長年見破れなかった「粉飾」の発覚が急増、40年前から粉飾も

 ここにきて粉飾決算の発覚が相次いでいる。なかには40年も前からの粉飾を明らかにする企業も出てきた。金融機関も見破れなかった粉飾の発覚が増えた背景に何があるのか。東京商工リサーチ情報部が取材した。

重ねに重ねた粉飾 実態と乖離した決算書

 5月29日、カジュアルウェアブランドの「J.FERRY」を展開する(株)リファクトリィ(TSR企業コード:293087890)が、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
 店舗展開で膨らんだ借入金を糊塗するため、10年前から粉飾決算に手を染めていた。粉飾は一度手を染めると、よほどの奇跡が起きない限り発覚する。2018年6月期の本来の純利益は7億4,160万円の赤字だったが、5,563万円の黒字に粉飾されていた。

取引銀行約20行、それぞれに決算書を作成

 5月14日、負債90億円を抱え東京地裁に民事再生法の適用を申請した手芸用品販売の(株)サンヒット(TSR企業コード:292785178)の粉飾期間はさらに長い15年だった。
 取引金融機関約20行のそれぞれに粉飾決算書を作成していた。手口は単純で、借入残高の操作が多かったようだ。これだけで約60億円の債務超過の企業を、約10億円の資産超過の優良企業に変貌させていた。発覚理由は、ある銀行用の決算書を、別の銀行に提出したため。15(年)×20(行)=300(通)。間違えても不思議でない。

名門企業が40年前からの粉飾を告白

 10年、15年の粉飾決算で驚くのは早い。6月に中堅のA社がバンクミーティングを開催した。そこで、衝撃的な事実が明かされた。
 粉飾決算の告白、借入元本の返済猶予と資金支援の要請はある意味、ワンパターンだ。だが、粉飾決算の期間が40年以上と聞かされ、参加者は呆気にとられたという。当初の担当者はとっくに定年退職し、金融機関も責任の所在に苦労するだろう。

粉飾を告白する書類

粉飾を告白する書類

「てるみくらぶ」の社長逮捕も背景

 バンクミーティングは、金融機関への支援要請だけが目的とは限らない。倒産したある企業の関係者は、「最初から無理とわかっていたが、粉飾決算の責任追及を避けるために開催した」と語る。これは8万人の旅行者を巻き込んだ(株)てるみくらぶ(TSR企業コード:296263001、2017年3月破産)が教訓になっている。てるみくらぶの山田千賀子社長(当時)は、粉飾決算で融資を受けて詐欺容疑などで逮捕され、懲役6年の実刑判決を受けた。このため事前に金融機関に粉飾を告白し、「支援なく倒産」とのアピールでもある。

 金融機関の融資審査は、財務分析中心から、企業の将来性を問う「事業性評価」にシフトしている。粉飾決算の発覚は、金融機関と企業が会話を重ねるようになり、見えなかったもの(粉飾)が浮き彫りになってきたことが大きい。そして、粉飾による逮捕を恐れ、事前に自ら公表するケースもあるようだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年6月28日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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