カネミ油症被害者情報 システムで一元管理へ 2021年度の運用開始目指す

3者協議について報告するカネミ油症被害者全国連絡会の曽我部世話人代表(左から3人目)ら=福岡市博多区、福岡第2合同庁舎

 カネミ油症被害者と国、原因企業カネミ倉庫(北九州市)が意見を交わす第14回3者協議が29日、福岡市内であった。国は、全国油症治療研究班(事務局・九州大)や都道府県、同社などがそれぞれの支援施策や調査の過程で得た被害者の情報を、一元的に管理するシステムを構築する方針を示した。支援施策を円滑に進めるため情報共有するという。2021年度の運用開始を目指す。
 現在、各被害者の情報は、健康実態調査を年1回行う国や油症検診を実施する研究班、医療費を支払う同社などがそれぞれ管理。データ形式や記録の仕方などは統一されていない。このため被害者が転居した際に情報共有が遅れ、必要な情報や施策が被害者に届かないケースなどがあった。
 厚生労働省によると、新たなデータベースを作り、各組織が保有する被害者の基本情報や検診の受診歴、調査結果などの情報を集約。組織間で共有する場合は被害者の了解を得るなどしてプライバシーに配慮する。データベース構築に被害者側も同意している。
 協議では、被害者に同社が支払う医療費の拡大も議論。被害者は入院中の食費などを支給対象とするよう求めたが、同社は「資金がなく難しい」と回答。このため被害者は、政府米を同社に保管し医療費に充てる仕組みを取る国に保管料増額などで支援を求めたが、国は「最大限やっている」として拒否した。
 協議後、同社の加藤大明社長は取材に対し、カネミ油症被害者全国連絡会の運営体制が28日に固まったことを歓迎。「(医療費拡充について)役所が知らん顔をするなら連絡会とうちで1対1で話せばいい」と個別の議論に応じる考えを示した。記者会見した同連絡会の曽我部和弘世話人代表(54)は「連絡会として意見を統一できるようになり、発言や発信がしやすくなった。政治家にもお願いして大きく動かしていきたい」と話した。

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