国民・白川陣営 野党勢力の結集未知数 令和の選択 参院選直前情勢・下

決起集会で参加者と握手を交わす白川氏=諫早市内

 6月24日朝、大村市内の交差点。国民民主新人の白川鮎美氏(39)はつじ立ちを終えると、次の目的地に向かうためマイカーに乗り込んだ。候補者に内定した2018年2月には新車同然だった車も、1年半足らずで走行距離は10万キロ超。知名度の低さをカバーしようと県内各地を駆け回ってきた。だが、浸透は容易ではない。白川氏は現状を「ウサギとカメ」になぞらえる。「私はカメ。ウサギの姿はまだ見えない」
 その約2週間前。国民、立憲民主、共産、社民の県内4野党は白川氏を“共同候補”に正式決定。共産は擁立を取り下げた。一本化後、参院選に向けて共産が長崎市内で開いた演説会では国民県連の渡辺敏勝幹事長が登壇。「応援してくれる皆さんが頼り」と笑顔で白川氏への支援を呼び掛けた。野党は前回参院選でも共闘したが、渡辺氏が共産の集まりに出たのは、これが初めてだった。
 ただ、野党の足並みがどこまでそろうかは未知数だ。「共産には無念の決断をしていただき、感謝と敬意を表したい」。6月にあった白川氏の長崎地区決起集会。国民、立民、社民の議員が顔をそろえた壇上で白川氏は共産への思いを口にしたが、舞台に共産関係者の姿はない。会場にいた参加者が首をかしげた。「なんで共産はおらんとね」
 過去、政策や労働運動などを巡り、一線を画してきた旧民主と共産。一本化のため歩み寄ったとはいえ、共産は白川陣営の選対に迎え入れられなかった。「前回参院選は共産との共闘で(野党候補者から)従来の支持層が離れた」との指摘もあり、国民支持労組関係者は白川氏に共産色が付くことを警戒する。
 旧民主勢力の分裂も共闘に影を落とす。「中央がまとまらなくて困ったもんだ」。同26日、ひそかに本県入りした国民の小沢一郎衆院議員はぼやいた。立民と国民は中央で互いの公認候補を「推薦」しないことで合意。立民県連は白川氏の「推薦」を検討していたが、結果は「支持」にとどまった。
 衆院長崎3区のエリアに総支部がない国民にとって、大村市に県連を置く立民の協力は不可欠だ。立民県連の松永隆志幹事長も「推薦、支持にかかわらず白川氏を全力で支援する」と意気込む。ただ、立民支持労組からは「中央の野党第1党は立民なのに、長崎は国民を推さないといけない」「選挙区より産業別の比例代表候補を通すことに必死」との不満、本音が漏れる。野党勢力も一枚岩とは言いがたい状況だ。
 統一地方選の影響で、候補者一本化の時期は前回より約3カ月遅れた。限られた時間の中で、野党の力をいかに結集することができるか。白川氏は繰り返す。「何が違うかではなく、何が同じかに集中して戦わなければ」

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