広島はなぜ交流戦で苦しんだか?  専門家が分析、あまりに大きかったキーマン2人の不調

広島・中崎翔太【写真:荒川祐史】

解説者の野口寿浩氏が指摘「投手陣と野手陣の状態が一緒のタイミングで…」

 セ・リーグ3連覇中の広島は今年も交流戦で苦しんだ。5カードで負け越し、5勝12敗1分。開幕直後の絶不調を脱し、リーグ首位で6月に入ったが、順位を1つ下げてペナントレース再開を迎えることになった。

 今季は連敗も多く、なかなか安定した戦いができていない広島。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団でプレーし、昨季までヤクルトのバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「今年は、投手陣と野手陣の状態が、一緒のタイミングで良くなって、一緒のタイミングで悪くなっている」と指摘。投打のキーマン2人の不調が痛いと見ている。一方で、交流戦明けにセ・リーグ球団相手に再び強さを見せる可能性も十分にあるという。

 野口氏はまず「開幕直後は野手陣も鈴木誠也しか打ってなかったし、投手陣も調子が上がってこなかった。そこで下位に沈みましたが、5月は投手陣が良くなってきて、それと同時に野手陣が打ち始めて一気に首位に立って、交流戦に入ったら、また両方が同時に状態が落ちてしまった」と、これまでの流れについて指摘。安定した戦いができていないのは、やはり抑えの中崎翔太投手、遊撃の田中広輔内野手の不調の影響が大きいと分析する。

「中崎の調子が悪いことと、あとは野手で言ったら田中の状態が上がってこない。2人ともチームのキープレーヤーです。その2人が、1人は2軍落ちして、1人は連続出場記録をストップさせるしかないくらいの成績になってしまっている。こうなると、やはり厳しいですね。丸が抜けて3番がいなくなっても、1、2番が通常の状態でいてくれれば、何とかなると思っていました。だけど、そのうちの1人が今年は全然ダメ。菊池はよく頑張ってますけどね。田中は1番を打って、ショートを守って、という選手ですから、彼の状態が悪いのは非常に大きいですよね。絶好調じゃなくても、彼が持っている普通の力が出てくれていれば、こんなことはなかったと思います。急上昇はあっても、急降下はないと思っていたのですが……」

 昨年まで不動の「1番・遊撃」を務めていた田中は打率.191の絶不調。下位打線に回り、ついにフルイニング出場、そして、連続試合出場もストップしてしまった。守備はセンターライン、打線では1、2、3番を担った「タナキクマル」は、丸佳浩外野手が巨人にFA移籍し、田中はレギュラー落ち。菊池涼介内野手は打率.279と奮闘しているものの、昨季と比較して「タナキクマル」から2人が欠けている状態ではやはり厳しい。

 中崎の状態も深刻だった。29試合に登板し、2勝3敗3ホールド8セーブ、防御率4.08という成績で2軍落ち。昨季までは、ピンチは背負っても、失点はしても、最終的にリードを守って試合を締めるという投球が多かったが、今年は踏ん張りきれずに同点、逆転とされることが多かった。

「中崎がしっかりしてくれれば、今抑えをやってるフランスアが1イニング前に戻る。一岡も1つ前に来て、レグナルトもいる。となれば、先発陣は楽になってきます。極端な話をいえば、5回までなんとかなれば、レグナルト、一岡、フランスア、中崎で終われる。去年はレグナルトはいませんでしたが、そういう強みがありました。阪神の『JFK』じゃないですけど、6回まで頑張れば、というところがあったので。中崎もランナーは出すけど、結局は抑えて帰ってくる、という形でセーブを挙げていました。なので、そういう状態に早く持っていきたいですよね」

「『リーグ戦が再開したらまた行くぞ』という形になるのならば…」

 今季は先発陣も苦しい。ただ、そこにも中崎の不調は響いていると野口氏は見ている。後ろが安定してくれば、先発投手にも余裕が生まれてくるというのだ。

「大瀬良一人で頑張ってますが、それにも限界があります。ジョンソンも今は投げてみないとわからない状態で、来日したばかりのような絶対的な安定感はありません。期待されていた若手も厳しい。九里はまだ何とか頑張っていますが、岡田は2軍落ちしてしまった。床田も前回登板は良かったですが、最近はあまり良くない。やっぱり中崎がいない分、シワ寄せが来てしまっている感じがします」

 もちろん、毎回、救援陣に頼るわけにはいかない。若手の奮起が求められることも確かだ。ただ、まずは6回まで投げれば白星はつかめる、という安心感があれば、精神的な余裕も出てきて、投球も変わってくる。それだけに、守護神の復活が待たれる。

 一方で、野口氏は「元々、カープは毎年交流戦はあまりうまくないというか、上手な戦い方をしないというのもあります」とも指摘。であれば、ペナントレース再開と共に息を吹き返す可能性もあるというのだ。

「去年は、交流戦が終わってじわじわ上げてきて最後は優勝、みたいな形でした。そう考えると、“悪夢の交流戦”が終わって『リーグ戦が再開したらまた行くぞ』という形になるのならばいいのかな、という気はしますね。結局、終わったことはもう返ってこないので。反省材料はしっかり持っておいて、リーグ戦に活かせればいいのかなと。個人の状態を見れば、そんなに楽観視はできないとは思いますが、ただ単に交流戦が嫌だという雰囲気がチームに蔓延しているだけであれば、終わればその空気はなくなるわけなので。交流戦が終わったということでうまく切り替えられますし、リフレッシュできるのではないかなとは思います」

 ここ3年間、セ・リーグで圧倒的な強さを見せてきた広島。交流戦が終わり、“本来の姿”に戻ることはできるだろうか。(Full-Count編集部)

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