カネミ油症51年 全国連絡会が初総会 研究者ら協力関係強化

次世代被害の調査研究などについて研究者らと意見を交わしたカネミ油症被害者全国連絡会の総会=福岡市内

 1月に設立された「カネミ油症被害者全国連絡会」の総会が28日、福岡市内で初めて開かれた。大阪府の曽我部和弘さん(54)=油症被害者関西連絡会=を世話人会代表に承認。総会には油症に詳しい医師や大学教授らも参加し、次世代被害者の歯科学的な調査研究の推進や国などの責任を考えていく上で協力関係を強化することを確認した。

 連絡会は全国の被害者13団体の意見を統一し、膠着(こうちゃく)状態にある国や加害企業との救済交渉を前進させようと設立。今後の活動方針や治療研究、救済の在り方について多様な知見を取り入れようと、未認定患者の自主検診に長年取り組む熊本県の藤野糺(ただし)医師ら約10人を総会に招いた。

 藤野医師らと歯科学的な見地から次世代被害を調べている同県の山口彩子医師は、ある認定患者の子や孫計8人のうち4人の永久歯が先天的に欠如していたとする研究データを提示。「より多くの認定患者を母数として調査したい」として協力を求めた。

 東京経済大の礒野弥生教授は、油症の原因物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)を食品工場で使うことを許した国の責任などに触れ、「過去の裁判で法的に決まったことは覆せないが、国や(PCBを製造した)カネカの本来の責任は何か、研究者が問い直すことが必要」と述べた。

 連絡会は、全国油症治療研究班(事務局・九州大)が定める診断基準について、次世代を含む未認定患者の実態を踏まえていないため救済を阻んでいると指摘。同基準について検討する医師や学者らの新たな組織をつくり、同研究班は基準策定から切り離すよう国に求めていくことを確認した。

 総会には約30人が参加。世話人に旭梶山英臣さん(68)=カネミ油症被害者五島市の会=ら6人を充て、このうち事務局長を三苫哲也さん(49)=カネミ油症被害者福岡地区の会=とすることを決めた。今回から連絡会の名称に「全国」を加えた。

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