最高裁 開門認めず 諫干訴訟で初判断 漁業者側上告を棄却

諫早湾干拓事業の潮受け堤防=2016年撮影

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門閉め切りで漁業不振になったとして、諫早市小長井町など長崎、佐賀両県の漁業者が国に即時開門を求めるなどした2件の訴訟で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は漁業者側の上告を棄却する決定をした。漁業者側が敗訴した一、二審判決と、開門差し止めを命じた2017年の長崎地裁判決がそれぞれ確定した。決定は26日付。具体的な理由は示さなかった。「開門」と「非開門」の二つの司法判断が混在する一連の訴訟で、最高裁が判断を示したのは初めて。
 今回、最高裁で確定した一つは、小長井町や佐賀県太良町の漁業者41人が08年4月、「諫早湾内や周辺の漁業不振は干拓事業が原因」として長崎地裁に起こした即時開門訴訟。同地裁は11年6月、開門請求を棄却したが、漁業者16人の損害賠償請求を認めた。二審の福岡高裁は15年9月、堤防閉め切りと漁業被害の因果関係を認めず、開門請求と損害賠償請求のいずれも退け、漁業者側が上告していた。
 もう一つは、干拓農地の営農者や周辺住民が開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は17年4月、開門差し止めを命じた。被告の国も控訴せず、同月、「開門せずに基金で和解する方針」を明示。その後、補助参加人として訴訟に加わっていた漁業者が控訴を求め、独立当事者参加を申し立てた。だが、福岡高裁は18年3月に申し立てを却下し、漁業者側が上告。今回の最高裁の決定で、長崎地裁判決は17年5月にさかのぼって確定したことになる。
 同事業を巡っては、この2件とは別に、「開門」を命じた福岡高裁判決が確定。この確定判決を履行しない国が、漁業者側に開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟では昨年7月、福岡高裁が国の訴えを認め、開門確定判決を事実上「無効」とした。漁業者側の上告を受け、最高裁は7月26日、口頭弁論を開く。福岡高裁の開門確定判決の効力を巡り、最高裁の判断が注目される。

© 株式会社長崎新聞社