また始まったトランプ氏「安保ただ乗り」論、沖縄の負担無視

By 太田清

大阪での会談でトランプ米大統領(左)と握手する安倍首相=28日午前(ロイター=共同)

 28日に始まった20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)を前にして、トランプ米大統領が米国の防衛負担が重すぎるなどとして、日本に相次いで不満を表明した。元々、トランプ氏は大統領選時から日米安保条約に基づく米国の防衛義務は一方的だとして、在日米軍駐留費の全額負担などを要求。その後、「日本は応分の負担をしている」との日本政府の説明もあり、いったんは不満も収まったようにみえたが、ここに来て来年の大統領選を意識してのことなのか、G20の機会に米国の立場を明確にしようとしたのか、再度、辛辣な発言が続いている。 

ソニーのテレビ 

 トランプ氏は26日にFOXビジネステレビのインタビューで「日本が攻撃されたら米国は第3次世界大戦を戦うだろう。米国は、命を懸けて、いかなる犠牲を払っても日本を守る。それなのに米国が攻撃されたとき、日本はソニーのテレビで見ていられる」と不満を表明。 

 ホルムズ海峡付近で日本のタンカーが攻撃されたことなどを受けイランとの緊張が高まっていることに関連し、24日には「なぜ米国が見返りなしに他国のために輸送路を守るのか」とした上で、日本などはホルムズ海峡を通るタンカーに石油輸入の大半を依存しているのだから、こうした船を「自国で守るべき」とツイッターに投稿した。 

 一方、米ブルームバーグ通信はトランプ大統領が、日米安保条約は不平等だとして私的な会話で破棄に言及したと報道したが、日米両政府当局ともこれを否定。同通信は3月にも、トランプ政権が日本など同盟国による米軍駐留経費の負担を巡り、全経費の1・5倍超の負担を求める「コスト・プラス50」(トランプ氏が命名したとされる)計画を検討していると報道。こちらも米国防総省高官が否定したが、日本などに対する防衛負担要求の火種はくすぶり続けていた。 

 アジアインスティチュート(ソウル)のエマニュエル・パストリッチ理事長は英デーリー・テレグラフ紙(電子版)に対し「中国と北朝鮮はこうした状況を見てチャンス到来ととらえるだろう」と語り、トランプ氏の一連の発言が日米同盟に亀裂を生じさせ、海洋進出を進める中国などを利するだけとの考えを示した。 

8割超の負担 

 では、日本は本当に応分の負担していないのかというと、全然そんなことはない。防衛省の発表によると、2019年度予算で同省は在日米軍駐留関連経費として3888億円を計上。うち1974億円は、日米地位協定上は本来、米側が支払うべき基地労働者の給与や光熱水費、訓練移転費など、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)だ。このほか沖縄県民の負担を軽減するために日米両政府が承認した「沖縄に関する特別行動委員会」最終報告に盛り込まれた関係経費256億円、在沖縄米海兵隊のグアムへの移転など米軍再編関係経費1679億円を支出。また、同省以外の省庁からも基地交付金等などに多額の予算が計上されている。 

 稲田朋美防衛相(当時)は17年1月の衆院予算委員会で、15年度の思いやり予算に関し、日本側の負担割合が86・4%だったとの試算を明らかにした。古い資料になる(この後、公表されていない)が、米国防総省の04年の発表によると、02年のほかの主要同盟国の負担率はイタリア41・0%、韓国40・0%、ドイツは32・6%。日本の負担率は74・5%。防衛省は米側の積算基準は不明としているが、いずれにしろ、当時から日本の負担は額、率とも突出して高いことは明らかだ。 

 なにより、在日米軍施設のうち74%が集中、本島の18%を米軍に提供している沖縄県が、日本の防衛のみならず、米軍のアジア戦略の大きな要で有事の際は最重要拠点の提供と引き換えに、大きな負担を強いられてきたことは言うまでもない。17年2月に稲田防衛相と会談したマティス米国防長官(当時)は「日本はコストや負担の共有に関してモデルとなってきた。他国が見習うべきお手本だと言える」と評価すらしている。 (共同通信=太田清)

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