長崎スマートカードの後継 “2つのカード” 相互利用の見通し立たず

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長崎県の次期ICカード乗車券

 長崎県内バス・鉄道の共通ICカード乗車券「長崎スマートカード」がシステム老朽化のため利用を終える。後継は、長崎自動車グループが地域独自カード、他の6社局が全国共通カードと選択が割れた。営業エリアが重なる長崎市内と近郊では、2種類が併存することになる。一本化できなかった経緯や両カードの比較、利便性向上への課題を取材した。

 ■移行

 長崎県バス協会によると、スマートカードは約120万枚が利用されている。各社とも周知を兼ね数カ月間、新カードと併用するが、移行スケジュールは異なる。

 長崎自動車グループのバス4社のうち、長崎自動車(長崎市)=長崎バス、さいかい交通(西海市)は9月16日に「エヌタスTカード」を発売、利用を開始する。スマートカードを使えるのは12月27日まで。島原鉄道(島原市)=島鉄バスと五島自動車(五島市)=五島バスには「いずれ導入したい」という。

 一方、6社局は▽県交通局(長崎市)=県営バス▽県央バス(諫早市)▽長崎電気軌道(長崎市)=路面電車▽西肥自動車(佐世保市)=西肥バス▽させぼバス(同)▽松浦鉄道(同)=MR。来年春ごろ「nimoca(ニモカ)」を導入し、スマートカードは来年夏ごろまで利用できる予定。

 ■特徴

 エヌタスもニモカも電子マネーとして乗車だけでなく、買い物や飲食に使え、クレジット決済機能も追加できる。

 エヌタスは、長崎県内の提携タクシー約1300台や加盟約200店(当初予定)で利用でき、全国共通のTポイントがたまる。個人定期券の更新手続きをウェブ上でできるバス業界初のサービスもある。

 6社局は、ニモカを含め全国で使える10種類の交通系ICカード「10カード」に対応。ニモカはJRやコンビニをはじめ、全国66万店舗(5月現在)、県内約870店舗(2017年時点)、一部の自動販売機でも使える。

 現行のスマートカードは積み増し千円につき100円のプレミアを加え、さらに利用運賃の1%のポイントを付けている。エヌタスもニモカも積み増しプレミアは引き継がず、ポイント付与率は未定。

 長崎バスは8月にサービスの詳細を公表する。6社局はポイント付与率を統一する方向で協議中。ちなみにニモカを運営する西日本鉄道(福岡市)は2%。昭和自動車(佐賀県唐津市)=昭和バスは5%に設定している。

 ■経緯

 そもそも地域独自カード構想は十八銀行(長崎市)が主導。長崎経済同友会が11年に、産官学トップ会議「長崎サミット」が2015年にそれぞれ提言したのを受け、長崎バスが検討。他の社局にも参画を呼び掛けた。

 だが他の社局は、バス保有台数日本一を誇る西鉄が開発・普及させた実績などを考慮し、ニモカ採用を2017年6月に表明した。長崎電気軌道は「県外からの観光客の利用が多く、『10カードが使えず不便』との苦情もある」という。

 長崎バスは同11月、独自カードを選択した。サービス展開の自由度が高い上、資金や情報を県外に流出させず地元で循環させやすいとして「地域への貢献度が高い」とアピール。利用に伴うビッグデータを分析し、新たなビジネス創出を図る。島鉄は経営難で長崎バス傘下に入り、ニモカ陣営から離脱した。

 ■片利用

 このままでは、乗車する会社によってカードを使い分けなければならない。そこで長崎バスは来年2月以降、10カードも利用可能にする。これを「片利用」と呼ぶ。ただポイントは付かず、積み増しもできない。

 一方のエヌタスは6社局のバス・鉄道で使えない。この「逆片利用」を認めるよう長崎バスは長崎電気軌道と県営バスに要請したが、「導入・維持費がかさむ」「システムを二重に管理する負担が大きい」と断られた。

 国はインバウンド(訪日外国人客)対応の一環で10カード普及を図っている。このため片利用しか導入時の補助金対象にならず、逆片利用実現のネックとなっている。長崎バスは「相互利用」が市民のためになるとして、行政を交え2社局と協議していく方針だ。