中国向け個人購買代行に逆風、当局が「EC法」監督強化を通知

中国の国家市場監督管理総局は2019年6月20日、「ネットワーク市場監視特別措置プログラム(方案)」を発表した。同年1月1日に施行されたEC法のもと、大小を問わずECプラットフォームの監督を強化する内容で、例えば、オンライン取引の違法行為、偽造品・危険な食品・偽造医薬品のオンライン販売、虚偽広告などが挙げられる。期間は、19年6月から11月で、すべての地方自治体が具体的な実施計画を策定する必要があること、12月12日までに典型的な行政処罰決定を伴う事例を報告すること、重大事案は即時報告することが明記されている。

中国の国家市場監督管理総局は2019年6月20日、「ネットワーク市場監視特別措置プログラム(方案)」を発表

中国現地の大手EC代理商「leqee」の銭江峰日本事業統括は、次のように分析する。

「EC事業者主体登記が必要なことおよび購買代行に対して管理を厳しくなることは、日本側での購買代行には影響が出ますが、業者による大量並行品の購入には影響は出ません。

つまり、個人購買代行(日本の店頭で購入し、中国の個人消費者に販売するモデル)は、EC法監督管理強化により、資格面(EC経営主体登記)と配送面(通関のチェックが厳格化)の両面の影響を受け、やり難くなります。

一方、業者による並行品販売(業者が日本で大量に仕入れ、中国のEC経営者に販売し、EC経営者が中国の消費者に再販するモデル)は、今回のEC法監督管理強化に抵触することがほとんどなく、影響を受けることはないと考えられます。

また、権利侵害、偽物などの取り締まり強化およびECプラットフォームによる制限(価格、競合プラットフォームとの提携など)の禁止は、逆に中国市場を開拓しているメーカーにとっては良いことです。とはいえ、方案実施により事業運営のコストが上がるかどうかは、注視する必要がありますね」

以下は、leqeeによる「ネットワーク市場監視特別措置プログラム(方案)」の要訳である。(原文 http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/wjs/201906/t20190620_302494.html


各省、自治区、直轄市及び新疆生産建設兵団市場監督管理局(庁、委員会)、発展改革委員会、通信管理局、公安庁(局)、商務庁(局)、ネット信用弁公室、郵便管理局、税関総署広東分署、各直属税関:

党の十九回二中三中全会の精神を深く貫徹するために、ネット市場監督部および連合会議の各メンバー組織の職能優位を十分に発揮し、「電子商取引法」を貫徹し、電子商取引の主体資格の規範に注力し、ネット市場の突出した問題に厳しく打撃を与え、電子商取引経営者の責任を着実に実行し、良好なネット市場秩序を維持し、ネット市場の監督管理を強める。ネット市場監督部および連合会議の各メンバー組織は6~11月に2019年のネット市場監督特別行動を共同で展開することを決定した。「ネットワーク市場監視特別措置プログラム(方案)」を印刷、発送し、実際状況を鑑み、真剣に実行することを望む。

市場監督管理総局、発展改革委員会、工業・情報化部、公安部、商務部、税関総署、網信弁

2019年6月17日

2019ネットワーク市場監視特別措置プログラム(方案)

党の十九回二中三中全会の精神を深く貫徹するために、「電子商取引法」を統括、実施。ネット経営行為を規範化し、ネット市場の取引環境を浄化し、良好なネット市場秩序を維持するために、ネット市場監督部および連合会議の各メンバー組織は6~11月に協同でネットワーク市場監視特別措置プログラム(方案)を展開することに決定した。具体案は以下の通りである。

①全体目標

ネット市場監督部および連合会議の各メンバー組織の役割を十分に発揮し、「電子商取引法」の関連規定を厳格に徹底し、ネット市場の突出した問題に厳しく打撃を与え、公平競争の市場秩序を創出。法律に基づいて規制し、慎重な監督管理、知能的な監督管理、総合的な監督管理と協同監督管理を堅持し、信用制約を強化し、電子商取引行為を規範化させ、取引環境を浄化し、消費者と経営者の合法的権益を保護し、ネット商品とサービス品質を向上させ、電子商取引の持続的な健全な発展を促進する。

②重点任務

1. 電子商取引の主体資格の規範化に力を入れ、良好な参入環境を作る。法により電子商取引経営者が「電子商取引法」第15条に規定された情報開示義務に違反する行為を摘発する。電子商取引経営者が法に基づいて市場主体登録を行い、電子商取引の主体資格を規範化させ、SNS型EC、越境ECの経営者に対する規範的な指導を強化する。電子商取引プラットフォームの経営者に対して、「電子商取引法」などの法律法規の要求に基づいて登録を促し、プラットフォームを利用する経営者の正確の情報を確認し、登録書類を作成し、電子商取引経営者が各種ライセンス、資料を明示することをを監督する。郵便企業、宅配企業に電子商取引企業の取引先の経営範囲に対する審査を強化するよう促す。電子商取引の主体を規範化し、不法な主体によるネット応用(ウェブサイト、APPなど)を集中的に取り締まる。(市場監督管理総局、工業・情報化部、公安部、税関総署、郵便局は職責に応じて分担して協力する)
2. ネット上で偽物や劣悪品を販売したり、安全でない食品や偽薬、劣悪な薬を販売したりする行為を厳しく取り締まり、安心して消費できる環境を創出。食品(保健食品を含む)、医薬品、電子製品、自動車部品、家具、家庭用品、子供用品、服装靴帽子および労働保護ヘルメットなどの社会的に注目度が高く、健康安全に関係する消費財を重点として、監督、法律執行と刑事司法を強化し、重要案件を突破口として、組織的に集中的に取り締まり、人民の生命安全と健康を断固として守る。オフラインとオンラインの融合管理を堅持し、飲食部門などの商品の抜き取り検査、ネット上の飲食サービス食品の安全監督とリスク監視を強化し、生産源を浄化し、法によりインターネットを利用して偽・劣悪商品を販売する違法犯罪活動を摘発する。法規に基づきインターネット上での権利侵害、偽、有害情報を処理する。(市場監督管理総局、公安部、税関総署、郵便局は職責に応じて分担して協力する)
3. 不正競争行為に厳しく打撃を与え、公正競争の市場環境を創出。「不正競争防止法」「電子商取引法」などの関連規定に基づき、ネット上の虚偽の宣伝、空売り、違法な販促、違法なセット売りなどをする行為を厳しく取り締まる。違法に乳幼児の調合食品を宣伝する行為を厳しく取り締まる。組織的に不法に空の小包を送るなどして、他の経営者の空売りによる信用向上を支援する違法行為を厳しく取り締まる。電子商取引プラットフォームの経営者に対して、信用評価システムを完備させ、法律執行に協力して実施するよう促す。法により電子商取引プラットフォームの経営者がプラットフォーム内の経営者を他の第三者の電子商取引プラットフォームの経営活動に参加させないなどの制限行為(いわゆる二者択一)を摘発する。(市場監督管理総局、発展改革委員会、商務部、郵便局は職責に応じて分担して協力する)
4. インターネット広告の管理作業を深く展開し、良好な広告市場環境を作る。社会的影響が大きい、広範囲にわたるポータルサイト、検索エンジン、電子商取引プラットフォームを重点に、APPやニューメディアアカウントなどのインターネットメディアを重点とし、医療、医薬品、保健食品、不動産、金融資産投資などの人民大衆の健康と財産の安全に関する虚偽の違法広告に対して、事件の取締り力を強め、大きな事件を調査対処する。(市場監督管理総局、工業・情報化部、公安部、ネット信用弁公室は職責に応じて分担して協力する)
5. 法律に基づいて他の各種ネット取引の違法行為を取り締まり、ネット市場の環境を効果的に浄化する。「電子商取引法」「ネットセキュリティ法」「消費者権益保護法」「価格法」「ネットショッピング商品の7日間の理由なく返品暫定弁法」などの関連規定を実行し、消費者クレームの告発ルートを通じて、消費者の知る権利と選択権を保護し、不正な価格行為、不公平なフォーマット条項、法により7日間の返品義務を履行しないなどの消費者権益を侵害する行為への取り締まりを強化する。全面的に個人情報の保護に力を入れ、個人情報に関わる契約形式の条項を規範化する。消費者の同意を得ず、収集、使用、過度の収集または漏洩、不法販売、不法に他人に個人情報を提供する行為を厳しく取り締まる。法に基づき、個人情報保護義務を履行せず、ネット違法犯罪のサポートを提供するネットプラットフォームを厳しく取り締まる。国民の個人情報を侵害する犯罪の取り締まりを通じ、ビッグデータ技術の個人情報の濫用を確実に防ぐ。法に基づき、野生動物およびその製品を違法に販売、購入、利用、又は使用禁止の狩猟道具を利用して取引サービスを提供しているプラットフォームを厳しく取り締まる。密接に協力し、携帯APP端末(ネット取引プラットフォーム、ネット予約プラットフォーム、オンライン旅行プラットフォーム、SNS型EC、越境EC及び他のネット市場の新業態)の違法犯罪行為に対する調査、監督管理、取り締まりを強化する。ネット販売の単用途の商業前払カードの不正行為に対する調査を強化する。海外の代理購入行為に対する監督管理を厳格にし、越境ECの輸出入に対する整備を強化する。ネット販売禁止商品に対する監視・管理を強化し、ネット市場の環境を絶えず浄化する。(市場監督管理総局、工業・情報化部、公安部、商務部、税関総署、ネット信用弁公室、郵便局は職責に応じて分担して協力する)
6. ネット取引情報の監視と製品品質の抜き取り検査を強化し、良好な消費環境を作る。監督管理技術の応用を絶えず強化し、ネットワーク取引情報の監視・測定の新しい方式を模索し、監視・管理プロセスを充実させ、ネット取引の違法な手がかりを効果的に発見する。ネットの集中的な販促イベント期間、祝祭日などの重要な期間をマークし、ネット市場の定点観測と製品品質の抜き取り検査を展開し、直ちにリスクを発見し、信用喪失の共同懲戒機能を発揮し、全網警告を実施する。(市場監督管理総局、発展改革委員会、工業・情報化部、公安部、商務部、税関総署、ネット信用弁、郵便局は職責に応じて分担して協力する)
7. 電子商取引経営者の責任を徹底し、誠実と信用を守る経営環境を作る。電子商取引の経営者、特にプラットフォーム経営者に法定責任と義務を履行するよう促す。電子商取引の経営者を監督し、消費者権益、知的財産権、個人情報保護などの義務を履行し、法に基づいて製品とサービスの品質責任を負い、ネット販売商品の修理と返品の責任を厳格に実行する。電子商取引プラットフォームの経営者に対して、プラットフォーム内の経営者に対する資格審査、主体情報公示を強化し、知的財産権保護の「通知ー削除」義務を実行し、ネット広告により掲載された商品(サービス)は「広告」であることを著しく明示する義務がある。ネット上の飲食サービスプラットフォームに傘下機構、代理店を強化するよう指導し、督促する。積極的に監督管理部門にプラットフォーム上の飲食サービス提供者のデータとプラットフォームの傘下機構、代理店、パートナーなどの情報を報告し、食品の配送過程の管理を強化して、逐次テイクアウトの食品包装シールを推進して、食品の配送過程が汚染されないことを保証する。配達、郵便、宅配などの企業に実名制度を完備させ、権利侵害商品、偽物の受け取り、郵送を拒否し、法律執行部門の違法犯罪の検証を支援する。(市場監督管理総局、発展改革委員会、工業・情報化部、公安部、商務部、税関総署、ネット信用弁、郵便局は職責に応じて分担して協力する)

③特別行動実施に関する要求

1. 組織保障を強化し、着実な展開を推進する。各地の各部門は所属地の監督管理責任を確実に実施し、現地の実際状況に立脚し、全体の配置を真剣に行い、確実に実行可能な具体的な実施方案を制定し、実効を得ることを求む。
2. 監督管理の効果を高め、ネット市場の監督管理方式を革新する。各地は十分にネット市場の監督・管理連合会議の役割を発揮し、監督・管理の協力体制を形成しなければならない。行政指導、行政協商、行政処罰などの手段を総合的に運用し、電子商取引経営者、特にプラットフォーム経営者に法定責任と義務を履行するよう促す。「ダブルランダム、一公開」の監督管理を着実に推進する。「信用中国」ウェブサイトと国家企業信用情報公示システムを通じて、電子商取引経営者の基礎情報と各部門の公務員が職責を果たす(履職)中で形成された行政許可、行政処罰、抜き取り検査結果などの監督・執行情報を適時に公示し、さらに部門間の協同監督管理と共同懲戒を強化する。
3. 法律意識を強め、「電子商取引法」の宣伝力を高める。各地の各部門は様々な形式で広く宣伝を展開し、電子商取引経営者の座談、指導を組織し、消費警報を発布し、警告と違法の典型的な事例を提示し、電子商取引経営者の、法律を学ぶ、法律を知る、法律を守る、法律を理解、法律を使用、の良好な雰囲気を作り、様々な方法を使い、「電子商取引法」を周知を徹底的に行う。

各地の各部門は特別行動の実施の重点を突出させ、根幹からの管理を強化し、科学的に行動実施の進捗度を手配し、12月12日までに本特別行動の総括報告を行い、特定項目行動状況統計表、典型的な判例(5件以上、行政処罰決定書を添付)およびそのほかの関連執行資料と共に各上級主管部門に報告し、同級市場監督部門に送付する。重大な状況があったら、現地の党委員会政府と各上級主管部門に即刻報告しなさい。

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