大阪商工会議所、MaaS社会実装推進フォーラムを開催

大阪商工会議所は6月24日、MaaS社会実装推進フォーラムを同所で開催。フォーラムにはMaaSに関心を寄せる関西の企業や自治体、102団体が参加した。

このフォーラムは企業規模の垣根を越えたオープンデータ連携や、2025年に大阪で開催される万博へ向けたスムーズな地域内移動としてのMaaS構築が狙い。最新の情報提供や事業提案、交流会のほか、ワーキンググループを設置して具体的な実装についても進めていく。アドバイザーには株式会社日本総合研究所の井上岳一シニアマネジャー、株式会社シグマクシスの松岡竜大常務執行役員、弊社代表取締役の井上佳三が就任。オブザーバーは近畿経済産業局、近畿運輸局、大阪府、大阪市、2025年日本国際博覧会協会が務める。

基調講演を行ったデンソーの中川真也技術企画部MaaS戦略室担当部長は、MaaSの先駆者であり、交通革命を進めてきたフィンランドのWhimについて「インバウンド、企業の福利厚生プログラム、賃貸住宅との連携を始めている」と述べ、今後の展開について説明した。

インバウンドについては、テンセントのWeChatと連携し、「WeChat x MyHelsinkiミニプログラム」として、観光案内、チケット予約、決済などが可能となる旅行体験をオールインワンで提供している。「中国からの旅行者は既存のWeChatアプリを使って、ヘルシンキの交通サービスが使える」(中川氏)。

不動産については、賃貸住宅サービスのSATOと協働で、モビリティと賃貸のサービスをパッケージ化し、「モビリティのアクセスと不動産価値の関連性を確認する」実証実験が開始されている。今後、Whimは、「ユーザーが本当に必要としているサービスを提供するため、交通事業者とのオープンエコシステムを築き、全世界で携帯電話が使えるようになったように、交通サービスについても同様の世界観を実現する」という。2017年にはベルギーのアントワープで、2018年にはイギリスのバーミンガムでWhimアプリのサービスが開始されており、今後は都市との共同ブランディングが進むと説明した。

中川氏はラストワンマイルを担う新モビリティとして注目されるマイクロモビリティについても言及。注目を集める電動スクーターは「歩行を置き換えるもの」とし、デンソーが5月に出資を発表したボンド・モビリティ(Bond Mobility Inc.)のEバイクについては、「時速45kmでの走行も可能で、都市交通の置き換えに必要となる5~8kmの移動ができる」とし、車や公共交通からのモーダルシフトも可能だと話した。

左から、デンソーの中川真也氏、大阪府・大阪市 副首都推進局の松井芳和氏、弊社代表の井上佳三、株式会社ADKマーケティングソリューションズの大山晋氏

大阪府・大阪市 副首都推進局の松井芳和担当部長は、大阪スマートシティ戦略会議のスケジュールについて説明。専属組織を持たない大阪府庁においても、7月には新組織を立ち上げ、今秋には中間取りまとめ、3月には報告書の取りまとめを行う。大学や企業と連携を行いながら、①住民サービスの向上、②大阪万博に向けたスマートシティ戦略などの都市戦略ビジョンの2本柱でスマートシティについての検討を進めていく。

弊社代表の井上佳三はMaaSにおけるデータ共通基盤について、ルート検索などの情報の統合(レベル1)や決済(レベル2)については協調領域であると前置きし、MaaSのサービス開発においては、「交通事業者が持つデータ(顧客データなど)は、自社で持つべきか、プラットフォーマーが持つべきかの線引きが難しい」とし、概念実証をしながら、開発領域に応じて「データの保持、切り分け」を意識することが必要だと述べた。

株式会社ADKマーケティングソリューションズの大山晋氏は、中国人観光客のプロモーションは事前決定がトレンドで、「訪日前にSNSのプロモーションに投入したコストが集客に反映しており、日本に来る前に、購入する商品や店舗が決定している」と話した。また、位置情報や購買データなどの行動データをQRコード決済業者が握っているとし、「MaaS事業者にもデータが必要。マーケティングデータをみなさんと共有できるような枠組みをつくりたい」と、観光プラットフォーム構築について提案した。

最後に、「企業を超えた取り組みの意味」「ビジネスモデル、儲け方」と題してパネルディスカッションが行われた。

パネルディスカッションの様子

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