「水どう」藤村&嬉野コンビがドラマ「チャンネルはそのまま!」の舞台裏を語る

芳根京子主演で、「踊る大捜査線」の本広克行氏が総監督を務めた北海道テレビ放送(HTB)開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」で監督とプロデューサーを務めたHTBの藤村忠寿氏と嬉野雅道氏が、撮影の舞台裏を語るトークイベントを東京・渋谷で開催した。

同作は札幌のローカルテレビ局に採用された新入社員・雪丸花子(芳根)に振り回される同期や周囲のテレビマンたちを描いた痛快コメディーで、放送後「ローカルテレビ事情がリアルすぎる」と大きな話題になった。主人公・花子について藤村氏は、「あまりにもコミカルにいき過ぎてもいけないし、でももちろん真面目でもないので、安っぽいコミカルさにならないように気をつけました。とにかく雪丸花子は何をするにも一生懸命なので、芳根さんにはとにかく目を見て話をするように伝えました。しっかり目を見ているんだけれど、『話を聞いていないのでは…』という人、いるじゃないですか(笑)」と描き方に気を使ったという。

さらに、「劇中に『すいませーん!』と叫ぶシーンがあるんですが、謝る時も真剣に目を見て言うんだけど『こいつ本当は謝ってるんじゃないんじゃないか』と思われないように、撮影前に本気の『すいませーん!』のセリフを出すために、『プレイボール!!』これだ!!とイメージを思いつき、芳根さんに『ちょっとプレイボールの調子で言ってみて』と演技指導しました。それでできたのがあのシーンです。彼女は『すみません』と言いながら心の中では『プレイボール!!』と言っているんだと思います(笑)」と独特の演技指導を行ったことを明かした。

また、本作の舞台となるのは東京キー局ではなく、北海道の放送局。その点について嬉野氏は、「監督やスタッフたちと話す中で、“ローカルの報道マンはジャーナリストじゃない、3年たったら営業に移動するようなこともよくある”という話を聞きました。そういうローカルのリアルな日常的な目線で描いていかないと、この作品をHTBで映像化する意味がないと思いました」という制作への思いがあったと語る。

藤村氏も「地方でものを作ろうとすると地方のものになってしまう。ローカル局が番組を作るとローカル番組になってしまうんです。それがいわゆる“地方色”だとみんな思ってしまう。『チャンネルはそのまま!』に関しては、地方局が作るドラマという意味合いを払拭したいと思い、『キー局よりもいいものを作る』という感度で取り組みました」と思いを打ち明け、「東京で作る場合はキャストを誰にするかという話に終始してしまいますが、僕らの場合はしがらみがないので、はやりなどではなく、誰がこの役を務めるのが一番いいかという観点で自由に選んでいきました。このキャスティングの自由さは地方局ならではのやり方ですが、そこに気づいていない方も多いです」と地方局ならではの戦い方があることを指摘した。

重ねて、嬉野氏は「ローカルに所属していると、中央というものに巻き込まれながらローカルの役割をしてしまおうとします。“中央”という認識があり、その一番辺縁をやろうとしてしまう。でも本当はそうではないだろうと。ローカルにはローカルの田舎の日常が本来あって、それを全世界へ出していけばいい。そこには中央もローカルもないでしょう、ということですね」と主張。

そしてそれは、本作が地上波放送だけではなく、Netflixでのオンラインストリーミングとして世界へと配信されたことにつながっていく。「Netflix の方とお話をした時、『私たちは世界中から集めた良質なものを世界へ発信していくのが仕事です。これからはドキュメンタリーやバラエティーなどシナリオのないものにも力を入れていきたい。『水曜どうでしょう』はとても良質なので、世界に配信していきたい』とおっしゃってくださいました。『さすがお目が高い!』と思いましたね(笑)」と語った藤村氏。

ローカル局発信の伝説的バラエティー番組「水曜どうでしょう」を立ち上げ、日本全国にファンを増殖させた2人。本作がネット配信により場所を選ばすに視聴できるようになったことについて、「地上波での放送だけだと、一度見逃すとそれで終わりになってしまう。でもNetflixの場合は、一度見逃してもお金さえ払っていれば何度でも見ることができます。そういう意味では、われわれとしても『水曜どうでしょう』も『チャンネルはそのまま!』も、Netflixでやる方が盛り上がり方がいいなと思います。世界で配信されるので、地方局で作ったものも一気に世界へ行けるというのはとてもいいですよね。系列だけで、という以外にも道がたくさんある」と感じたという。また、「実際に海外でも見られているようで、Twitterなどでも外国語で『見た見た』『絶対見た方がいいよ』などつぶやかれてるみたいです。ローカル局でありながら、全世界に発信する可能性がある、実際に見られているんだということをこの番組で証明したことは感慨深いです」と確かな手応えを感じていることを明かした。

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