「科学と美術が融合してアートを考える空間に」【大分県】

大分県立美術館特別顧問に就任した井上洋一氏

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県立美術館の特別顧問に就任した井上洋一氏=28日、大分市寿町の県立美術館

 大分県立美術館の特別顧問に、東京国立博物館副館長を務めている井上洋一氏(62)が就任した。同博物館の規約に触れるため県立美術館長の肩書は付かないが、「実質的な館長」(広瀬勝貞知事)として運営に当たる。28日、大分合同新聞のインタビューに応じ、「文化財の保存と活用は美術館の使命の一つ。都民だったらすぐ見に行ける貴重な作品でも大分では見られない作品は多い。いい企画を練り上げ、大分でもそんな作品を鑑賞できる機会を増やしたい」と意気込みを語った。

 県立美術館の印象については「行政と教育機関、民間の協力関係がしっかりしていて、学芸員と事務スタッフが一緒につくってきた美術館と感じている」と話す。「運営に関わるのは身の引き締まる思いだ。兼務だが、なるべく大分に足を運びたい」

 専門は考古学で、主に古代の青銅器文化の研究に取り組んできた。1980年代はシリアで発掘品の保存や修復に関わった他、宇佐市の別府(びゅう)遺跡で見つかった小銅鐸の研究などに携わった。

 展示企画に携わるようになってからは、2007年に東京国立博物館で開いたレオナルド・ダビンチ展で「受胎告知」の日本初公開に向けて尽力した。「東洋美術にも西洋美術にも関わってきたが、考古学も美術も人間が作り出した物を人間が評価しており“人間を研究する”ことは共通と感じている。県立美術館でもこれまでのノウハウを生かせる」と力を込める。

 県立美術館では2015年の開館以降、アニメ関連や国宝や重要文化財を展示した企画展が来場者を集めている。県内に自然科学系を扱う博物館がないこともあり、昨年の国民文化祭では宇宙や深海を扱う展示にも人気が集まった。「県民が望むなら、自然科学を含め森羅万象のテーマを扱ってもいいと考える。科学と美術が融合してアート(芸術)を考える空間にしたい」と話す。

 学芸員が展示品の価値を分かりやすく伝え、多くの人に来たいと思ってもらえることが重要と指摘し、「現状把握と問題解決に向けてスタッフと一緒に考え、より良い運営を目指したい。県民と共に成長し、次世代につなぐ美術館にしていく」と話した。

 いのうえ・よういち 神奈川県出身。国学院大大学院博士課程修了。1985年、研究員として東京国立博物館入り。九州国立博物館学芸部長、東京国立博物館学芸企画部長などを歴任。2017年から東京国立博物館副館長。