自民・古賀陣営 出遅れ 巻き返しに躍起 令和の選択 参院選直前情勢・上

公示を前に街頭でマイクを握る古賀氏=長崎市内

 令和初の大型選挙となる参院選が7月4日に公示される。自民現職や国民民主新人など3人が立候補を予定している長崎選挙区は、事実上の与野党一騎打ちになりそうだ。21日の投票に向けた自民現職、国民新人の直前情勢を追った。

 「永田町で培った経験、人脈を生かしてふるさと長崎県のために頑張りたい」。27日朝、長崎市東部地区の商業施設前。どんよりとした曇り空の下、自民現職の古賀友一郎氏(51)は笑顔を振りまいていた。時折、クラクションで応じる車もあるが、通行人はまばら。「絵にならないな」。同市を選挙区とする冨岡勉衆院議員がぼやいた。
 初陣だった2013年は支援団体や国会議員がフル稼働。民主(当時)現職に17万3400票余りの差をつけて圧勝した。だが、あれから6年。自前の後援会組織を強化できず、スタッフのやりくりにさえ苦慮している。県議や市議の間には「(古賀氏は)やってもらって当然と思っているのではないか」との不満がくすぶる。
 総務兼内閣府政務官の公務を抱え、地元での活動に制約を受けたのは事実。マイクを握ると“天下国家”については冗舌に語るが、本県の課題に言及することはほとんどない。「地元にほとんど入らないから気の利いた話ができない」。県議の一人は顔をしかめる。
 「まだまだ頭の下げ方が少ないという声がある。電柱を見て頭を下げるぐらいにならないと」。9日、長崎市内であった古賀氏の事務所開きで選対幹部はこう苦言を呈した。こうした声を意識してか、佐世保市内の事務所開きでは「国政にのめり込むばかりに、地元との触れ合いが手薄になった」と反省を口にした古賀氏。陣営関係者は「本人は真面目で純粋。でもその良さが伝わりにくい」と明かす。
 懸念材料は、みこしを担ぐ側にもある。自民は2017年、議長人事などを巡って県議会会派が分裂。今春の県議選では勢力争いのあおりで、改選前議席を割り込んだ。9日の党県連定期大会。参院選に向け、新旧幹事長が「全力投球で臨む」ことを確認し“融和”を演出してみせたが、掛け声とは裏腹に挙党態勢には不安が残る。県連大会に続いて開かれた古賀氏の事務所開きに、古賀氏側と距離を置く金子原二郎参院議員らの姿はなかった。
 「出遅れというより、何もできていない。われわれには県都で票を出す責任がある」。29日、古賀氏や自民関係者が出席した党県連での会合で、前田哲也政調会長は危機感交じりにハッパを掛けた。3年前の参院選。自民候補は勝ちはしたものの、県都長崎市で野党候補に約2万2千票の差をつけられた。それなのに、会合には市議が2人しか顔を出さず、古賀氏も途中で退席。冨岡氏は、ちぐはぐな状況にいら立ちを隠さず、こう吐き捨てた。「これから社長を擁立しようと人を集めたのに、本人が途中で帰るなんて信じられん」

© 株式会社長崎新聞社