ペットに「マイクロチップ装着」が義務化!本当に命は守れるの? 実は…

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改正動物愛護法が6月12日、参院本会議で全会一致により可決、成立しました。改正された動物愛護法は、動物たちの命を守るために充分な内容になっているのでしょうか。朝日新聞東京本社・特別報道部の専門記者である太田匡彦さんと考えました。

【6月26日(水)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/水曜担当ニュースアドバイザー:安田菜津紀)】
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■マイクロチップの装着を義務化

動物愛護法は1973年に制定され、今回で4回目の改正になります。これまでペットショップや繁殖業者など、命の売買に携わる業者の問題がなかなか解決しませんでしたが、今回の法改正では、幼すぎる犬や猫の販売を禁止する「8週齢規制」や、飼育環境について数値で規制していく「数値規制」、インターネット販売をしにくくする規制などが盛り込まれました。また、マイクロチップの装着も義務化されました。

安田:マイクロチップの装着はいつから始まるんでしょうか?
太田:改正法が成立したのが12日とありましたが、19日に法律として公布されているんです。かなり準備が必要になりますので、今回の法律では公布後3年以内の施行となっています。2022年の夏くらいから義務化がスタートします。
安田:すでにペットを飼っている人にも義務付けられるのでしょうか?
太田:今回の装着の義務は、トレーサビリティが重視されているので、繁殖業者が販売、出荷する子犬や子猫と、繁殖業者の元にいる繁殖用の犬や猫です。一般の飼い主さんが義務化されるわけではありません。
安田:災害があったときに飼い主の元に戻りやすいなど、装着することで命を守ることには繋げられるのでしょうか?
太田:装着して番号を読み取り、番号を保存したら飼い主が分かったというように、返還率は上がると思います。でも、犬は狂犬病予防法で、鑑札や注射済票を付けることが義務化されているんです。東日本大震災なんかを見ると、2011年時点でのマイクロチップはそれほど普及していなかったという前提においても、マイクロチップが挿入されていたことで飼い主が判明した事例はゼロなんです。熊本地震のときは7、8件ほどありました。鑑札や注射済票を装着したことで犬が飼い主の元に帰れた、というほうがケースとしては多いです。
安田:トレースができるという意味はあるかもしれないけれど、それ以外の有効性については「どうなんだろう」という議論が残ったということですね。

■生後8週間保護することの意義

生後8週経っていない犬や猫の販売が原則禁止になりました。今までは生後7週を過ぎたら販売できるようになっていました。7週から8週に改正された理由はふたつあるとのこと。

ひとつ目は、あまりにも早く生まれた環境から引き離すことによって、成長後に吠え癖や噛み癖、人や他の犬への攻撃性が高まってしまい、問題行動を起こしやすくなるということ。8週という大事な期間を親元に置いておくことで、犬猫としての行動を学び、人に慣れ親しむことによって、新たな環境に行ったときも人は怖くないということを知ることができます。

ふたつ目は、免疫力の問題です。人間は母親から移行抗体を受け取ることで、乳児期の身体が守られています。犬や猫も同じで、生後8週に向けて移行抗体が減っていきます。減った段階でワクチンを摂取して新たな環境に行くことで、感染症に対する免疫力が付きます。移行抗体が減った段階でワクチンを打たないと、上手くワクチンの抗体が上がらないそうです。

太田:日本の消費者は小さい子やぬいぐるみのようなかわいさを好む傾向があり、「かわいさを売りにするためになるべく早く出荷したい」というのが繁殖業者やペットショップ側の理屈だったんです。そういう衝動買いや安易な購入を防げるであろうと、今回の法改正では考えたと思います。

しかし、8週齢規制には例外も認められています。天然記念物に指定されている柴犬や秋田犬などの日本犬6種は、繁殖業者が一般の飼い主に直接販売する場合に限って、8週齢規制は適用除外にされています。

安田:これはどういう理由からだったんですか?
太田:極めてシンプルなんですが、日本犬保存会と秋田犬保存会が強く8週齢規制に反対しました。日本犬保存会の会長と秋田犬保存会の会長が衆議院議員で、このふたりが自民党の動物愛護議員連盟の総会なんかで強く反対したと、取材で聞いています。

■ペットを飼う人が意識するべきこと

業者の問題や劣悪な環境で育てられている犬や猫を取材してきた太田さんが考える、改正動物愛護法の不十分な点や課題はどういったものなのでしょうか?

太田:一番大きいのは、飼養管理に関する数値規制を入れる法律ができたんです。どういう数字を入れていくのかは、これから1年あまりかけて環境省が検討していくんです。レベルの低い数値になってしまったら犬や猫が苦しむことになるので、この数字がどれだけ国際的な基準で動物福祉を満たせる基準になるのかがひとつ。あとは、動物愛護団体の中には、業者を登録制でなく許可制にするべきとの声もありました。そこは洩れましたので、今後は検討していかないといけないです。

動物たちの環境を良くしていくために、ペットを飼う側が意識するべきことを訊きしました。

太田:まず、犬や猫を飼うことが暮らしを充実させることは間違いなくて、幸せに繋がります。その上でペットショップで買う場合、綺麗な店頭の背後には劣悪な環境で繁殖活動をさせられている親犬や、闇で消えていく兄妹の命があったかもしれない。自分が飼っている犬や猫の親、兄妹がどういう運命をたどっているのかを調べたり想像することから始める。あとは、動物愛護団体が積極的な保護・譲渡活動をして、保護犬や保護猫を飼う選択肢が広がっています。この選択肢を自分の中で有力な一つの選択肢にしてみることかと思います。

安田は最後に、「今『ペットを飼いたい』と思っている方は、それが衝動ではなく覚悟なのか、もう一度問い直して欲しい」と呼びかけました。

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