなくなるが「♡」のビジョンマーカーを読み込むことで復活できる

今回はプログラムを組み合わせることはできませんでしたが、ビデオゲームのような対戦をリアルにできる楽しさと、もしこれにプログラミングによるオリジナル必殺技を組み合わせることができると考えると楽しくてしかたありません。

夢の自動運転も可能にするRoboMaster S1

S1はレースや対戦を楽しむことができる最先端の地上走行ロボットですが、最大の特徴はロボット工学技術を学べるように設計された「プログラミング教育用ロボット」だということです。説明会では、体験会での娯楽性に加えて、楽しみながら学べる教材としての可能性を示す実践事例が紹介されました。

株式会社COMPASS未来教育部部長の木川俊哉氏

ゲストスピーカーとして登壇したのは、株式会社COMPASS未来教育部部長の木川俊哉氏です。株式会社COMPASSでは、人工知能型教材開発や学習塾Qubenaアカデミーの運営とともにテクノロジーを活用したワークショップを学校や教育事業者対象に行っていて、今夏にもDJIと協力し「RoboMaster S1」に対応したプログラミング教育カリキュラムの提供を開始します。

S1ワークショップの概要

説明会ではこれに先駆け、6月16日にQubenaアカデミーの中高生4名を対象に行われたS1で「自動運転システム」を作るワークショップのカリキュラム内容が紹介されました。

ワークショップは、まず「自動車とはどういうものなのか」から始まり、自動車と切っても切れない関係にある交通事故について考えます。実社会の問題解決手段の1つとして自動運転を深掘りし、ワークショップの目的をはっきりとさせた上で実践に取り組みました。

自動運転のミッションは4つです。ライントレース、信号検知、車体検知、自動追従のプログラム作成にチャレンジし、段階的に達成していくことで夢の自動運転を目指します。

1つ目のライントレースは、楕円に描かれたラインの上をラインに沿って回るというミッションです。初心者でも動画を見ながらプログラムが組めるように工夫されています。ただ動画を真似るだけではありません。S1ではPID制御という制御方法が採用されています。

PID制御の基礎的な知識を学びながら、変数をどう入れるかで挙動が変わるプログラムを体験し、動きがスムーズになるよう最適解を見つけていきます。難しい反面、面白さを体感できるミッションです。

信号に見立てたマーカー

2つ目の信号検知では、決められたマークを信号に見立て、ライントレースのコマンドに追加していく形でプログラムを組んでいきます。単に停止させるだけでなく、制動距離があるのでS1を止めるタイミングをみる必要があります。

3つ目の車体検知と4つ目の自動追従からは動画がなくなるので、ヒントをもとに作っていきます。対象に合わせて自動ブレーキを発動させたり、追いかけたりする高い難易度の課題でも生徒たちの飲み込みは早く、トライ&エラーを繰り返して協力しながら取り組む様子が動画で紹介されました。

2人1組になりトライ&エラーを繰り返してプログラミングを学ぶ

「↑」は青信号、「■」は赤信号を見立てたビジョンマーカーとなっている

最後のまとめでは、学んだことが実際にどう役立てられているのかを振り返り、そのほかの自動運転技術を紹介して次の学びへ繋げました。

生徒の感想では、「試行錯誤してやっとできたときの達成感」や「自動追従できた」ことなどが面白く、どんなことがやってみたいかという質問には、「横とか縦に移動できるのでそれを使ったゲーム」「人を追従できるから荷物を運ぶこともできそう」と言ったアイデアが生まれていました。

木川氏は、S1を活用する良さについて「生徒たちの反応が抜群に良い」「プログラミングのUI/UXが優れている」「本格的なロボティクスが学べる」の3点を挙げ、一歩踏み込んだ、ロボティクスの扉を開けた教材だとその魅力を語りました。

高校教育でS1を使ってできること

ラムジー・ラムジー先生

学校教育現場からは、武蔵野大学付属千代田高等学院、数学(1B)・情報担当教諭のラムジー・ラムジー先生が登壇し、高校教育でのS1を使った事例を紹介しました。イギリスでもプログラミング教育を教えていたというラムジー先生は、日本にはプログラミング教育の壁とそれに加えて英語の壁があると言います。

S1を使った感想として、まず生徒からはロボットが「可愛い!」という声が上がり、生徒の反応として「ロボットは楽しい!」というロボットに対する興味が向上したことを第一に語っていました。また、ロボットで学べることの例として「情報科学」で教えなければならないカリキュラムであるインプット・アウトプットデバイスの概念や論理的に問題を解決すること、AIの理解がしやすい点などを挙げていました。

「プログラミング」については、S1が特にPythonが使える点が良いとして、条件、変数、アルゴリズムなどを教えることができるとその重要性を語りました。また、今後はロボット同士の対戦、レーシングの最適化、脱出ゲームを作ることなど、Scratchで基本を学びPythonを使って取り組んでいきたいとプログラミングの未来を語りました。

最先端技術がもたらす楽しさと可能性

6月12日に発売されたRoboMaster S1。価格は税込64,800円です。興味がある方は6月28日の「ベースキャンプ・フェスタ」でもS1を体験することができます。

説明会では、S1はラジコンやロボットとして楽しめる娯楽性に加え、初心者から上級者まで楽しめる本格的なロボット工学教材でもあるという印象を受けました。ロボット大会RoboMasterの日本版にあたる大会も今後予定されているそうです。

次回は、実際に使ってみた感想を詳しくレビューで紹介していきたいと思います!

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