【あなたは何しに?】フランスGPの窮地にモナコから応援に駆けつけた5人のメディアスタッフ

 F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。今回は、フランスGPの応援に駆けつけてくれたモナコGPのメディア担当スタッフたちをご紹介。
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 2018年にポール・リカールでF1を復活させたフランスGP。しかし、1990年以来、28年ぶりの開催となったためか、準備不足が否めないグランプリとなってしまった。

 もっとも大きな影響が出たのが交通渋滞だったが、それ以外にもさまざまな点で課題が残った。そのひとつがメディアへの対応だった。ポール・リカール・サーキットで開催されているフランスGPの情報を世界中に配信するメディアへのサポートは、イベント成功に関わる重要な仕事。

 FIAから出されたリリースをいかに素早くプリントアウトし、メディアセンターにいるジャーナリストたちに配布するか、プレスカンファレンスルームで行われる記者会見をいかにスムーズに運営するか、コースやピットレーンで取材するために必要なタバードの受け渡しをいかにミスなくスムーズに行うかなど、その仕事は多岐にわたる。

 しかも、仕事相手となるジャーナリストやカメラマンは、世界中を転戦しており、その道の通たちばかり。ほかのグランプリと対応が少しでも違えば、すぐに指摘され、最悪の場合はそれらは記事やSNSに乗って世界中に拡散される。そこで今年、フランスGP主催者が応援を頼んだのが、モナコGPのメディア担当スタッフだった。

「昨年、フランスGPでいろんな問題が発生したと聞いて、心が痛んだ」というリシャール・ミュラーは、普段は不動産業を営んでいるが、フランスGPのメディア担当からサポートの打診を受けたとき、すぐに快諾した。

 リシャール・ミュラーとともにポール・リカール・サーキットへ向かったのは、南フランスでポビュラーなスーパーマーケットチェーンの『カジノ』で地区部長を務めるクリスチャン・マン、リシャール・ミュラーの弟でサント・ロペにあるレストランを経営しているステファン・ミュラー、フランス国鉄のSNCFで鉄道整備工を務めるベルナール・ラトゥワ、そしてモナコでスポーツ・イベントのプロデュースを行っているダン・ラヴォーの合計5人。

 いずれもモナコGPのメディア担当スタッフで、ラヴォー以外は長年務めているベテランだ。

ダン・ラヴォー(左)と、フランスGPのメディア担当(右)

 初めてF1を開催する際に、他国のスタッフが応援部隊としてサポートに行くケースは珍しくないが、伝統あるモナコGPのメディア担当スタッフが応援に行くケースは稀。「コート・ダジュール内にあるモナコにとって、ポール・リカール・サーキットがあるプロヴァンスはお隣さん。困っていたら助けるのは当然だろ」と、さらりと語るリシャール・ミュラー。

「これで今年のF1の仕事は終わった。帰ったら、年末にモナコで開くイベントについて、ヒデ(中田英寿)に連絡を取らないと」(ダン・ラヴォー)

 2019年のF1の仕事を終えた5人は、モナコGPでは語らなかった言葉を別れの挨拶に使って、サーキットを後にした。

「See you, next year!!」

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