<大ヒット盤> 家入レオ『DUO』 初期のヒリヒリ感なく、感じる余裕

家入レオ『DUO』

 6作目となるオリジナル。2012年のデビュー当時は、感情をむき出しにした楽曲で人気を呼んだが、本作では自作詞・自作曲にこだわらない制作が際立っている。

 例えばドラマ主題歌となった『Prime Numbers』や『もし君を許せたら』は孤独を叫ぶが、初期のヒリヒリ感はなく、シリアスなミュージカルのような余裕を感じる。その余裕があるからこそ、King Gnuの常田大希が提供したダンサブルなロックの『Overflow』や、相対性理論の永井聖一が提供した80年代シティポップ風の『Neon Nights』にて恋する男子を演じるなど表現の範囲も広がっているし、別の曲ではよりキュートな歌声で聴き手を楽しませる。

 特に、小谷美紗子が関わった2曲が象徴的。小谷作詞・作曲の『JIKU』は、「大人に絶望した少女時代」を経て、絶対的に愛する人を見つけるバラードで、家入の変化を代弁するようだし、家入が作詞・作曲し、小谷が編曲した『サザンカ』は「いつも愛されていたと知ったから歩いていくよ」と静かに微笑むように歌う。今後、闇の深さを知るからこそ本物の光を表現していくことに期待したい。

 初期の生々しさを求める人は、器用に歌える本作を否定するかもしれない。しかし、本作は、生きる上で答えが見つからない時期でも、きっと大きな励みになるはず。

(ビクター・通常盤3000円+税)=臼井孝

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