被害の教訓生かそう 国土地理院、災害伝承碑を地図で公開

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関東大震災で壊れた鳥居を残し、後世に伝えている貴船大神=寒川町田端

 地震や風水害の記憶を後世に伝える「自然災害伝承碑」をウェブサイトの地図上で公開する取り組みが、6月から始まった。昨年7月の西日本豪雨を教訓とした国土地理院の試みで、土地ごとに異なる災害の履歴やリスクを知ってもらい、先人の教えを避難や防災行動につなげる狙いだ。県内からはまず、江戸時代の富士山噴火をきっかけとした酒匂川の水害関連碑(南足柄市)と関東大震災の石碑(寒川町)の計6基が対象となった。

 国土地理院は今年4月から、全国の自治体に呼び掛けて災害伝承碑の情報を収集するとともに、新たな地図記号を制定。地形図への掲載に先行して6月からウェブ版の「地理院地図」で公開を始めた。

 第1弾として48市区町村計158基を写真と解説文付きで掲載。最大級の南海トラフ地震だったとされる1707年の宝永地震(和歌山県田辺市)や1896年の明治三陸地震(岩手県宮古市、釜石市、大槌町)といった歴史的な大災害の碑が取り上げられており、各地の被害状況や高台避難の教えなどが分かる。

 また、2014年の広島市土砂災害(広島市)や御嶽山噴火(長野県木曽町、王滝村)、15年の関東・東北豪雨(茨城県常総市)など近年の災害も含まれている。首都圏では、利根川の堤防が決壊し、大規模な浸水被害が出た1947年のカスリーン台風の碑(埼玉県加須市)や74年の台風の教訓を伝える「多摩川決壊の碑」(東京都狛江市)なども掲載された。

 取り組みのきっかけとなった西日本豪雨では、土石流や河川の氾濫により多数が犠牲になった広島県坂町で、多くの住民が避難していなかったことが事後の調査で判明。「被害に遭うと思わなかった」ことが主な理由だった。地元には明治時代の大水害の石碑が残っていたが、あまり知られていなかったという。

 災害伝承碑は被害の大きかった場所に建てられたケースが多い。地理院地図では、地形や標高、活断層などの情報と重ねて見ることができ、災害の危険性をイメージしやすくした。地理院の担当者は「他に約150市区町村から情報が寄せられており、今後掲載地点を増やしていく。防災教育にも活用してほしい」と呼び掛けている。