「お前の持ち味はなんだ?」 交流戦好投の西武・高橋光を導いた辻監督のゲキ

西武・高橋光成【写真:荒川祐史】

交流戦は3戦2勝 防御率1.71と投手陣を支える 6月の西武を振り返る

 西武の高橋光成投手の勢いが止まらない。昨季は自己最少の3試合の登板にとどまった右腕だが、今シーズンはここまでキャリアハイの7勝をあげている。

 昨シーズンの右肩のコンディション不良の影響でキャンプは2軍に相当するB班スタートだったが、猛アピールで開幕ローテーションの座をつかみとった。交流戦では3試合に登板し、2勝。防御率は12球団で4位の1.71をマーク。被本塁打0が光る。特に6月14日のヤクルト戦(メットライフ)では3年ぶりの完封勝利。125球を投じながらも、終盤でも球威を落とすことなくツバメ打線を封じた。

 苦しんだ時期もあった。4月中旬から3連続ノックアウトを食らうなど不安定な投球が続いた。5月8日のロッテ戦(前橋)では6回7失点。降板後はベンチで辻監督に切々と問われた。「お前の持ち味はなんだ?」。持ち味である力強い直球よりも、打者をかわそうとしていることに気が付いた。高橋光は「もう少し直球で押していくべきだった」と唇を噛んだその悔しさが、本来の投球を取り戻させた。

 ストレートの強さはこれまでも高橋光の武器の一つでもあったが、オフは肉体改造と新フォームに取り組み、さらに磨きをかけた。マリナーズに移籍した菊池雄星らとともに自主トレを行い、体重は100キロ超えまでアップ。また、昨年12月から2段モーションに取り組み上から投げ下ろすイメージで投球するなど、190センチの恵まれた長身を存分に活かすための試行錯誤を重ねた。その全てが結実しかけている。

 高橋光は「『どんな時でもポジティブに』と西口さんにもアドバイスをしてもらったんです。悪いときには顔に出ることもあったけど、今は余裕を持って勝負できていると思います」と14日の完封勝利の後に晴れやかな表情で語った。昨季最多勝の多和田、そして昨季同じく2桁勝利をあげた榎田が不振で2軍調整中と先発ローテーション事情は苦しい。22歳右腕の覚醒と安定が、チームの上位浮上には必要不可欠だ。(安藤かなみ / Kanami Ando)

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