衝撃「開門せず」 諌干最高裁決定(下)<請求異議訴訟の行方> 確定判決 問われる効力

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 「のど仏に小骨がささった状態」-。国営諫早湾干拓事業を巡る複数の訴訟について、諫早市の宮本明雄市長はこう例えてきた。2009年の当選以来、10年の開門確定判決を巡る対応に追われたゆえだ。
 「当時の民主党政権が官邸主導で上告を見送った。上告して、国の環境アセスメントを待っていたら、ここまで長引かなかったかもしれない」。住民を二分し、混乱の渦に巻き込んだ開門確定判決への疑念はいまなお消えない。
 その後、開門差し止め仮処分決定や同訴訟で「開門禁止」の判断が続き、自民党の政権復帰後も乱発する訴訟に悩まされた。国が17年4月、「開門せずに漁業振興基金で和解する」方針を示したことで、明るい兆しが出てきた。本明川下流域の競技用ボートコースや、高来町深海干陸地のクロスカントリーコースなど「考えてもいなかったことが少しずつできるようになった」。
 28日、同訴訟などに関連した開門派漁業者の敗訴確定の報を受けても、警戒を緩めない。「(のど仏の小骨は)刺さり方が少し弱まった程度」。宮本市長は最高裁に残る請求異議訴訟を注視する。地元にとって混迷の始まりでもある開門確定判決の扱いが再浮上したからだ。
 同訴訟は、福岡高裁が昨年7月、開門確定判決の執行力排除を認め、同判決を無力化した。しかし、最高裁は5月、漁業者の上告手続きを認め、7月26日に弁論を開くことを決定。
 請求異議訴訟の控訴審判決は「10年免許制の漁業者の共同漁業権は13年8月末で消滅したのに伴い、開門請求権も消滅した」と判断。しかし、開門確定判決で定めた開門期限の同12月より前に漁業権が消滅したという点について、開門確定判決の効力がどのように及ぶのか、最高裁で問われるとみられる。
 ▽漁業者側の上告を棄却(国勝訴)▽破棄自判(国敗訴)▽破棄差し戻し(高裁に審理を戻す)-。28日、会見した開門差し止め派弁護団は請求異議訴訟の今後を予想した。「可能性として一番高いのは破棄差し戻し」。山下俊夫団長はこう指摘。「最高裁が『開門しない』という解決の道筋を示した上で、国と漁業者の2者で話し合いをさせるという意味があるのではないか」。西村広平弁護士も今回の最高裁決定との関連を推し量る。
 同日、開門派弁護団は2件の決定を「不当」とする声明で、国の「開門せずに漁業振興基金での和解案」を拒否。堀良一事務局長は「国は差し止め訴訟で開門の必要性をあえて主張せず、今度は請求異議訴訟で自分たちの思いだけを押し通している」と話し、独断的と国の対応を批判した。
 戦後まもない長崎大干拓構想から半世紀以上を経た諫早湾干拓事業。時の政治判断で幾度も事業内容の変更を余儀なくされた。さらに、有明海ノリ不作に絡んだ開門を巡る“訴訟合戦”は20年近くに及び、沿岸の住民は振り回され続けてきた。今回の「非開門」の最高裁決定が、問題解決の足掛かりになるか。同事業を始めた国の姿勢にかかっている。