夏場に強いレクサス陣営の秘密はメカニカルグリップか。ホンダ、ニッサンの弱点が露呈したスーパーGT第4戦タイ《GT500決勝あと読み》

 前回の鈴鹿戦に続いてとなる、レクサスLC500の2戦連続の表彰台独占となったスーパーGT第4戦タイ。レクサスの速さに改めて驚かざるを得ない一方、ライバルのホンダNSX、ニッサンGT-R陣営とは何が違ったのか。予選、そして決勝でのマシンのフィーリングについてドライバ-、エンジニアに聞いた。

「前回の鈴鹿から、特にエンジンが元気になった。元気というか、普通にパワーが出せるようになったよね」と話すのはau TOM’S LC500の東條力エンジニア。auにとっては序盤に2番手を走って優勝も見えただけに、チームメイトでもあるKeePer TOM’S LC500との接触と、その後のペースダウンによる9位フィニッシュは悔しいところ。

「クルマは抜群だった。2連勝できたと思うし、トムスでワン・ツーも行けたと思うから悔しい」と東條エンジニア。auは最初のスティント終盤にトップを奪ったが、ピットで6号車WAKO’S 4CR LC500に逆転を許してしまった。東條エンジニアによれば燃費があまり良くなかったこともあり、給油時間を1秒多くしたのが、ピットでの逆転を許してしまった要因なのだという。

 いずれにしても、優勝したWAKO’S、そして優勝を争ったトムスの2台にWedsSport ADVAN LC500、DENSO KOBELCO SARD LC500、そして燃料リストリクターを絞って戦いながら7位フィニッシュしたZENT CERUMO LC500と、レクサス陣営が上位を独占してもおかしくない速さと強さを見せる内容となった。

 ライバルであるホンダNSX陣営にとって不可解なのが、前日の予選Q1でARTA NSX-GTの野尻智紀がトップタイムを獲るなど速さを見せておきながらも、決勝ではその速さの片鱗を見せることができなかったことだ。もともとNSXは空気密度が薄くなってダウンフォースが少なくなる夏場の時期を課題にしていたが、今回の予選Q1でその部分が克服できたかに見えた。しかし、決勝でのパフォーマンスについて、野尻が振り返る。

「クルマのバランスだけで言うと、悪くはありませんでした。ですけど、昨年から抱えている問題として、やっぱり集団のなかに入ってしまうとNSX勢としてはダウンフォースが抜けてしまう部分があって厳しくなってしまう。特にこのサーキットは暑いですし、そもそものダウンフォースが少ない中で走っているので、ニュータイヤの予選のときは一発、なんとかごまかせるみたいなところはあります」と野尻。

 ホンダGTプロジェクトリーダーの佐伯昌浩氏も「予選結果だけを見た時点では、暑いところでも戦えるのかなと見えたのはひとつの収穫でした」と評価しつつも、「暑さによるダウンフォースの点もありますし、セットアップの面ではなかなか(燃料)フルタンクの状態でテストをする機会が少ないので、去年、一昨年を見ても、決勝で弱いという部分はまだ残っていますね」と佐伯氏。

 また、秋以降になって気温が下がれば自ずと決勝でもパフォーマンスを取り戻してくるだろうが、次の富士、そしてオートポリス戦でどこまで決勝のペースを上げられるかが、今季の勝負どころとなりそうだ。

 一方、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが4位に入ったニッサンGT-R陣営だが、優勝候補に挙げられていた12号車カルソニック IMPUL GT-Rが8位止まりで、いつも決勝で確実に順位を上げてくる強さを見えるMOTUL AUTECH GT-Rが11位と、全体として精彩を欠くことになってしまった。カルソニックの佐々木大樹がタイ戦を振り返る。

■優勝候補のカルソニックはなぜ低迷してしまったのか。ホンダと同様に夏場に不安を残すニッサンGT-R勢

「クルマのセッティングを合わせ込むことができませんでした。このコースはそんなに抜けるコースではないので、予選でQ1で敗退してしまったのがレースで響いてしまったという印象です。クルマはかなりのオーバーステアで、リヤのグリップ不足に悩んでいました。そこは前回のレースでも同じで、今のうちのクルマの課題になっています」と、これまでの課題がこのタイでも露呈しまった形となったカルソニック陣営。佐々木が続ける。

「冬のテストはダウンフォースも出ていたし、一発のタイムもタイヤのグリップも高くて、結論として一発はいつもいいタイムを出せていたんですけど、暑くてダウンフォースが出ない状況だと、ちょっとメカニカルグリップがウチのクルマは取れていないので、それも含めてロングランが遅いのかなという印象があります」と佐々木。

 ここ数戦のニッサンGT-Rのパフォーマンスを見ると、予選ではそれなりのポジションを獲得するものの、決勝で順位を下げる展開が続いている。佐々木の話すメカニカルグリップ不足は、カルソニックだけでなくGT-R全体いn言えることではないだろうか。

「それはGT-R全体に言えるのかもしれないです。そのなかでも特に12号車ですね。レースになるとGT300のマシンもいるので、空力が常にいい状態で走れるわけでない。その時にメカニカルのグリップがすごく重要なんですけど、その部分でレクサスが強いのかなという印象を受けます」と佐々木。

「次の富士に向けても、第2戦の時は予選3番手で良かったですけど、決勝に向けては何かを変えていかないと厳しいと思っています」と、悲壮な窮状を明かした。

 次のGTは8月まっただ中の真夏の開催で、しかもレクサス陣営のホームコースである富士スピードウェイ。今回の結果でレクサス陣営のウエイトハンデは軒並み重くなったが、それでも次の富士でも表彰台を独占してしまいそうなくらい、今のレクサスLC500が速さと強さを兼ね備えている。

第2戦富士、第3戦鈴鹿に続いて3連勝となったレクサスLC500。今季はどのチームも勝てる速さがあることを証明した。
予選ではQ2に残るも、決勝ではスタートで他車マシンに押し出される形になり順位を落としたRAYBRIG NSX-GT。その後、同じNSXと接触して実質レースを終えた。

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